レポート

ESGリスクトピックス 2014年度 No.10

2015.1.1

国内トピックス2014年11月に公開された国内のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<ハラスメント>
厚生労働省がマタニティーハラスメント等の実態調査を実施する意向を表明

(参考情報:2014年11月7日 国会議事録他)

厚生労働省は、2014年11月7日、妊娠・出産等を理由に不利益な取扱いを受けるマタニティーハラスメント等について、詳細な実態調査を実施する意向があることを表明した。

同省は、妊娠、出産等を理由とする不利益な取扱いについて、正規雇用の女性だけでなく、派遣やパートなど、社会的立場が弱い非正規雇用の女性の被害状況についても、詳細な実態調査を実施する必要性があるという考えを示している。

調査を実施する場合の詳細な方法や規模は、今後検討する予定。

<コンプライアンス>
法務省が改正会社法に伴う会社法施行規則等の改正案に関する意見公募を開始

(参考情報:2014年11月25日 政府の意見募集のHP)

法務省は、2014年11月25日、改正会社法(公布日:2014年6月27日)に伴う、会社更生法施行令および会社法施行規則等の改正案について、意見公募の手続に付すことを公示した。

会社法施行規則の改正案として、内部統制システム関連では、事業報告の内容の見直しが含まれている。

従来の会社法施行規則では、事業報告の内容として、「法第348条第3項第4号、第362条第4項第6号並びに第416条第1項第1号ロ及びホに規定する体制の整備についての決定又は決議があるときは、その決定又は決議の内容」と規定されていたが(会社法施行規則118条2号)、今般、運用状況の概要も追加する予定。

同改正案が承認されれば、今後は内部統制システムの運用状況の概要についても、情報開示が求められる。

<コーポレートガバナンス>
金融庁・東京証券取引所が複数の社外取締役の設置等を促す企業統治指針案を提示

(参考情報:2014年11月25日 金融庁HP・東京証券取引所HP、11月26日 日本経済新聞他)

金融庁および東京証券取引所(以下、東証)は、2014年11月25日、政府が成長戦略に掲げる企業統治の強化のための「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)案を公表した。

日本企業の企業統治の透明性を高め、海外投資家の信頼を強化するため、2014年8月に、コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議の初会合以降、計7回にわたる議論の後、同案のとりまとめに至ったもの。

同案は、「株主の権利・平等性の確保」、「従業員・顧客などとの協同」、「透明性の確保」、「取締役会の責務」、「株主との対話」という5つで構成されている。

①上場企業に、少なくとも2名以上の「独立社外取締役」の選任を促し、また②(左記①に関わらず)自社の業種・規模・事業特性・機関設計・自社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも取締役会構成員の3分の1以上の「独立社外取締役」の選任が必要と考える上場会社に、その取組方針の開示を求めている点が主な内容。現行の東証上場規則で求めている「独立役員」1名以上の選任より踏みこんだ内容になっている。

<障がい者の活用>
企業で活躍する障がい者を表彰する「ACEアワード」でKDDIの社員が第一回グランプリを受賞

(参考情報:2014年11月26日 同社 HP他)

2014年11月19日、一般社団法人「企業アクセシビリティ・コンソーシアム (Accessibility Consortium of Enterprises (ACE) ) 」が主催する「第一回ACEアワード」で、KDDIの社員がグランプリを受賞した。

ACEは、企業の成長に資する新たな障がい者雇用モデルの確立と、企業の求める人材の社会への輩出を目的として、2013年に設立され、現在、KDDIを含む24社の企業が参加している。ACEアワードは、企業で活躍する障がい者のロールモデル(行動や考え方の模範となる人物)を表彰する制度で、第一回目となる今回は、ACEの会員企業から16名がノミネートされた。

KDDIでは、手話のできるスタッフが少なく、筆談などでコミュニケーションをとる状況であったため、聴覚に障がいを持つ顧客からスマートフォンの使い方や料金についての相談等を受けた際、うまく対応ができていないのではないかという不安を抱えていた。

<コンプライアンス>
経済産業省が不正競争防止法見直しの方針を提示

(参考情報:2014年11月27日同省HP、11月28日 日本経済新聞他)

経済産業省は、2014年11月27日、「産業構造審議会 知的財産分科会 営業秘密の保護・活用に関する小委員会(第3回)」で、企業の技術情報をはじめとする営業秘密の流出防止のため、不正競争防止法を見直す方針を示した。

近年、国内外で日本企業の営業秘密が不正に流出する事件が相次ぐ中、営業秘密の流出防止のための抑止力の高い規制内容へ見直し、取締りを強化することで、日本企業の国際競争力を保護することが狙い。

主な見直しの方向性は次頁の通り。なお、同省は、2015年の通常国会で同方針を踏まえた改正法案を提出する見通し。

海外トピックス2014年11月に公開された海外のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<地球温暖化>
国連の気候変動に関する政府間パネルが、最新の統合評価報告書を発表

(参考情報:2014年11月3日付 IPCC HP 他)

「気候変動に関する政府間パネル」(Intergovernmental Panel on Climate Change以下、IPCC*)は11月2日、最新の統合評価報告書を公表した。

統合評価報告書は、一昨年9月から昨年4月までに公表された3つの作業部会**の報告書と、関連する特別報告書の内容を横断的に統合したもので、人為的な温室効果ガスの排出による気候変動の現状及び、今後の見通しについての最新の知見を取りまとめたものである。

報告書では、今世紀末までの気温上昇を2度未満に抑える国際目標を達成するためには、温室効果ガスの排出量を一定レベル以内に抑える必要があるが、現在のペースで排出が続けば20~30年で目標の達成は困難となる、という見通しを示した。

本報告書は、12月にペルーのリマで開催される「気候変動枠組条約締約国会議(COP20)」をはじめ、今後の地球温暖化対策のための様々な議論に科学的根拠を付するために使用されることとなる。

<環境>
カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトが、世界の森林破壊と企業の事業活動との関係性に関する報告書を発表

(参考情報:2014年11月11日付 CDP HP)

国際NPOのカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(以下、CDP)は、11月11日、世界の森林破壊と企業の事業活動との関係性に関する報告書を発表した。

本報告書は、CDPの保有する森林破壊のデータベースと、世界の代表的な152企業の森林破壊に関する情報開示状況を分析し、各社の事業と森林破壊との関連性、企業による森林破壊問題への取組の現状等をまとめたものである。

CDPは、森林破壊の主な要因は、木材に対する需要の増加だけではなく、牛の放牧地、パーム油・大豆生産地の拡大にあり、製紙業界のみならず非常に多くの業界・企業が森林破壊に関わっていること、森林破壊の地球温暖化に対する影響が運輸セクターによる影響と同程度(それぞれ原因全体の15%ずつを占める)に拡大していることを指摘したうえで、以下のとおり報告を行った。

<再生可能エネルギー>
IKEAが、大型の集合型風力発電所を取得

(参考情報:2014年11月18日付 同社HP)

IKEAは11月18日、テキサス州にある165メガワットの風力発電所を取得した、と発表した。

同社は、今年初めにもイリノイ州にある風量発電所を取得しており、この度取得した発電所の発電量とあわせると、米国における平均家庭9万世帯分の電力量に相当する。他にも、米国内外にて、店舗屋上へのソーラーパネルの設置、冷暖両方の地熱システムの導入、世界9か国における279本の風力タービンの稼働等、再生エネルギーに対し積極的に投資を行い、導入を進めている。

同社は、「最高サステナビリティ責任者」(CSO:Chief Sustainability Officer)と呼ばれる役職を設け、サステナビリティを「経営上の中核課題」として位置付けており、2020年までには同社の全消費電力と同等量の再生可能エネルギーの生産を目指している。

<サステナビリティ>
国連グローバルコンパクトが、持続可能性に関する企業の課題に、取締役会を関与させるための新しいプログラム「グローバルコンパクト・ボードプログラム」を開始

(参考情報:2014年11月20日付 国連グローバルコンパクトHP)

国連グローバルコンパクト(以下、国連GC)は11月20日、持続可能性に関する企業の課題に、取締役会を関与させるための新しいプログラム「グローバルコンパクト・ボードプログラム」を開始した。

本プログラムは、個別企業ごとの現状の取組の評価、専門のファシリテーターによる取締役会でのディスカッション、課題分析ツールの使用を通じて、企業ごとの課題と当該企業の取締役会が果たすべき役割を明確にし、持続可能性に関する戦略を全社で推進させるためのものである。

国連GCは、新たな企業価値を創造しながら、全てのステークホルダーの期待に応え、企業が持続的に発展していくためには、取締役会レベルでの積極的な議論と適切な行動が必要であるとしており、そのためにまずは各社が真に目指すべき姿と、実際の行動とのギャップを理解することが求められる、としている。

<健康>
アップルが、(RED)*世界エイズデー2014キャンペーンを実施

(参考情報:2014年11月24日付 同社HP)

アップルは11月24日、世界エイズデー(12月1日)にあわせ、(RED)世界エイズデー2014キャンペーンを実施した。

同社は、年間で最も多く買い物が行われる2日間**の製品売り上げの一部を「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」へ寄付することとした。また、エイズ撲滅プロジェクト「(RED)」への協力を表明し、同プロジェクトのテーマカラーである赤色を基調とした製品群「(PRODUCT)RED」や、従来より人気のあるアプリに、様々な追加機能を盛り込んだ「特別版」を開発・販売し、得られた売り上げの一部または全てを寄付することとした。

  1. ※ エイズに感染して生まれてくる人がいない世代を30年以内に作ること、を目標とするエイズ撲滅プロジェクト。アップルの他、コカ・コーラ、スターバックス社などが参加している。
  2. ※※感謝祭(11月第4週の木曜日)の翌日(ブラックフライデー)と、翌月曜日(サイバーマンデー)はアメリカ全土の小売店やネット通販業者でバーゲンが開催される2日間となっている。2014年は、11月28日金曜日と12月1日月曜日が該当した。

会員登録で レポートを全て見る