レポート

ESGリスクトピックス 2020年度 No.11

2021.2.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
ダイムラー、メルセデスベンツのサプライヤーに2039年までのカーボンニュートラルを要求

独ダイムラーは12月7日、2039年までにメルセデスベンツの製造サプライチェーン全体で二酸化炭素のネット排出量をゼロ(カーボンニュートラル)にする目標を発表した。同社は電気自動車 (EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売比率の引き上げを経営目標に定める一方で、それらに必要なリチウムイオン電池の二酸化炭素排出量が高いとの課題認識に基づき調達部品や素材など サプライチェーンの改善に注力。サプライヤーに対しては将来的なカーボンニュートラルの部品供給を求めるとともに、目標達成に同意できない場合は契約を締結しないとの方針を掲げた。

(参考情報:2020年12月7日付DAIMLER HP

<自然環境保全とビジネス>
WBCSD、自然と気候の両方にプラスとなる企業行動に役立つ新レポートを公表

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)は12月8日、新レポート「自然基盤ソリューション(NbS:Nature-based Solutions)と自然活用気候変動緩和ソリューション(NCS:Nature Climate Solutions)のマッピング」を公表した。 NbSはCO2削減に大きく貢献(パリ目標達成に必要な削減量の最大37%寄与)するもののベネフィットが明確でないこと等から、NbSへの投資は進んでいない。本レポートはその点に着目し、NbSとNCSの整合性や、 その定義、範囲、潜在的な価値、パフォーマンスなどを明確にすることにより、企業による高品質なNbS事業の開発や投資促進を目的とする。

(参考情報:2020年12月8日付WBCSD HP

<気候変動>
エネルギー大手8社、気候変動緩和に向けたエネルギー移行原則を発表

世界大手エネルギー企業8社*は12月17日、共同開発したエネルギー移行原則" Energy Transition Principles"に合意したことを発表した。

同原則は、GHG排出量の削減や炭素吸収源の開発の役割、気候関連情報の透明性と整合性を高めることによって業界の脱炭素を促進し、パリ協定の目標に貢献するとした。構成は下記の通り。

(参考情報:2020年12月17日付Shell HP

<気候変動>
国際資本市場協会(ICMA)、脱炭素への移行を実現するための資金調達ハンドブックを発行

国際資本市場協会(ICMA)*は、気候変動対策を目的とする債券市場の利用者に向けた「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」を公表した。本ハンドブックは、同協会が発行する グリーンボンド原則、サステナビリティ関連ボンド原則などの追加ガイダンスとして、気候対策に資する資金を調達する際に期待される慣行や行動、開示推奨要素が記されている。

(参考情報:2020年12月付ICMA, Climate Transition Finance Handbook

(参考情報:2020年12月25日付金融庁,「トランジション・ファイナンス環境整備検討会」の開催について

<気候変動>
政府が2050年温暖化ガス排出ゼロに向けた成長戦略を公表、重点14分野で実行計画

政府は12月25日、2050年までの温暖化ガス排出ゼロを目指したグリーン成長戦略を策定公表した。成長が期待される重点14分野について、脱炭素化のための個別目標を設定。目標達成に向けて、 予算や税制、金融、規制改革・標準化、国際連携などの支援策を通じて後押しする。

重点14分野は以下の通り。

(参考情報:2020年12月25日付経済産業省 HP

Social-社会-

<テレワーク>
厚生労働省が「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」を公表

厚生労働省は12月25日、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」を公表した。テレワークの推進自体を目的化せず、働き方改革の推進の観点も含めた、良質なテレワークの導入・定着を図ることが 重要と提言。これからのテレワークでの働き方について、対象者を選定する際の課題、人事評価・費用負担等の労務管理上の課題、労働時間管理の在り方、作業環境や健康状況の管理や把握、 メンタルヘルスに関する対応方針について有識者の意見をまとめている。厚生労働省では、本報告書をふまえ、今後、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(テレワークガイドライン)」の改訂を行う予定。

(参考情報:2020年12月25日付厚生労働省 HP

<デジタルトランスフォーメーション>
経済産業省研究会がDX加速で中間報告、企業に変革の能力を求める

経済産業省は2020年12月28日、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に向けた研究会の中間報告を公表した。そこでは、企業・政府の取るべきアクションを「超短期」「短期」「中長期」の3段階で整理。 加えて、企業については、常に変化する顧客・社会の課題をとらえ、「素早く」変革「し続ける」能力を身に付け、ITシステムや企業文化(固定観念)を変革することの重要性を強調した。

(参考情報:2020年12月28日付経済産業省 HP

Governance-ガバナンス-

<ガナンス>
SC・CGCフォローアップ会議、取締役会の機能発揮と企業の中核人材の多様性の確保について検討

金融庁が事務局を務める「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」は12月8日、取締役会の機能発揮や企業の中核人材における多様性確保について、 経済・社会構造の変化を背景に意見交換を実施した。

同会議では、目下の事業環境において取締役会が経営者のリスクテイクを支え、重要な意思決定を行うためには、取締役の知識・経験・能力、就任年数の適切な組み合わせが不可欠であると言及。 具体的取り組みとして独立社外取締役の登用や「スキル・マトリックス」*の公表等を提言した。

(参考情報:2020年12月8日付金融庁 HP)

<ガバナンス>
監査役協会、報告書で監査等委員会によるSDGs・ESG取り組みへの関与に期待を示す

日本監査役協会は12月16日、投資家との対話の主体として監査等委員会が検討すべき事項や実務上の工夫などを検討した報告書「企業の健全なリスクテイクに対する監査等委員会の関与の在り方」を公表した。 報告書では、監査等委員会による関与を期待する事項の例として「SDGs・ESGを意識した経営への取り組み」「中期経営計画等を含む経営基本戦略」「設備投資などのリスク投資」の3つを提示。 その中で監査等委員会によるSDGs・ESGへの関与の現状は未だ途上と指摘し、往査を通じた現場の情報収集機会を持つなど監査等委員会特有の強みの発揮に期待を示した。

(参考情報:2020年12月16日付日本監査役協会 HP)

全般・その他

<ESG投資>
米ブラックロック、2021年のスチュワードシップ活動方針を公表

世界最大の機関投資家であるブラックロックが12月10日、2021年のスチュワードシップ活動方針を公表した。同社は毎年スチュワードシップ活動の中心である投資先との対話と議決権行使に関する原則およびガイドラインを 見直しており、今回、投資先企業に対して以下の3点への取り組み強化を促す方針を公表した。今後、投資先企業へ優先課題や求める成果指標などを公表するとしている。

(参考情報:2020年12月10日付ブラックロックHP

<ESG投資>
米ブラックロックが機関投資家調査、ESG投資を5年で倍増の一方、ESGデータの質に懸念

ブラックロックは12月3日、27カ国425人の機関投資家に持続可能な投資についての洞察を質問した「グローバル・クライアント持続可能な投資調査」の結果を公表した。

それによると、機関投資家が今後5年間でESG投資の運用資産を少なくとも倍増する計画である一方で、半数以上(53%)の機関投資家の「ESGデータや分析の質の低さや利用可能性の低さ」を指摘した。

(参考情報:2020年12月3日付BlackRock HP「BlackRock Survey Shows Acceleration of SustainableInvesting」

<ESG投資>
米MSCIが、21年度のESG注目テーマに気候変動などを提示

インデックス大手の米MSCIは12月7日、「2021年のESG注目テーマ」として気候変動、ESGバブル、生物多様性、情報開示、社会的不平等の5つを公表した。具体的には、▽ESG投資が成熟期を迎え、投資余地が減ったため、 パリ協定との整合性と投資規模の拡大に限界がきている▽EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)により、機関投資家のポートフォリオを構成する企業の情報開示がさらに進む▽パンデミックで進んだ社会の格差に対して、 機関投資家がソーシャルボンドなどのシステミックなアプローチを打ち出す――などの予想を挙げた。

(参考情報:2020年12月7日付MSCI HP「2021 ESG Trends to Watch」

今月の『注目』トピックス

<ガバナンス>
監査役協会が「企業集団における不祥事防止を切り口とした監査体制強化の在り方」を公表

(参考情報:2020年12月16日付日本監査役協会 HP

日本監査役協会のケース・スタディ委員会は12月16日、「企業集団における不祥事防止を切り口とした監査体制強化の在り方」を公表。子会社に端を発する不祥事が続発していることを挙げ、 改めて不祥事防止の観点も含め企業集団の監査の在り方について検討した。報告書では、過去に子会社で発生した不祥事につき第三者委員会等の報告書を分析し、不正が起きやすい主な要因に下記を挙げた。

Q&A

Question

自社でもSDGs取り組みを始めようと考えています。企業がSDGsの取り組みを始めるに際して知っておくべきポイントを教えてください。

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