レポート

ESGリスクトピックス 2020年度 No.3

2020.6.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
EU理事会、EUタクソノミー法案を可決

EU理事会は4月15日、サステナブル金融におけるEU共通の事業分類システム「EUタクソノミー」に関する法案を可決。EUタクソノミーでは環境面で持続可能かどうかを判断する基準が細かく定められ、 事業者や投資家が共通の基準を有することが可能となる。これによって投資家による投資がより持続可能な技術や事業に集まることが期待され、EUの2030年パリ目標達成と2050年迄の"climate neutral"達成のための 一つの柱になると考えられている。同法案は今後欧州議会での可決を経て成立する。

(参考情報:2020年4月15日付EU理事会HP

<気候変動>
IRENA、エネルギーシステムの脱炭素化により莫大な経済便益があると分析

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は4月20日、世界の再生可能エネルギーの将来展望を分析した報告書"Global Renewables Outlook"を発表し、脱炭素化に向けたエネルギーシステムの移行が雇用創出や経済成長を促すことを指摘した。 同報告書は、2050年にCO2排出ゼロを達成するシナリオでは、現行計画シナリオに比べて最大45兆米ドルの追加的費用が必要となる一方で、最大169兆米ドルの追加的な経済効果が得られると分析している。

(参考情報:2020年4月20日付IRENAHP

<GHG排出量開示>
プラネットトラッカー、食品廃棄・食品ロスによるGHG排出量の開示等を食品小売企業に要求

英・有力シンクタンクのプラネットトラッカーは、4月23日に公開した報告書の中で、食品廃棄・食品ロスによる温室効果ガス(GHG)のスコープ3による*排出量の算定と開示等を食品小売企業に対して要求した。 同報告書は、食品廃棄・食品ロスによるGHG排出量の報告の欠如についても、潜在的な収益の損失およびGHG排出量の大幅な過少報告につながると指摘。機関投資家にも企業に対する積極的な情報開示要求を喚起した。

(参考情報:2020年4月23日付プラネットトラッカーHP

Social-社会-

<科学技術倫理>
大阪大が、国内初の倫理的・法的・社会的課題の研究拠点を設立

大阪大学は4月1日、急速に進歩する科学技術に関して生じる個人の権利・プライバシー侵害など様々な課題の解決を図るため、人文・社会科学も交えて倫理的・法的・社会的課題(ELSI:Ethical, Legal and Social Issues)を 総合的に研究する国内初の拠点と、社会技術共創研究センター(ELSIセンター)を設立した。

同センターは、下記4つの機能を備える。

  • 人文社会科学の知見を学術領域横断的に糾合することによりELSIへの対応やガバナンスの在り方を総合的に研究する機能
  •   

(参考情報:2020年4月1日付大阪大学HP

<個人情報>
政府、新型コロナ拡大防止目的で個人情報の本人同意なしでの目的外利用可能との見解示す

政府の個人情報保護委員会は4月2日、新型コロナウイルスの感染拡大防止の場合、国や自治体の要請や人の生命・身体・財産の保護に必要であれば、本人同意なしに目的外利用や第三者への提供が許されるとする 個人情報保護法の例外適用が可能との見解を公表した。併せて、本人の同意なく情報提供可能である具体的例をQ&A形式で公表した。

(参考情報:2020年4月2日付個人情報保護委員会HP

<エシカル消費>
アパレル大手など加盟の NGO、新型コロナ拡大を受けたサプライヤー労働者の権利保護の指針を発表

Ethical Trading Initiative(ETI*)は4月6日、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な需要減の余波で、下請企業などのサプライヤー労働者の不利益にならないよう権利を保護するための指針を発表した。 発注済み契約の早期支払や契約書上の「不可抗力条項」を理由とした不払いの自粛、現在と将来の発注取消などサプライヤーへの配慮を盛り込んだ。

(参考情報:2020年4月6日付ETI HP

<レジリエンス>
米Four Twenty Seven、新型コロナ禍と気象災害の複合的被害について分析、事前準備の重要性を指摘

気候リスクデータ大手の米Four Twenty Sevenは4月22日、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大と気象災害の同時発生による影響に関する分析結果を公表した。すでに米国では同ウイルスの感染拡大地域において 嵐等の風水害が発生しており、ソーシャルディスタンスの確保のために、住民の避難所への受け入れや被害箇所の復旧対応に支障が生じた。また、同ウイルス流行に伴う財政悪化や人的資源のひっ迫によって、 自治体による災害対応が困難となる可能性についても言及し、気候変動に伴う異常気象リスクへの戦略的準備が重要であると指摘している。

(参考情報:2020年4月22日付Four Twenty Seven HP

<人権>
新型コロナ流行下のサプライチェーン・非正規労働者などの人権配慮で取り組み事例を公表

ビジネスと人権ロイヤーズネットワークは4月27日、新型コロナウイルス流行を受け、日本のビジネスと人権の課題および留意点を整理した報告書を公表した。その中で、新型コロナウイルス流行下の企業活動に際し、 「サプライチェーン」「移民労働者」「非正規雇用・ギグワーカー・インフォーマル労働者」「医療従事者」「子ども・高齢者・女性・障がい者・外国人等」「プライバシー」の6つの視点から、人権への配慮の重要性を指摘するとともに、 海外での先行取組事例を紹介している。

(参考情報:2020年4月27日付ビジネスと人権ロイヤーズネットワークHP

Governance-ガバナンス-

<ガバナンス>
新型コロナ感染拡大を受け、関係省庁が株主総会の運営指針を公表

株主総会の集中時期を前に、関係省庁が新型コロナウイルスの流行拡大を受けた対応指針を相次いで公表した。経済産業省と法務省は、総会運営のQ&Aをホームページに掲載。安全な株主総会運営に加え、 所定の時期に開催できない場合の対応やオンラインでの開催方法などに触れた。一方、金融庁は、財務報告書の提出期限延長を受けた総会運営などをホームページに掲載した。 また、経団連も総会への来場株主数を一定程度限定することを想定した招集通知の記載モデルを公表した。

(参考情報:2020年4月2日付経済産業省HP

(参考情報:2020年4月15日付金融庁HP

(参考情報:2020年4月28日付経団連HP

弊社「ESGリスクトピックス <2020年度 特別号>~新型コロナウイルス対応に関する法務Q&A~」

<公正取引委員会>
公正取引委員会が、新型コロナウイルス感染症に関連する事業者等の取組への対応方針を公表

公正取引委員会は4月28日、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に懸念される、下請法や独占禁止法上問題となりうる行為や、緊急事態における物資の流通を妨げる行為の増加に対する各種対応方針を公表した。

本方針では、経済環境の悪化を背景とした親事業者による発注済商品の受領拒否や買いたたき、マスク等の需給がひっ迫する物資と他の商品の抱き合わせ販売など、従前より下請法や独占禁止法上問題となりうる行為について厳正な対処方針を示している。

(参考情報:2020年4月28日付公正取引委員会HP

全般・その他

<SDGs>
GRI、SDGsの目標達成に資する企業のサステナビリティ報告実務を促進するための政府の役割に関する提言を公表

GRIは4月8日、SDGsの目標達成に資する企業のサステナビリティ報告実務を促進するための政府の役割に関する提言を公表した。

本提言では、SDGs達成のためには民間企業の協力は不可欠であると同時に、その取り組み内容の透明性や政策目標との整合性を確保することが重要であるとしたうえで、政府が担うべき5つの役割を示した。

  1. 政策目標を達成するための全てのプロセスで民間企業を関与させる
  2. 企業へ透明性の高い情報開示を促進するために法整備を行う
  3.   

(参考情報:2020年4月8日付GRI HP

<ESG>
各国金融当局加盟の組織が、サステナブルファイナンス促進で統一開示基準などを提言

各国の金融監督当局などが加盟する証券監督者国際機構(IOSCO)は4月14日、サステナブルファイルナンス促進における課題や当局の役割など考察したレポートを発表した。 その中で、各国当局や市場参加者双方の取組やESG関連基準等を分析した上で、投資家保護や市場の透明性向上の観点から、サステナビリティ関連の開示内容の比較可能性の改善を強調。 そのためISCOの役割として、各国の持続可能性に関連する開示基準の統一や持続可能な事業の共通定義の確立、環境保護を装った取組からの投資家保護などを提言した。

(参考情報:2020年4月14日付IOSCO HP

(参考情報:2020年4月14日付同 HP

<ESG>
ESG評価世界大手、新型コロナ禍の企業評価に労働安全衛生・サプライチェーンなどを重視

ESG評価世界大手の蘭サステナリティクスは4月14日、新型コロナウイルスの世界的流行に際して、企業のESG評価に影響を与える要素を発表した。労働安全衛生、サプライチェーンの管理、 製品のガバナンス確保が社会の幸福と長期的な株主価値の保護に重要と主張。注意すべき個別リスクに、SNSでの偽情報を、期待される個別ビジネス分野に医薬品・医療機器事業をそれぞれ挙げた。 また、再生エネルギー分野への投資家の興味・関心も底堅いとした。

(参考情報:2020年4月14日付サステナリティクス HP

今月の『注目』トピックス

<気候変動>
アフター・コロナの経済復興に気候変動や生物多様性等を重視する共同声明文「グリーンリカバリー」、EU環境大臣ら180名超が署名

(参考情報:2020年4月14日付共同声明文

(参考情報:2020年4月14日付EURACTIVE

(参考情報:2020年5月7日付C40 CITES,

4月14日、欧州議会のパスカル・カンフィン環境・公衆衛生委員長主導のもと、新型コロナウイルスからの復興と持続可能な社会を紐づけた声明文「グリーンリカバリー(Green Recovery)」が発表された。 同声明にはEU加盟国13カ国の閣僚や欧州議会の議員79名、グローバル企業のCEO、業界団体代表、NGO代表、シンクタンク代表ら計180名以上が署名を連ねている。

同声明文では、コロナウイルス危機からの回復を契機に、より持続可能で公平な社会を構築することを求めている。

Q&A

Question

今般の新型コロナウイルスの感染拡大で、従業員など関係者の感染が発生した場合の公表の要否について明確に整理できていません。今後の感染の再来に備えて必要な対応などを教えて下さい。

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