レポート

ESGリスクトピックス 2014年度 No.8

2014.11.1

国内トピックス2014年9~10月に公開された国内のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<震災対策>
東京商工会議所が「会員企業の防災対策に関するアンケート」調査結果を公表

(参考情報:2014年9月8日付 東京商工会議所 HP)

東京商工会議所は、会員企業におけるBCPや帰宅困難者対策の策定状況等の防災対策の実態を把握するためのアンケート調査を実施し、調査結果を公表した。

調査結果のポイントは以下のとおり。

  • 帰宅困難者対策条例の認知度は全体で6割。従業員規模が小さくなるほど認知度は低下。
  • 条例の努力義務である「全従業員分の3日分の備蓄」は半数、都が呼びかけている「外部の 帰宅困難者向けの10%余分の備蓄」を行っている企業は2割。
  • 従業員に対する安否確認手段は「メール」、「通話」がそれぞれ6割。 災害時は通信規制や輻輳によりメール・通話が利用できない可能性が高いが、災害時の安否 確認に効果的な「災害用伝言サービス」は36.6%。
  • 一時滞在施設として協力する企業、協力する可能性がある企業の合計はわずか5.4%。
    一方、一時滞在施設開設までの間、来客者等を受け入れる可能性がある企業が4割。
<環境>
日本政策投資銀行が「環境配慮」社債を発行

(参考情報:2014年9月22日付 日本政策投資銀行HP、日本経済新聞)

日本政策投資銀行は環境的意義の高いプロジェクトへの投資資金調達を目的とした社債(グリーンボンド)を発行する。ユーロ建てで300億円以上を調達し、環境に配慮したビルの建設や改修の融資に充てる。日本の金融機関によるグリーンボンドの発行は初めて。環境関連投資への関心を持つ投資家が多い欧州で発行する。年限は2~3年で数億ユーロの発行を予定している。資金用途は環境性能を評価する「グリーンビルディング認証」*が付いたビル向けの融資に限定する。屋上緑化や再生可能エネルギーの活用などを5段階で評価し、高格付けの5物件に充てる予定。

同行は環境に配慮した経営や防災対策に優れた企業への融資に力を入れている。今後、グリーンボンドよりも資金用途を広げた社会貢献型の債券発行も検討する予定。

<雇用>
厚生労働省が平成26年度「均等・両立推進企業表彰」受賞企業を決定

(参考情報:2014年9月25日付 厚生労働省HP)

厚生労働省は平成26年度「均等・両立推進企業表彰」の厚生労働大臣優良賞の受賞企業として、均等推進企業部門に1社、ファミリー・フレンドリー企業部門に6社を選定した。

「均等・両立推進企業表彰」は、女性の能力を発揮させるための積極的な取組(ポジティブ・アクション)や、仕事と育児・介護との両立を支援する取組を行って、他の模範となるような企業を表彰する制度で、平成11年度から毎年実施している。表彰によりその取組を広く周知し、男女ともに職業生活の全期間を通じて持てる能力を発揮できる職場環境の整備を促進することが狙い。

厚生労働大臣優良賞となった7社の選定理由は、女性のキャリア開発と就業継続への積極的な取組や男性の育児休業取得促進など、それぞれの部門において特に優れた取組を行っていることが挙げられている。選定企業7社は以下の通り(50音順)。

<コンプライアンス>
経済産業省が「組織における内部不正防止ガイドライン」の改訂版を公開

(参考情報:2014年9月26日付 経済産業省HP)

経済産業省は企業等の組織が内部不正対策を整備するためのガイドラインとしてまとめている「組織における内部不正防止ガイドライン」の改訂を行い、公表した。

同省では、2014年に入り相次いで発生している内部不正による機密情報の漏えい事案を受け、(独)情報処理推進機構と協力し、情報収集を行うとともに、情報管理における問題点を分析し、同様の事案の発生を防ぐための組織における対策検討を実施。

今回の改訂の主なポイントは以下の3点。

  1. ①経営層によるリーダーシップの強化
  2. ②情報システム管理運用の委託における監督強化
  3. ③高度化する情報通信技術への対応
<労務・人事>
過労死防止対策推進法の関係政令が閣議決定

(参考情報:2014年10月14日付厚生労働省 HP/CSRトピックス2014年度第4号)

2014年10月14日、「過労死等防止対策推進法の施行期日を定める政令」と、「過労死等防止対策推進協議会令」が閣議決定され、今年の通常国会で成立した「過労死等防止対策推進法」の施行期日が11月1日と定められた。

政府はこの法律に基づき、過労死などの防止対策を効果的に推進するため、大綱を作成する予定。大綱案の作成に際しては厚生労働大臣が、過労死等防止対策推進協議会の意見を聴くこととなっている。また、過労死等防止対策推進協議会令では、法律で規定されている事項のほか、同協議会の組織や運営に関する必要事項が定められた。主なポイントは以下の通り。

■既に法律で規定されている事項
  • 委員の構成は、①過労死等の当事者、②労働者代表者、③使用者代表者、④過労死等に関する専門的知識を有する者の四者とし、合計20人以内の非常勤の委員により組織すること。

海外トピックス2014年9~10月に公開された海外のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<労働問題>
国際労働機関とH&Mが持続可能なグローバル・サプライチェーンの実現に向けた協定を締結

(参考情報:2014年9月15日付国際労働機関 HP)

国際労働機関(以下、ILO)とH&Mは、9月15日、衣料産業におけるグローバル・サプライチェーンの持続可能性の促進に向けたパートナーシップ協定を締結した。

協定締結に伴い、ILOとH&Mは今後「労使関係及び賃金に関する共同活動」、「H&M下請け工場における訓練及び技能開発」、「世界の衣料産業の労使団体の強化」に関する取組を推進する、としている。

<コンプライアンス>
20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議が「多国籍企業のグループ内取引報告義務化に関するルール」の受け入れを表明

(参考情報:2014年9月21日付 財務省HP他)

経済協力開発機構(以下、OECD)は9月16日、多国籍企業の課税逃れを防ぐ国際ルールをまとめ、9月20、21日にオーストラリアで開催された20か国・地域(以下、G20)財務相・中央銀行総裁会議で報告を行った。G20は、2015年中を目途にOECDによってまとめられた国際ルールに関する議論を終了させ、2016年度から各国の法律を当該ルールに適合させる旨の声明を発表した。

OECDの報告では、多国籍企業が、知的財産等の無形資産を法人税率の低い国にある子会社に売却し、ライセンス料収入を当該子会社に集中させることで、節税を行っているケースが多いと指摘されている。今回の国際ルールは、多国籍企業に対し、本社・海外子会社間で行われる売買につき、その金額と決定プロセスを各国税務当局に報告することを義務付ける内容となっている。

<コンプライアンス>
欧州理事会が大企業の透明性向上のための新ルールを承認

(参考情報:2014年9月29日付 欧州連合HP/CSRトピックス2014年度第3号)

欧州理事会は、9月29日、EU域内の大企業に対し「非財務情報」および「取締役会構成員の多様性に関する情報」の開示を義務付ける指令を正式に承認した。本指令の対象となる企業は、欧州域内の従業員数500人以上の公共性の高い企業(銀行、保険、その他の加盟国が指定した企業など)で、約6,000社が対象となる。

同指令は、4月15日に欧州議会にて指令案として採択されていたもの。

理事会の承認を受け、今後欧州委員会があらためてガイドラインを策定する。EU加盟国は、ガイドラインを元に各国の法令を改正し、該当する企業に対しては、2017年から情報の開示を求める見通し。開示を義務付けられる主な項目は以下の通り。

<環境問題>
国連グローバルコンパクトが企業の水利用に関する情報開示ガイドラインを発表

(参考情報:2014年9月30日付 国連グローバルコンパクトHP)

国連グローバルコンパクトは、9月30日、企業の水利用に関する情報開示のためのガイドラインを発表した。近年、多くの企業が、水利用に関する情報開示を行っていたが、その評価方法や手法が様々であり、企業間の取組や年次ごとの取組を比較することができない状況となっていた。

本ガイドラインでは、各企業の水利用に関する情報開示においては、「水の枯渇」、「水ストレス」(水需給の逼迫)、「水リスク」(水質汚濁や、生態系への影響等)といった問題に対して、どのような取組を実施しているか、を開示することが重要であると強調している。また、本ガイドラインでは企業に対し、水利用に対するマネジメントの強化のために、以下のような取組も求めている。

<CSR>
ウォルマートが、持続可能な食品システムの構築のための公約を発表

(参考情報:2014年10月6日付 ウォルマートHP)

ウォルマートは10月6日、同社で開催した「グローバル・サステナビリティ・マイルストーン・ミーティング」において、持続可能な食品システムを構築するための4つの公約を発表した。

会議には、同社に関係するサプライヤー、非営利団体などが参加しており、同社は参加者に対して、これらの公約を達成するための様々な局面での協力を呼びかけた。4つの公約の内容は以下の通り。

  • 『コストカットを通じた価格低減の実現』
    農業活動による環境負荷を低減すると同時に、顧客の負担を減らすための「食料品の生産コストを低減する策」をサプライヤーと協力し、継続的に実行する。
  • 『製品の普及促進』
    世界中のウォルマート店舗ネットワークの利便性向上や、配送システム等の強化だけではなく、ウォルマート基金などを通じて集めた寄付を有効に利用し、より多くの人々の手に食品を届けられる環境を整備する。

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