レポート

ESGリスクトピックス 2014年度 No.9

2014.12.1

国内トピックス2014年10~11月に公開された国内のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<女性活躍推進>
厚生労働省が女性管理職比率の策定・公表を義務化する方針を決定

(参考情報:2014年10月7日付 厚生労働省HP)

厚生労働省は、10月7日の労働政策審議会雇用均等分科会において、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法案要綱」について審議し、国や地方公共団体、各企業に対し、女性の管理職比率目標数値の策定・公表を義務付ける法案を提出する方針を示した。

今後、政府により具体的な目標設定や情報公開の方法に関する指針が示され、それを踏まえ、国や地方公共団体、各企業は、女性登用の数値目標や、取組内容を盛り込んだ行動計画を策定し公表することが義務付けられる。数値目標は一律ではなく、女性の採用比率や勤続年数、労働時間状況などを分析したうえで、それぞれが独自に定める。なお、300人以下の企業に対しては、「努力目標」とするにとどめている。

10月17日閣議決定されたが、衆議院解散により、廃案となった。

<労務>
経済産業省が企業の「健康経営」「健康投資」を推進するための施策を展開

(参考情報:2014年10月15、25日付 経済産業省HP)

経済産業省は、10月15日、「企業の『健康投資』ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~」を公表した。
本ガイドブックは、「健康経営」*「健康投資」**という概念とそのメリットへの理解、その具体的な取組手法を浸透させ、企業経営者自らが「健康経営」の理念を考え、「健康投資」を実践することを促すものである。

また、同省は10月25日、東京証券取引所と共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定し、2016年3月頃公表することを発表した。「健康経営」に優れた企業を選定し、長期的な視点からの企業価値向上を重視する投資家からの投資を促し、企業の「健康経営」取組の促進につなげたい、としている。<銘柄選定の評価基準>

<コンプライアンス>
不当表示への課徴金制度を盛り込んだ「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」
が成立

(参考情報:2014年10月24日付 消費者庁HP、11月20日付国会HP)

11月19日、不当表示を抑止する課徴金制度を盛り込んだ「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」が成立した。

対象となる違反は、実際より著しく優れていると消費者に思わせる「優良誤認」と、実際より著しく有利だ(得だ)と思わせる「有利誤認」の2つであり、違反があった場合、当該商品やサービスの最大3年分の売上額の3%を課徴金として徴収する。

調査前の自主申告や、顧客への自主的な返金措置を行うことで、課徴金の減額・免除が認められる。また、課徴金の額が150万円未満の場合や、商品仕入れ先などに表示根拠を確認する等の注意を十分していた場合等は課徴金の対象とならない、としている。

<情報管理>
経済産業省が営業秘密管理指針の改訂案を公表

(参考情報:2014年10月31日付経済産業省HP他)

経済産業省は10月31日、企業の営業秘密管理に関する指針の改訂案を公表した。

従来、営業秘密を盗まれた企業が損害賠償請求等の訴訟を提起しても、当該秘密情報の管理が杜撰な場合等には、「営業秘密」と認められず、企業側の主張が認められないケースがあった。

今回の改訂では、「紙媒体」「電子媒体」等、情報の保存形態別に、営業秘密と主張しやすくするための新たな管理指針を示した。具体的な内容は以下の通り。

<営業秘密情報の媒体別管理指針>~営業秘密管理指針(全部改定案)より抜粋~

  • 「紙媒体に保存された営業秘密」
    • 当該文書に「マル秘」と記載し、秘密管理意思を示す
    • 施錠可能なキャビネットや金庫等に保管する
<知的財産管理>
特許庁が特許の帰属を「会社」とする特許法改正案を正式に決定

(参考情報:2014年11月20日付 特許庁HP、日本経済新聞朝刊)

特許庁は、11月19日に有識者会議を開き、職務発明に関する特許を受ける権利は、「会社に帰属する」とする特許法改正案を、来年の通常国会へ提出することを決定した。

現行の特許法では、職務発明に関する特許は、発明した従業員に帰属するとされていた。しかし近年は、

  • 製品の高度化・複雑化(1つの製品が複数の特許から構成されている等)、一発明が複数人の共同開発で生み出されるケースの一般化により、「相当な対価」を算出することが困難となっており、また、青色発光ダイオードに関する訴訟をはじめ、これらの問題に基づく訴訟リスクが高まっている
  • 企業の知的財産戦略(オープン・クローズ戦略*等)の運営に支障を来す

海外トピックス2014年10~11月に公開された海外のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<CSR>
国連グローバル・コンパクト、GRI、WBCSDのSDGsの達成に向けて協働タイトル

(参考情報:2014年10月7日付 国連グローバル・コンパクトHP)

国連グローバル・コンパクトは10月7日、SDGs(Sustainable Development Goals :持続可能な開発目標*)の新たな開発目標の達成に向けてGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)と共に協力して取り組んでいくと発表した。

三者の協働により国際的な専門家ネットワークと企業の好取組事例を収集し、インパクト評価(対象とする事業や製品が社会や環境にもたらした変化・影響を定量的に測定する評価手法)やKPI設定、目標設定に関する企業向けガイドブックを2015年に発行する予定。本ガイドブックは、企業が自社のインパクトを測定し、SDGsに沿った戦略を立案し、目標設定する際の指針となる。

本ガイドブックに取り上げられる予定の主な項目は以下の通り。

  • 既に存在する原則・手法・基準を利用し、SDGsに関連するインパクトを評価・報告する方法の提示
<CSR>
P&Gが資源保全と環境保護のための持続可能性に関する目標を新たに追加

(参考情報:2014年10月13日付 同社HP)

P&G(米国)は、10月13日、持続可能性に関する目標を新たに追加することを発表した。

今回、同社は2020年に向けた中期目標に、新たに水の保全と製品パッケージに関する以下の項目を追加した。

  • 水資源が不足しがちな地域に位置する施設での水資源の保全活動に注力しながら、同社の生産拠点における、生産単位あたりの水使用量をさらに20%削減
  • 節水の効果をもたらす製品を10億人の消費者に提供

また、容器・包装削減についても、2020年までに消費者1回使用あたりの容器・包装量を20%削減するという目標の達成に向けて、順調に推移しているが、さらに目標を以下のとおり拡大する。

<CSR>
SSE(持続可能な証券取引所イニシアティブ)が会合を開く

(参考情報:2014年10月14日付 同団体HP)

SSE(Sustainable Stock Exchanges Initiative:持続可能な証券取引所イニシアティブ)は10月14日、スイスのジュネーブで行われたUNCTAD(国連貿易開発会議)のWorld Investment Forumにおいて4回目の会合を開催した。

当日は、世界55の証券取引所によるサステナビリティ・イニシアティブの推進状況をまとめた”The SSE 2014 Report on Progress”が発表された。同レポートは、世界55の証券取引所でサステナビリティへの取組が大きく前進していることを指摘しており、サステナビリティ報告やサステナブルな事業慣行の推進に関する優れた取組事例や、現在までの進捗状況などが紹介されている。

また、証券取引所がサステナビリティ投資の推進、上場会社に対するサステナブルな事業の推進という投資家、企業双方の行動に影響を与える仲介者としての役割や影響の大きさについて確認された。

<CSR>
コカ・コーラが HIV母子感染の撲滅を目指す新しいキャンペーン「SHARE THE SOUND OF AN AIDS FREE GENERATION」を開始

(参考情報:2014年11月3日付 同社HP)

コカ・コーラ(米国)は、11月3日、チャリティー団体‘‘(RED)’’*と協力して、母子間でのHIV感染の撲滅を目指す新しいキャンペーン「SHARE THE SOUND OF AN AIDS FREE GENERATION」を開始するとともに、当該運動への参加呼び掛けを開始した。

このキャンペーンでは数多くのアーティストが参加し、新曲を提供したり、音楽イベントを開催することで得られる収益を、HIV・結核・マラリア撲滅の活動を行うグローバルファンドに提供し、HIVの感染予防、検査、カウンセリング、治療、ケアサービスを提供する助成金に充てることを目指している。

本キャンペーンは12月1日の世界エイズデーから1ヶ月にわたって行われる。全世界で展開する同社のネットワークを活用し、本キャンペーンを世界40ヶ国以上で実施する予定。

同社はHIV撲滅への取組に尽力しており、2006年から同社及び関係財団は、意識向上、教育、予防を通したエイズ撲滅への取組に1,500万ドル以上を投じている。

<CSR>
2014年度のグローバル・コンパクト100が発表される

(参考情報:2014年11月10日付 国連グローバル・コンパクトHP)

11月10日、国連グローバル・コンパクト(以下国連GC)は、2014年度のグローバル・コンパクト100(以下GC100)の選定企業100社を発表した。

GC100とは、国連GCと欧州の社会的責任投資の評価機関であるオランダのサステナリティクス社がパートナーを組んで作成された構成銘柄。GC100は国連GC10原則への取組度合、最高経営責任者のコミットメント表明に加え、ESG活動に基づいた着実な事業採算性といった選定基準をもとに、国連GC署名企業約8,000社の中から100社が構成銘柄として選定され、毎年見直しが実施されている。

日本の署名企業からは11社*が選定され(昨年度は6社)、米国の13社に次いで、世界で2番目の多さとなっている。

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