レポート

ESGリスクトピックス 2014年度 No.7

2014.10.1

国内トピックス2014年8~9月に公開された国内のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<コーポレート・ガバナンス>
コーポレート・ガバナンス・コードの策定に関する有識者会議を開催

(参考情報:2014年8月7日付 金融庁HP)

金融庁と東京証券取引所は、8月7日、「コーポレート・ガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」を開催した。

コーポレート・ガバナンス・コード」は、企業が持続的な成長を実現させるための自律的な取組を促進させることを目的として、政府の成長戦略『日本再興戦略』(2014年6月24日閣議決定)にて同コードの策定が盛り込まれたもの。当コードが策定されれば、上場企業は当コードを遵守するか、遵守しない場合はその理由の説明を求められることとなる。

今後3か月程度の議論を通じ、有識者による提言が取りまとめられ、来年の株主総会時期までにはコードの全容が提示されることとなっている。

<コンプライアンス>
厚生労働省が外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導・送検の状況を公表

(参考情報:2014年8月8日付 同省HP)

厚生労働省は8月8日、外国人技能実習生の実習実施機関に対して、2013年に行った監督指導、送検の状況を公表した。

外国人技能実習は、企業などでの実習を通じて技術を習得し、母国の経済発展を担う人材を育成することを目的としている。しかし、実習実施機関では法定の危険・健康障害防止措置が未実施であったり、労使協定を超えた残業や割増賃金の不払い等の理由により労働基準関係法令に違反しているケースが依然認められている。

同省では、今後も技能実習生の労働条件等について、事業主に法令の周知徹底を図るとともに、積極的に監督指導を実施し、法令違反を繰り返す事業所に対しては送検するなど厳正に対応していくとしている。
この監督指導等の概要は以下の通り。

<女性活用>
ソニーが女性社員を国際人材に育てるための「育成塾」を設立

(参考情報:2014年8月30日付 日本経済新聞電子版)

ソニーは、国内の本社・グループ会社の30代女性社員をグローバル人材に育成するための塾(グローバルウイミンリーダーズ育成塾)を設立した。

本塾では、ソニー本社やソニー・コンピュータエンタテインメントなどのグループ会社から選出された女性社員に対し、海外グループ会社での実地研修や、女性幹部との交流といったメニューが用意されている。

同社では、ダイバーシティの推進に力を入れており、2020年に女性管理職比率を15%に引き上げる中期目標を掲げている。同社は、本塾もこの目標を達成するための取組の一環であり、今後も選抜者を毎年募り、育成塾を継続していくとしている。

<環境>
経済産業省が地球温暖化防止に関する産業界の自主的取組に関するポータルサイトを開設

(参考情報:2014年9月2日付 同省HP)

経済産業省は9月2日、地球温暖化対策に対する産業界の自主的取組を支援するために、「産業界の自主的取組に関するポータルサイト」を開設した。

「産業界の自主的取組」は、業界団体が自主的にCO2排出量削減目標等を設定し、目標達成のために温暖化対策を実施する取組であるが、各業界団体の取組の実効性を向上するために、今まで以上のデータ開示や国際的情報の発信が求められていた。

本ポータルサイトで得られる主な情報は、以下の通り。

  • 温暖化対策に関する各業種の計画・ベストプラクティス事例の紹介
  • 生産量・エネルギー使用量・CO2
  • 排出量・対策投資額等の実績データ
  • 経団連や関係省庁の審議会におけるフォローアップ状況
<環境>
サッポロビールが「EA21(エコアクション21)」の認証を取得

(参考情報:2014年9月5日 同社HP)

サッポロビールは8月29日、本社および主な全営業拠点で、環境マネジメントシステム「EA21*」の認証・登録を受けたことを発表した。

同社では、全生産拠点(7工場)で既にISO14001を取得しており、この度の全営業拠点におけるEA21の認証・登録の完了により、会社全体で環境マネジメントを行う体制が整ったとしている。同社は、環境中期目標において、「低炭素社会の実現」「循環型社会の実現」「自然共生社会の実現」のための様々な数値目標等を導入しており、EA21の導入を通じ目標達成に向けた取組を推進していく。

EA21(エコアクション21)環境省が策定した環境マネジメントのガイドライン。ISO14001に比べ、国際的な規格ではないが、具体的な削減目標を要求されたり、環境レポートの作成・公表が求められる等、高い実効性を求められる。

海外トピックス2014年6~7月に公開された海外のCSR等に関する主な動向をご紹介します

<CSR>
IIRC、企業報告に関する新たな共同イニシアチブを開始

(参考情報:2014年6月17日付 IIRC HP)

6月17日に行われたICGN(InternationalCorporateGovernanceNetwork:国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)の年次総会にて、「CRD(TheCorporateReportingDialogue:企業報告ダイアログ)」が正式に活動を開始すると発表された。

CRDは、統合報告に関する国際フレームワークのIIRC(InternationalIntegratedReportingCouncil:国際統合報告評議会)が提唱するイニシアチブであり、企業報告に関して国際的な影響力のある組織が協働して、各種フレームワークや基準、関連する要求事項における結合性、一貫性、比較可能性を促進しながら、企業報告の効率性と有効性を向上することを目指している。

CRDへの参加組織は以下の通り。

  • カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)
  • ClimateDisclosureStandardBoard(CDSB)
<CSR>
欧州委員会が社会的企業向けにソーシャル・インパクトを測定する新たなガイドラインを発表

(参考情報:2014年6月20日付 欧州連合HP)

欧州委員会は6月20日、あらゆる規模の社会的企業(営利を目的とせず、事業を通じて社会的な目的の達成をめざす企業等)に適用可能なソーシャル・インパクト(当該事業が社会に与える影響)測定のための新たなガイドラインを発表した。

本ガイドラインは、社会的企業とパートナー組織や投資家、公共セクターとの対話を手助けするもので、ヨーロッパにある社会的企業が、投資ファンド等に対して資金提供を求める際にも役立てられる。

本ガイドラインでは、以下の5つのステップに分けたソーシャル・インパクト測定基準が提案されている。

  • identifyobjectives(目標の特定)
  • identifystakeholders(ステークホルダーの特定)
<環境>
PRIが水リスクに関する調査レポートを公表

(参考情報:2014年7月29日付 PRI HP)

PRI(ThePrinciplesforResponsibleInvestment:責任投資原則*)は7月29日、企業が農業サプライチェーンにおける、水リスクの調査レポートを公開した。このレポートはWWF(WorldWildlifeFund:世界自然保護基金)等と共同で作成されており、投資家およびその投資先企業に対して企業が抱える水リスクを明らかにした上で、課題解決に取り組む際の指針も示している。

今回の調査により明らかになった主なポイントは以下の通り。

  • 水不足が深刻な地域における、企業の売上と水の消費量との間には強い相関関係がある
  • 調査対象企業の水消費量は、平均値と中央値で大きな差がある
  • 農産物、食品小売業、飲料、食品業界は、アパレル、高級品関連、ビール製造やワイン製造業に比べて、より高いウォーターフットプリント**が見られる
  • いくつかの有名ブランド企業は自社およびサプライチェーン双方における水リスク管理に長けているものの、全体的なパフォーマンスは総じて低い
<CSR>
ダウとIBMがエチオピアにおけるサステナビリティプロジェクトを通じた従業員のリーダーシップ教育を実施

(参考情報:2014年8月4日付 Dow及びIBM HP)

ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーの「リーダーシップ・イン・アクション(LIA)」*と、IBMの海外支援チーム「CorporateServiceCorps(CSC)」**は、従業員のリーダーシップ開発のための取組の一環として、エチオピアにおけるサステナビリティ活動プログラムを共同で実施すると発表した。

本プロジェクトでは、LIAから5名、CSCから3名の従業員が、グローバルなプロボノ***プロジェクトに参画し、エチオピアのウォライタ地区における公衆衛生と生活習慣の改善を目指す活動を推進・支援する。

本プロジェクトは、ウォライタ地区で戦争被害や自然災害、病気によって苦しむ人々に対するヘルスケアサービスを提供するInternationalMedicalCorps(以下、IMC)と協働するものであり、取組を通じて、ダウは、政府や市民が、疫病、燃料・食料の不足等のリスクを未然に防ぎ、持続的な回復力を培うために行動の変革を促すプログラムを作成する。また、IBMは公衆衛生の領域を中心に、コミュニティの回復力を測定する手法の評価、提案および設計を行う。

<CSR>
ネスレがサプライチェーンにおけるアニマルウェルフェアへの取組を強化

(参考情報:2014年8月21日付 同社HP)

食品・飲料メーカーのネスレは8月21日、動物保護に取り組む国際NGOのWorldAnimalProtectionとのパートナーシップ合意に署名し、同社のサプライチェーンにおけるアニマルウェルフェア(動物福祉)への取組を強化することを発表した。アニマルウェルフェアを推進するNGOとの国際的パートナーシップを締結した大手食品会社は同社が初めて。今後、同社が仕入れる乳製品、肉類、卵等を供給する農場は直接・間接を問わず全てアニマルウェルフェアの厳格な基準を満たすことが必要となり、対象となる農場数は全世界で数十万に及ぶ。

これまでも同社では、家畜が正常に動ける十分な飼育スペースを確保することや、牛の角を切除し互いに傷付けるのを防ぐなど、獣医学診療を活用して家畜の苦痛を最小限に抑える活動などを行っている。また、同社はサプライヤーがアニマルウェルフェアの基準を満たしているかの監査を外部委託しており、今年に入って世界規模で数百の農家を対象に監査が行われた。

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