レポート

ESGリスクトピックス 2020年度 No.1

2020.4.1

今月の主なトピックス

Environmental-環境-

<気候変動>
米デルタ、航空業界で初の2030年カーボンニュートラルを宣言

2020年2月14日、航空業界大手米デルタ航空は、2030年までの10年の間に全事業からの二酸化炭素 ネット排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すこと、またそのために10億米ドル(約1,100億円)の投資を行う旨発表した。

デルタ航空は具体的な取組として以下を掲げ、同社を選ぶことが地球環境への配慮に繋がると強調。

  1. 炭素排出削減:機体の最新化、軽量化、運航改善、持続可能な燃料の開発・使用
  2. 炭素吸収:林業、湿地保全、草地保護、海洋・土壌流出防止、その他炭素吸収技術への投資
  3.   

(参考情報:2020年2月14日付デルタ航空 HP

<気候変動>
COP26民間金融アジェンダが発足

2020年2月27日、今年11月に開催される気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26/英国グラスゴー)に向けて、イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏、ビジネス・エネルギー・産業戦略省大臣兼COP26 担当大臣のアロク・シャルマ氏らにより、「COP26民間金融アジェンダ」が発足した。

同アジェンダは、温室効果ガス排出のネットゼロを達成するために、すべての企業、銀行、保険会社、投資家が低炭素社会に合わせてビジネスモデルを調整し、レポーティング、リスクマネジメント、 リターンの適切な枠組みを整える必要があると強調している。

(参考情報:2020年2月27日付イングランド銀行 HP

Social-社会-

<外国人労働者>
経済産業省が「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」を策定

経済産業省と文部科学省、厚生労働省は2月28日、外国人留学生の活用を進める企業を対象に実践的な内容を盛り込んだ「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック」を公表した。 採用後の柔軟な人材育成・待遇等のために押さえるべき項目のチェックリストのほか、実際に外国人留学生を採用・活躍している企業の取組事例(ベストプラクティス)を掲載した。

(参考情報:2020年2月28日付同省 HP

<サイバーセキュリティ>
NISCが「サイバーセキュリティ関連法令Q&Aハンドブック」を公表

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は3月2日、「サイバーセキュリティ関連法令Q&Aハンドブック」を公表した。「経営層」、「サイバーセキュリティ対策を企画、立案し、経営層に説明や助言を行う戦略マネジメント層」、 「法令対応を行う法務部門」を主な対象に、サイバーセキュリティ対策を講じる際に参照すべき関係法令やガイドライン、指針をQ&A形式で解説したもの。 企業における平時のサイバーセキュリティ対策及びインシデント発生時の対応に関する法令上の事項のみならず、情報の取り扱いに関する法令や情勢の変化等に伴い生じる法的課題についても解説している。

(参考情報:2020年3月2日付NISC HP

Governance-ガバナンス-

<ERM>
COSOが、統合リスクマネジメント導入に係る新ガイダンスを公表

米国トレッドウェイ委員会支援組織委員会(以下、COSO)は2月4日、企業が全社的リスクマネジメント(以下、ERM)の導入にあたり必要なアプローチ等を取りまとめた「価値の創造と保護:ERMの理解と導入にむけて」 (以下、本ガイドライン)を公表した。

2017年に公表された「全社的リスクマネジメント-戦略およびパフォーマンスとの統合-」において、ERMは企業の経営戦略・事業目標達成に不可欠な存在として既に言及されているが、 実際にERMが果たすべき役割やその価値、導入にむけての実務的手順等は不明瞭であると指摘されていた。

(参考情報:2020年2月4日付COSO HP

<コーポレートガバナンス>
新型コロナウイルス感染拡大踏まえ、株主総会や開示書類の延期を認める措置を公表。

新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、法務省、金融庁および東京証券取引所は、それぞれ定時株主総会の開催・法定開示書類や適時開示等における対応についての見解を公表した。 いずれも、期限までに開催や提出ができない場合は、当該状況が解消された後に対応することを認めている。

法務省は、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない場合は、その状況が解消された後合理的な期間内での開催を認めた。

(参考情報:2020年2月28日付法務省 HP

(参考情報:2020年2月10日付金融庁 HP

(参考情報:2020年2月10日付東証 HP

<コーポレートガバナンス>
東証、2022年4月から市場区分を再編、高いガバナンスが要件の市場を新設。

東京証券取引所は2月21日、2022年4月から開始する新市場区分を発表した。現行の5市場(東証一部、東証二部、ジャスダック・スタンダード、ジャスダック・グロース、マザーズ」)から、 「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3市場になる。特にプライム市場の上場企業には、より高い基準のコーポレートガバナンスが求められる。

新区分の「プライム市場」は、流通時価総額等の基準厳格化やコーポレートガバナンス・コードの全原則適用など、他市場よりも高いコーポレートガバナンスが求める。 現行の東証一部上場企業は移行の想定だが、一定期間内に基準を満たせない場合転出させられる。

(参考情報:2020年2月21日付東証 HP

全般・その他

<SDGs>
WBCSDがSDGs学習ウェブサイトを開設、SDGsの理解向上が企業戦略への統合促進が狙い

グローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は2月26日、SDGsに関する学習ウェブサイト「SDG Essentials for Business」を開設した。個人・企業双方が利用可能。 「SDGとは何か」「SDGsが重要な理由」「SDGsを達成するためのビジネスの役割」「SDGsに取り組むことでもたらされる機会」などのテーマが学習できる。WBCSDが2018年に実施した調査で、 48%の企業が社内でSDGsのコンセプトが理解されていないと回答。SDGsの企業戦略への統合を促進するため、企業内の個人レベルでのSDGs理解向上を狙ったのがサイト立ち上げの理由。

(参考情報:2020年2月26日付WBCSD HP

<SDGs>
国連グローバルコンパクトがSDGsと企業のコアビジネスの統合を支援するイニシアチブ「SDG Ambition」を開始、参加を呼びかけ

国連グローバルコンパクトは1月23日、持続可能な開発目標をコアビジネスに統合するための企業支援を目的としたイニシアチブ「SDG Ambition」を開始した。 企業など組織が持続可能性とSDGを事業運営に組み込む際に、パフォーマンスの測定や管理に役立つフレームワークやツールを提供する。 グテーレス国連事務総長がダボス会議で発足させたもので、40か国以上で1,000社以上の企業と連携を目指す。

(参考情報:2020年1月23日付国連グローバルコンパクト HP

<ESG>
ムーディーズが、ESG課題の企業信用格付けへの影響増大との見解を示す

大手格付け機関の米ムーディーズは2月10日発表のレポート「2020 Outlooks」で、ESG(環境、社会、ガバナンス)の課題が企業の信用格付け評価と投資決定への影響を増しているとの見解を示した。

気候変動政策の厳格化で二酸化炭素の排出量が多いセクター(電力、石油・ガス、自動車製造、航空、建築材料、輸送等)は、低炭素社会への移行リスクが高まると予想。 同セクターの将来資産価値の減損懸念やキャッシュフロー減少等が、資本コストを上昇させ、資金調達難を引き起こす可能性があるとした。

(参考情報:2020年2月10日付ムーディーズ HP

<ESG>
欧州委が非財務情報開示指令の改正を検討開始。

欧州委員会は1月30日、投資家が投資先の企業や金融機関の持続可能性をよりよく把握できるようにするため、非財務情報開示指令(NFRD)改正の検討を始めた。 20年第4四半期に公表の予定。現行指令(2014年制定)では、企業に開示を求める非財務情報の仕様を定めているものの、持続可能性の問題が企業に与える影響や企業活動が社会や環境に与える影響に 関する内容や開示方法の指定が不十分・不明確と指摘されていた。改正案ではこれらを改善する。

(参考情報:2020年1月30日付欧州委員会 HP

今月の『注目』トピックス

<ガバナンス>
公益通報者保護法改正案を閣議決定、通報窓口設置の義務化などが柱

(参考情報:2020年3月6日付消費者庁 HP

政府は3月6日、企業や行政機関を含む組織で不正などを内部告発した人が解雇等の不利益を受けないよう保護することを目的にした公益通報者保護法の改正案を閣議決定した。 それによると、一定規模以上の企業・組織への内部通報体制整備の義務付けのほか、保護対象のOBや役員などへの拡大、担当者が通報者を特定可能な情報を漏らした場合の罰則の導入などが柱。 また、不正の早期発見効果を狙い、行政機関が通報を受け付ける要件を緩和した。

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