レポート

ESGリスクトピックス 2021年度 No.4

2021.7.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<海洋汚染>
環境省がマイクロプラスチック *削減に向けたグッド・プラクティス集を発表

環境省は5月13日、マイクロプラスチック削減のために日本企業が有する技術・ノウハウを取りまとめたグッド・プラクティス集を公表した。

日本は、2019年6月のG20大阪サミットで、2050年までにプラスチックごみによる追加の海洋汚染をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提案した。本書では同ビジョンの実現に向けて、マイクロプラスチックの発生抑制・流出抑制・回収に資する12の日本企業等の取り組みが提示されている。

(参考情報:2021年5月13日付 環境省HP

<脱炭素>
花王、2050年までに「カーボンネガティブ」実現へ脱炭素の新目標策定

花王は5月19日、事業活動に伴い排出されるCO2を2040年までにカーボンゼロ、2050年までには自社製品や技術による削減を合わせて事業活動によるCO2排出量よりも吸収量を多くする「カーボンネガティブ」を目指す新たな脱炭素目標を公表した。

当該目標の達成を見据え、SBTi*から19年に認定を取得した「2.0℃目標」を「1.5℃目標」に引き上げ申請中であることや、国連グローバル・コンパクト、SBTi、We MeanBusinessが「1.5℃目標」の設定を企業に要請する「BusinessAmbition for 1.5℃」に署名することも公表した。

(参考情報:2021年5月19日付花王 HP

<自然資本と生物多様性>
UNEPとCapitals Coalition、「生物多様性ガイダンス」のナビゲーションツールをリリース

国連環境計画の世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)と、自然資本と社会資本のインパクトガイダンス策定団体Capitals Coalitionは5月25日、企業・金融機関向け「生物多様性ガイダンス」の学習ナビゲーションツールをリリースした。

「生物多様性ガイダンス」は、2020年9月にCapitals Coalitionと英ケンブリッジ大学のCambridge Conservation Initiativeが発行した自然資本プロトコル(NCP)の補助ガイダンス。企業や金融機関が生物多様性から受ける価値を理解し、組織における意思決定に反映できるように設計されている。

(参考情報:2021年5月25日付Capitals Coalition HP

<情報開示>
SustainableApparel Coalition、製品の環境影響開示プログラムを開始

アパレル業界の国際サステナビリティ団体であるSustainableApparel Coalitionは5月27日、技術パートナーのHigg社と共に、製品の環境影響に関する情報を公開する「Higg Index透明性プログラム」の開始を発表した。同プログラムは、素材の情報に基づき、製品の水使用量や温室効果ガス排出量、化石燃料使用量等の環境影響に関する情報をスコアカードやラベルで表示するもので、既にAmazonやH&Mが参画を表明。今後2年間で、製造過程や企業のサステナビリティデータも対象に加える予定としている。

(参考情報:2021年5月27日付Sustainable Apparel Coalition HP

Social-社会-

<人権>
「ビジネスによるLGBT平等サポート宣言」に大手企業が賛同

EqualityAct Japan*は、5月17日「ビジネスによるLGBT平等サポート宣言」への賛同を呼びかけた。本宣言は、日本におけるLGBT平等法の導入を支持し、性的指向や性自認に基づく差別を禁止し、誰もが平等に扱われるインクルーシブな職場・社会づくりを目指すことを表明するもの。LGBT平等法については、6月に閉会した国会での法案提出は見送られたが、次期以降の国会での成立を目指すとしている。日本企業としては、楽天グループやセガサミーホールディングスなどの企業が賛同している。

(参考情報:2021年4月19日付LGBT法連合会 Equality Act Japan HP

<ハラスメント>
パワハラ認知の企業の約半数が対応せず、厚労省調査で判明

厚生労働省が4月30日に公表した職場のハラスメント実態調査で、会社がパワハラの事実(可能性含む)を認めた場合でも「特に何もしなかった」と回答する被害者が47.1%と最多だった。企業のハラスメント、特にパワハラへの対応不足が明らかになった。また、過去3年間のハラスメント被害の割合は、パワハラが31.4%、顧客等からの著しい迷惑行為が15.0%、セクハラが10.2%だった。

(参考情報:2021年4月30日付厚生労働省

<人権>
UNECE、アパレル製品トレーサビリティ保証のイニシアチブを発足

国連欧州経済委員会(UNECE)は5月20日、アパレル業界のサプライチェーン上の環境・倫理の向上に向け、マルチステークホルダー型のイニシアチブ「サステナビリティ誓約」の発足を公表した。環境負荷の低い商品やリユース・リサイクル拡大などを求める消費者ニーズに応えるため、衣料品の原料や製造過程のトレーサビリティ向上などを進める。今後は、政府や企業、業界関係者からの自発的な署名を募る。

(参考情報:2021年5月20日付UNECE HP

<人権>
英人権NGO、世界の主要アパレル企業64社の半数以上で強制労働可能性を指摘

英人権NGOの「KnowTheChain」は、世界のアパレル企業64社を対象にサプライチェーンにおける強制労働の対策状況をまとめ、5月26日に公表した報告書で、半数以上で強制労働の申立が確認されたことを明らかにした。対象には日本企業5社を含み、一部企業について対策の不十分さを指摘した。

(参考情報:2021年5月25日付KnowTheChain HP

<人権>
改正障がい者差別解消法が成立、企業などに合理的配慮を義務付け

改正障がい者差別解消法が5月28日、参院本会議で可決・成立した。公布日(6月4日)から3年以内に施行される。改正前において、障がい者の移動や意思疎通などを過度な負担とならない範囲で支援する「合理的配慮」は企業の努力義務とされていたが、これを企業に義務付けた。一方、差別を直接的理由とする罰則は新設されなかったが、差別を不当に繰り返すなどの場合は、従来通り、指導や勧告、過料の対象となる。

(参考情報:2021年6月内閣府HP

Governance-ガバナンス-

<サステナビリティ・トランスフォーメーション>
経済産業省、「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会」を立ち上げ

経済産業省は5月28日、「サステナビリティ・トランスフォーメーション*(SX)」の取組を具体化させるために、「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を立ち上げた。

本研究会では、近年のグローバルにおけるステークホルダー資本主義や、ESG投資・SDGs経営の重要性の高まりを踏まえ、企業の長期経営や投資家の長期投資、それに伴う具体的な対話の課題や在り方を明確にしていく。

(参考情報:2021年5月28日付経産省HP

全般・その他

<テレワーク>
総務省、テレワークセキュリティガイドライン第5版を公表、全企業で導入可能な指針示す

総務省は5月31日、「テレワークセキュリティガイドライン第5版」を公表した。第4版(2018年4月)以来の全面改訂で、昨今のテレワークを取り巻く環境やセキュリティ動向の変化に対応。▽経営者・システム管理者・勤務者の具体的役割▽テレワーク利用時のトラブル事例▽セキュリティ対策▽クラウドサービス利用上の留意事項▽ゼロトラストセキュリティの考え方..などを追加した。さらに、専任担当者が不在の中小企業などを念頭に最低限のセキュリティ確保のためのチェックリストも公表。全ての企業がテレワークを導入・活用するための指針を示した。

(参考情報:2021年5月31日付総務省HP

今月の『注目』トピックス

<スチュワードシップ>
GPIFが機関投資家のスチュワードシップ行動に関する上場企業向けアンケート結果を公表

(参考情報:2021年5月12日付GPIF HP

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月12日、機関投資家のスチュワードシップ行動に関する上場企業向けアンケートの集計結果を公表した。本アンケートは運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価や「目的を持った建設的な対話」(エンゲージメント)の実態を把握し、全体のレベルアップに繋げることを目的に2016年から毎年実施されており、今回で6回目となる。東証1部上場企業2,186社を対象とし、681社から回答を得た。

Q&A

Question

6月11日に施行された改訂版コーポレートガバナンス・コード(以下、改訂版CGコード)では、「サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み」の充実が求められていますが、企業としてどのように取り組めばよいでしょうか。

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