レポート

ESGリスクトピックス 2020年度 No.10

2021.1.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<サーキュラーエコノミー>
エレン・マッカーサー財団、サーキュラーエコノミーのパフォーマンス測定ツールをアップデート

英エレン・マッカーサー財団は10月28 日、サーキュラーエコノミーのパフォーマンス測定ツールのアップデート版「Circulytics 2.0」をリリースした。Circulyticsは、製品やマテリアルフローの評価だけではなく、 企業が事業全体における循環性をどの程度達成しているか評価できる。2020年の1月にリリースされてから、全世界で600社以上の企業が登録している。今回のアップデートにより、操作性の改善、 多くの業界ベンチマークの入手等が行われており、企業の循環性をより包括的に把握できる。

(参考情報:2020年10月28日付Ellen Macarthur Foundation, Circulytics - measuring circularity HP

<生物多様性>
IUCNとIOCらがスポーツインフラの開発における生物多様性保護ガイダンスを発行

国際自然保護連合(IUCN)は、国際オリンピック委員会(IOC)、サンフランシスコ河口協会(SFEI)と協働し、ガイダンス「スポーツと都市の生物多様性:都市の自然とスポーツの相互利益を達成するためのフレームワーク」を発行した。 本ガイダンスは、都市の生物多様性への投資が、スポーツ連盟、会場の所有者、運営者にとって、コストではなく新しい機会を提供するものであるとしている。また、スポーツインフラの生物多様性への影響を決定する7つの生態学的観点として、 「都市景観全体の接続性*」「生息地パッチを取り巻く景観マトリックスの質**」「利用可能な生息地の多様性」「在来植生」「水や営巣地などの特殊な資源」「野生生物に配慮した管理」を挙げ、計画策定のフレームワークの概要を説明している。

(参考情報:2020年11月6日付IUCN HP

<気候変動>
WWF、不安定な気候下でレジリエントなビジネスを行うためのガイドを発表

国際NGOのWWFは11月17日、企業向けに、気候変動に伴う不安定な気候下で企業がレジリエントであるための方法を解説したガイド"Rising to Resilience: A practical guide for business and nature"を発表した。

同ガイドは、気候変動により暴風雨や干ばつ、熱波などがより深刻かつ高頻度になるとし、企業においてはこのような気候に耐え、回復し、適応できる「レジリエンス」が必要と指摘。企業がレジリエンスを高めるための ステップを以下の通り解説している。

(参考情報:2020年11月17日付WWF HP

<生物多様性>
WBCSD、循環型バイオエコノミーが環境課題を解決しながら約800兆円のビジネス機会を生むとの報告書を発表

WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は11月23日、循環型バイオエコノミーに関するレポート"The business opportunity contributing to a sustainable world"を発表し、製薬、繊維、建材などの10の分野で バイオ由来製品が従来型の製品を補完、代替することにより2030年までに7.7兆ドル(約800兆円)相当のビジネス機会が生じると指摘した。また、バイオ資源を持続的に管理・回収し、最大限再利用する循環型バイオエコノミーは、 気候変動、生物多様性、生態系の損失、資源不足などの環境課題への対応にもつながるとしている。

(参考情報:2020年11月23日付WBCSD HP

<サステナブル・ファイナンス>
WBCSD、循環型バイオエコノミーが環境課題を解決しながら約800兆円のビジネス機会を生むとの報告書を発表

EUが2019年に設立したサステナブル・ファイナンスの国際的なプラットフォーム「International Platform on Sustainable Finance(IPSF)」が今年10月に公表したIPSFの活動報告書によると、 共通かつ基礎的なタクソノミー*の策定を目的とした作業部会が既に検討を始めていることや、情報の透明性を高めるための開示やグリーンボンド等の持続可能な金融商品の基準やラベルの専門部会、 作業部会を将来的に立ち上げるとしている。金融庁は11月24日、IPSFへの加盟を発表している。パリ協定の目標達成への金融市場の貢献が期待されることに鑑みると、規制・法制化とならないまでも ソフト・ローといった形でのタクソノミー等の適用が国内において進みそうである。

(参考情報:2020年10月16日付EU,Annual report of the International Platform on Sustainable Finance (IPSF)HP

(参考情報:2020年11月24日付金融庁 HP

Social-社会-

<人権>
「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)を策定

ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議は10月16日、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画を公表した。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の 着実な履行を目指すための計画と位置づけ、「OECD多国籍企業行動指針」や「ILO多国籍企業宣言」等、関連する国際文書も踏まえて策定したもの。「ビジネスと人権」に関して、今後政府が取り組む各種施策が記載されているほか、 企業に対しては、規模、業種等によらず、人権デュー・ディリジェンスのプロセス導入、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話の実施、効果的な苦情処理の仕組みを通じた問題解決の促進への期待が表明されている。

(参考情報:2020年10月16日付外務省 HP

<ダイバーシティ>
LUSH、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から商品名変更を実施

ラッシュジャパンは10月20日、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から全商品の名称の見直しを行った結果、一部商品の商品名称を変更すると発表した。多種多様な職種・社歴・居住地のスタッフによるプロジェクトチームを 立ち上げ、性別や人種、年齢、多様なライフスタイルなどへの配慮が十分にされているかという視点から、全ての商品の商品名および商品に関する記述のレビュー、最適化を実施。同社は信念として掲げる 「All are welcome, Always」を体現するための、ダイバーシティ&インクルージョンを反映させた社内の仕組み作り、職場環境の構築、コミュニケーションの見直しに取り組んでおり、本取組はその一環として実施したもの。

(参考情報:2020年10月20日付ラッシュジャパン HP

<情報セキュリティ>
国内サプライチェーンのサイバーセキュリティ強化でコンソーシアムが発足

サプライチェーンの弱点を狙ったサイバー攻撃の顕在化・高度化に対応して産業界全体のサイバーセキュリティ強化を目的にしたコンソーシアムが11月1日、発足した。経済産業省がオブザーバー参加する。 「中小企業対策強化」、「地域SECURITY形成促進」、「産学官連携人材育成促進」の3つのワーキンググループで取組を検討・推進する。

(参考情報:2020年10月30日付経済産業省 HP

<食品ロス削減>
経済産業省、コンビニでの食品ロス削減で実証実験を開始

経済産業省は、コンビニエンスストア店頭での省力化や食品ロスの削減・廃棄率の低下など、サプライチェーンの効率化・生産性向上を検証するため、電子タグを活用した食品ロス削減に関する実証実験を今年11月から開始する。 コンビニ2社の各2店で実施。電子タグを活用し、在庫状況や消費期限の自動管理や、販売期限・消費期限が近い商品のスマホアプリを活用したポイント付与や直接値引き販売などを行う。12月末まで実施し、 結果を踏まえて廃棄率の低下や省力化等の効果を検証する。

(参考情報:2020年10月28日付経済産業省 HP

Governance-ガバナンス-

<ガバナンス>
米ISSが議決権行使助言方針の改定案、監査役設置会社に社外取締役3分の1以上要求へ

米国の大手議決権行使助言会社ISSは10月14日、2022年2月から適用予定の議決権行使助言方針の改定案を公表した。それによると、監査役設置会社に3分の1以上の社外取締役を求める(現状は 2名以上)。指名委員会等設置会社向けの基準に合わせた。また、政策保有株式が純資産の20%以上の場合には、経営陣の再任議案に反対を推奨する。今後、意見募集結果を踏まえ、改定内容を年内に公表する予定。

(参考情報:2020年10月14日付ISS HP)

<ガバナンス>
金融庁フォローアップ会議、コロナ後の経済・社会をふまえたガバナンス改革について検討

金融庁が事務局を務める「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」は10月20日、コーポレートガバナンス改革に関する課題*を巡る変化について、 コロナ禍がもたらした経済・社会構造の変化を背景に、参加者間で意見交換を実施した。

同会議では、コロナ禍が企業活動にもたらした変化として「顧客が求める財・サービスの変化」「従業員の働き方の見直し」「新たな雇用・人材活用の萌芽」「不確実性の高まり」に着目。

(参考情報:2020年10月20日付金融庁 HP)

全般・その他

<Society 5.0>
経団連が、Society 5.0実現に向けた規制・制度改革要望を追加

経団連は10月13日、「Society 5.0の実現に向けた規制・制度改革に関する提言」を改訂した。今年3月公表の提言をwith/postコロナ対応の観点で見直し、(1)非対面・非接触型の技術・サービスの導入、 (2)テレワーク時代の労働・生活環境の整備、(3)ヘルステックの飛躍的普及――の3分野で合計49項目の規制・制度改革要望を追加した。

(参考情報:2020年10月13日付日本経済団体連合会 HP「改訂 Society 5.0の実現に向けた規制・制度改革に関する提言-2020年度経団連規制改革要望-」

<Society 5.0>
国内DX活性化の有識者会議が初会合、デジタル市場の基盤整備などを議論

国内のデジタルトランスフォーメーション(DX)活性化を目的にした経済産業省の有識者会議が、10月16日に初回会合を開き、(1)既存の産業や監督官庁の枠を超えた横串でのデジタル市場の基盤インフラ整備(2) Society 5.0の実現に向けた企業内でのDX推進の環境整備――などを議論した。

(参考情報:2020年10月19日付経済産業省 HP「Society5.0の実現に向けたデジタル市場基盤整備会議」

<人権>
PRIが機関投資家の投資活動における人権対応を要請

国連責任投資原則(PRI)は10月22日、機関投資家の投資活動における人権対応への要請をまとめた報告書「Why And How Investors Should Act on Human Rights」を公表した。報告書は、 機関投資家は企業活動における人権の取組に強い影響力を持っているとした上で、機関投資家の人権に関する責任として「1.(投資方針等と連動した)人権基本方針の公表」 「2.投資プロセスにおける人権デューデリジェンスの実施」「3.投資行為により人権侵害を受けた人々への救済手段の提供」の3点を挙げ、PRIに署名する機関投資家に対応状況の報告を求めていくとしている。

(参考情報:2020年10月22日付PRI HP

<SDGs>
WBCSD、気候変動や生物多様性などを軸とした新たな加盟基準を設定

WBCSDは10月26日、「気候変動」「生物多様性」「差別の撤廃」を軸とした新たな加盟基準を設定した。今回設定された基準は以下の5つで、現在加盟している企業に対しても2022年12月までに遵守できるよう整備を求めている。 2023年からは加盟企業の年次報告書を毎年評価し、遵守状況をモニタリングするとしている。

  • 2050年までを期限とする温室効果ガス(GHG)のネットゼロ目標の設定と目標達成のための科学的根拠に基づく計画策定
  •   

(参考情報:2020年10月26日付WBCSD HP

今月の『注目』トピックス

TCFDが2020年進捗レポートを発表。指標とデータ収集に関するパブリックコメントも募集。

(参考情報:2020年10月29日付TCFDニュースリリース

(参考情報:2020年10月付TCFD 2020 Status Report

TCFD(The Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は10月29日、2020年の進捗レポート「TCFD 2020 Status Report」を公表した。公表にあたり、金融セクター向けの情報開示ガイダンスを検討することを 目的としたパブリックコメントの募集も開始した。募集は2021年1月27日までとなっている。

レポートによれば、TCFDに賛同する企業および団体は現在1500以上に上り、2019年と比べると85%以上増加した。しかし、昨年と同様に、「開示の質」に大きな課題があるとした。

Q&A

Question

2019年12月11日公布の「会社法の一部を改正する法律(以下「改正会社法」)」、および改正会社法施行規則(以下「改正施行規則」)の施行が、2021年3月1日に決まったようですが、これらの施行により、 役員等賠償責任保険(以下「D&O保険」)の実務にどのような影響が想定されますか。3月決算、6月株主総会、7月D&O保険更改の公開会社を前提例として留意点を教えてください。

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