レポート

ESGリスクトピックス 2018年度 No.9

2018.12.1

国内トピックス2018年10月に公開された国内のCSR・ERM等に関する主な動向をご紹介します。

<ESG投資>
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「Climate Action 100+」に参加

(参考情報:2018年10月9日付 GPIF HP)

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は10月9日、気候変動分野の機関投資家イニシアチブ「Climate Action 100+」に参加したと発表した。同イニシアチブには現在、合計32兆米ドルを運用する310の機関投資家が参加している。

同イニシアチブは温室効果ガスの排出量の多い企業に対して、①気候変動リスク・機会をモニタリングし、経営層としての説明責任を果たすガバナンス体制の構築 ②パリ協定で国際合意に達した2℃目標へのコミットメント ③金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD*)の報告に沿った情報開示の向上――の3点を求めるエンゲージメント(直接対話)を行う。

<情報セキュリティ>
IPAがセキュリティリスク分析ガイドを改定、工数の2~3割減が可能に

(参考情報:2018年10月15日付 経済産業省HP)

情報処理推進機構(IPA)は10月15日、「制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版」を公開した。

同ガイドは組織の重要インフラや産業システムの制御システムの脅威に対するセキュリティを向上させるため、事業者がリスク分析を実施する手順を示したもの。初版のリスクアセスメント手法(資産・事業被害両ベースのリスク分析)を見直した結果、作業工数の2~3割程度の削減が可能という。同時に、利用者がより理解しやすいようリスク分析の基本事項についての説明を拡充した。

<生物多様性>
経団連が生物多様性宣言などを改定、「経営トップ」の責任明確化などを追加

(参考情報:2018年10月16日付 経団連HP)

経団連は10月16日、「経団連生物多様性宣言・行動指針」の改定版を公表した。

それによると、今回の改定は、①生物多様性や自然との共生に資する経営の責任の所在を明確化 ②企業が生物多様性の保全に配慮すべき範囲を、旧版の「横」(国境を越えた取り組み)に加えて、「縦」(自社グループおよびサプライチェーン)に拡大 ③自然共生・低炭素・循環型の3つの社会の実現への貢献を事業活動に統合した「環境統合型経営」の推進――の3点がポイント。

<コーポレートガバナンス>
法務省が社外取締役の選任義務化を含む改正会社法要綱案(仮案)を公表

(参考情報:2018年10月25日付 法務省HP)

法務省は10月25日、会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案)を公表した。今回初めて社外取締役選任を義務化する方向性が示された。「監査役会設置会社(そのうち公開会社かつ大会社)」で、かつ「金融商品取引法に基づき発行する株式について有価証券報告書の提出義務のある会社」が適用対象になる見込み。

社外取締役の選任義務化は、これまで法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会で賛否が分かれており、導入を懸念する声もあった。

海外トピックス2018年10月に公開された海外のCSR・ERM等に関する主な動向をご紹介します。

<環境>
全魚介類商品の原産地・漁法等を可視化したツールをマークス&スペンサーが公開

(参考情報:2018年10月9日付 マークス&スペンサー社HP)

英小売大手マークス&スペンサーは10月9日、店舗で販売している全魚介類の原産地・漁法等を可視化したツールをホームページ上に開設した*。天然漁獲・養殖の双方が対象となる。このようなツールの公開は、小売大手の中でも初めての取組みとなる。

ツールでは、取り扱う全47品目について、29カ国71漁業・養殖事業者を消費者やステークホルダー向けに開示している。同社は消費者の責任ある漁業への関心の高さに配慮して、魚介類がどこから来て、どのように捕獲されるかについての情報を共有するためにこのようなツールを開発した。

<環境>
環境省がプラスチック資源循環戦略案を公表

(参考情報:2018年10月19日付 環境省HP)

環境省は10月19日に開催された中央環境審議会小委員会において、「プラスチック資源循環戦略」の素案を提示した。戦略には、以下のような目標が含まれている。

  • 2030年までに、使い捨てプラスチック(容器包装など)を累積で25%削減する。
  • 2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリサイクルまたはリユースする。
  • 2035年までにすべての使用済プラスチックについて、熱回収を含めて100%有効活用する。
  •   
<人権>
国際人権組織ETIが、現代奴隷法が求める声明のフレームワークツールを公表

(参考情報:2018年10月29日付 同団体HP)

国際人権組織の「倫理的な取引のためのイニシアチブ」(Ethical Trading Initiative、ETI)は10月29日、現代奴隷法が企業に求める「声明」を作成するためのフレームワークツールを公表した。

本ツールは、企業などが同法の要求に従って「声明」を策定する際に、法が指定する項目ごとに盛り込むべきポイントをまとめたもの。企業などが、ツールに従って記載内容を決めることで、法律の趣旨により即した声明の作成が期待できる。

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