レポート

ESGリスクトピックス 2020年度 No.2

2020.5.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<サーキュラーエコノミー>
欧州委員会が法制化を視野に入れたサーキュラーエコノミー・アクションプランを発表

欧州委員会(EC)は3月11日、新たなサーキュラーエコノミー*・アクションプランを発表し、持続可能な製品・サービスに関する法規制の追加も含めた政策を展開していく方針を示した。 例えば、製品における耐久性・再利用可能性の向上や再生材使用の増加、消費者に対する企業の情報開示の強化などに向けた法整備を進める予定。重点分野として挙げられたのは、 電子製品・ICT、電池・自動車、包装、プラスチック、アパレル資材、建材、食料品・水・栄養素類。

(参考情報:2020年3月11日付EC HP

<気候変動>
気候ネットワーク、みずほFGに日本初の気候変動に関する株主提案を提出

NPO気候ネットワークは3月13日、みずほフィナンシャルグループに対し、気候関連リスクおよびパリ協定の目標に整合した投資を行うための計画を開示するよう求める株主提案を提出した。 同団体によれば、気候変動に関する株主提案は日本で初めて。

(参考情報:2020年3月16日付気候ネットワーク HP

<水リスク>
米NGO Ceres、大手機関投資家や銀行らと水関連財務リスク評価タスクフォース発足

米ESG投資分野アドボカシーNGOのCeresは3月20日、米カリフォルニア州教職員退職年金基金 (CalSTRS)等の機関投資家やスカンジナビア・エンスキルダ銀行らとともに、水関連財務リスク評価タスクフォース"Valuing Water Finance Task Force"を発足したことを発表。 企業へ水関連財務リスク対応と持続可能な水利用を促すことを目的としており、今後気候変動に続き、水リスクに関する取組評価、財務インパクト開示要求の動きに繋がる可能性がある。

(参考情報:2020年3月20日付Ceres HP

(参考情報:2020年3月20日付

<気候変動>
英国BP社、2021年株主総会向け気候決議案を環境NGOと協同

エネルギー世界大手のイギリスBP社は3月27日、次年度の株主総会にて環境NGOの Follow This(オランダ)と協同し、気候変動株主提案を行うと発表。先日、BPのCEOに就任したバーナード・ルーニー氏は、 前任のCEOの姿勢から一転し、BP社の自社製品(Scope3、カテゴリー11)からの二酸化炭素排出量を2050年までにネットゼロにする目標を策定している。 またFollow Thisとその支援投資家との対話はパリ目標に整合した目標を定義するために不可欠な要素であるとコメントしている。

(参考情報:2020年3月27日付BP HP

(参考情報:2020年3月27日付Follow This HP

<気候変動>
環境省、TCFD実践ガイド第2版を発行

環境省は3月30日、企業が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に対応したシナリオ分析を行う際の支援ツールとなる、「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド~」を 改訂、Ver2.0を発行したことを発表。2019年3月に発行されたVer1.0に、2019年度の支援事業の成果も踏まえ、①シナリオ分析を進めるうえでのポイントのステップ毎の解説、②2019年度支援企業12社の事例、 ③参考となる外部データ・ツール集が追加された。

(参考情報:2020年3月30日付環境省 HP

(参考情報:2020年3月27日付

<パリ協定>
内閣・地球温暖化推進本部が、「日本のNDC」の提出内容を決定

内閣・地球温暖化推進本部は3月30日、国連気候変動枠組条約事務局へ提出する「日本のNDC」*において、提出済の約束草案**から各種目標値は変更せず、中長期的な削減努力についてのみ追記することを決定した。

今回の決定事項は、温室効果ガス削減目標値の確実な達成と更なる削減努力の追求にむけた①「地球温暖化対策計画」の見直し・提出、②2030年までのエネルギーミックス***と整合した「意欲的な」削減目標値の設定であり、 パリ協定が定める5年毎の報告期限を待つことなくこれらを実施する。

(参考情報:2020年3月30日付環境省 HP

Social-社会-

<情報管理>
政府が個人情報保護法改正案を閣議決定、個人情報の保護と活用促進の両面盛り込む

政府は3月10日、個人情報保護法改正案を閣議決定した。企業などに対して自身の個人データの利用停止等を求めることができるルールなどが主な内容。そのほか、個人情報を漏えいした際の本人への通知義務や外国で 個人情報を取り扱う場合の保護の範囲の拡大、他の情報と照合しない限り特定個人を識別できないよう加工した「仮名加工情報」の取り扱いに関する規律など、個人情報の保護と活用促進の両面の内容を盛り込んだ。

(参考情報:2020年3月10日付個人情報保護委員会 HP

<働き方改革>
厚生労働省が、不妊治療と仕事の両立に関するマニュアル・ハンドブックを公表

厚生労働省は3月19日、不妊治療について職場の理解を深め、仕事と両立できる職場づくりを進めるためのマニュアルとハンドブックを公表した。「マニュアル」は事業主や人事部門向けに両立支援制度の導入方法や 企業の取組事例などを記載している。「ハンドブック」は職場の上司や同僚向けに不妊治療の内容や配慮すべきポイントなどを盛り込んでいる。調査では、国内の夫婦の35.0%が不妊に不安と回答。仕事と治療との両立が難しいことが背景にある。

(参考情報:2020年3月19日付厚生労働省 HP

<情報管理>
IPAがサイバーセキュリティ経営ガイドライン実践状況の可視化ツールβ版を公表

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は3月25日、サイバーセキュリティ経営ガイドライン*の実践状況を可視化するツールのβ版を公表した。39個の設問への回答をもとに、同ガイドライン記載の 「サイバーセキュリティ経営の重要10項目」について、取組の実施状況・成熟度の評価スコアをレーダーチャート形式で表示。本ツールの診断結果が組織のセキュリティ対策の現状や取組み方針に関する経営層への説明等に活用されることを想定している。

(参考情報:2020年3月25日付IPA HP

<働き方改革>
厚生労働省が、勤務間インターバル制度推進のマニュアルを公表

厚生労働省は3月30日、企業などが勤務間インターバル制度の導入・運用を推進するためのマニュアルを公表した。制度の先行導入企業の事例などを踏まえ、制度を導入・運用する際のポイントなど記載している。 同制度は、勤務終了から翌日の出社までに一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組み。導入企業の割合は2019年1月時点で3.7%にとどまっている。

(参考情報:2020年3月30日付厚生労働省 HP

Governance-ガバナンス-

<ガバナンス>
セブン&アイ、ESG推進およびコンプライアンス体制強化へ

セブン&アイ・ホールディングスは3月5日、ESG推進およびコンプライアンス体制強化を図る取組として、グループ横断組織である「CSR統括会議」の下位組織に「コンプライアンス部会」と「サプライチェーン部会」を新設した。 コンプライアンス部会の新設により、グループ各社へのコンプライアンス体制のサポート及び監督の実効性を確保する。また、サプライチェーン部会は、グループで定めている「品質方針」や取引先向けの 「お取引先サステナブル行動指針」の遵守状況を定期的に検証・共有し、教育・啓発・是正を進める役割を担う。

(参考情報:2020年3月5日付セブン&アイ・ホールディングス HP

<ガバナンス>
金融庁がスチュワードシップ・コードを改定、「サステナビリティ」考慮の投資求める

金融庁は3月24日、機関投資家の行動指針となる「スチュワードシップ・コード」を3年ぶりに改定した。新たにESGなど社会・企業の「サステナビリティ」を考慮した投資方針とその実践を求めた。 同コードを受け入れ済みの機関投資家は20年9月末までに、改定コードの受け入れ表明と同コードに基づく公表内容の更新・同庁への通知が必要。

(参考情報:2020年3月24日付金融庁 HP

<ガバナンス>
金融庁が記述情報の充実を目的に有価証券報告書作成の留意事項を公表

金融庁は3月27日、例年の有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項を公表。今回(2020年3月期以降が対象)は、19年1月改正の企業情報開示の内閣府令に合わせ、「経営方針・経営戦略等」 「事業等のリスク」「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」「監査の状況」の項目で記述の拡充を求めた。

(参考情報:2020年3月27日付金融庁 HP

<ガバナンス>
政府が国立大学法人のガバナンス・コードを公表

文部科学省と内閣府は3月30日、ガバナンス体制強化を目的に「国立大学法人ガバナンス・コード」を策定した。大学に内部統制システム(リスク管理やコンプライアンス)の構築や経営の透明性などを求める。 昨年6月に私大のガバナンス・コードが策定・公表されている。

(参考情報:2020年3月30日付文部科学省 HP

全般・その他

<ESG投資>
米ブラックロック、投資先企業に求める5つの優先テーマを発表

投資運用世界大手の米ブラックロックは3月18日、投資先企業に求める5つの優先テーマを発表した。それによると、「取締役の質」「環境リスクと機会」「企業戦略と資本配分」「長期的な成長を促進するための取締役報酬制度」 および「人的資本マネジメント」について、長期的な株主価値向上を目指して、開示の充実を求めるとともに、企業との対話を促進する。

(参考情報:2020年3月18日付ブラックロック HP

<SDGs>
経団連、東京大、GPIFが、SDGsの達成に向けた共同研究報告書を発表

経団連と東京大、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の三者は3月26日、SDGs推進に関する共同研究報告書「ESG投資の進化、Society5.0の実現、そしてSDGsの達成へ-課題解決イノベーションへの投資促進-」を公表した。 報告書を踏まえて三者は、Society5.0 for SDGs実現に向けたアクションプランに合意するとともに、企業変革に向けたアクションプラン策定、産学連携の加速、投資先とのエンゲージメントの推進などの取組を進める。

(参考情報:2020年3月26日付経団連 HP

<ESG投資>
東証が上場会社向けにESG情報の開示ガイドブックを公表

東京証券取引所は3月31日、上場会社がESG情報を開示する際の指針となるガイドブックを公表した。開示の作業や項目に加えて、ESG課題と企業価値を結び付るプロセスを重視。「ESG課題とESG投資」 「企業の戦略とESG課題の関係」「監督と執行」「情報開示とエンゲージメント」の4つのステップごとに検討ポイントをまとめた。関連テーマの開示に関する既存のガイドラインや他社事例などを紹介している。

(参考情報:2020年3月31日付東京証券取引所 HP

今月の『注目』トピックス

<ESG投資>
PRI(国連責任投資原則)がCOVID-19危機を踏まえた投資家がとるべき行動指針を発表

(参考情報:2020年3月27日付 PRI HP)

PRI(国連責任投資原則)は3月27日、「責任ある投資家はCOVID-19危機にどのように対応すべきか」と題するレポートを発表した。

本レポートは、COVID-19により社会・経済環境が一変し不確実性が高まっている世界において、投資家が責任ある行動をとり、この危機を打開することに貢献するために必要な視座と、取るべき行動の指針を提示している。

Q&A

新型コロナウイルス(COVID-19)禍におけるERM(全社的リスクマネジメント)の重要性
~with COVID-19、after COVID-19の世界で価値を創造していくために~

Question

COVID-19の世界的な感染拡大以降、事業を取り巻く環境は一変してしまいました。将来の見通しが難しい不確実な状況下において、企業はどのようにすればこの事態を打開することができるでしょうか?

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