レポート

ESGリスクトピックス 2014年度 No.6

2014.9.1

国内トピックス2014年6~8月に公開された国内のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<リスクマネジメント・危機管理>
農林水産省がフードディフェンスに関する報告書をまとめる

(参考情報:2014年6月27日付 農林水産省HP)

農林水産省は、6月27日、「食品への意図的な毒物等の混入の未然防止等に関する検討会」報告書を公表した。平成25年末に発生した冷凍食品への農薬混入事案を受け、食品事業者等における意図的な毒物等の混入を未然に防止する取組を推進するため、検討会を4月に立ち上げ、3回にわたり検討を行い、今回の報告書として取りまとめたもの。

本報告書のポイントは次のとおり。

1. 今般の食品への意図的なマラチオンの混入事案から得られる教訓
  1. (1)危機管理に関する問題
  2. (2)食品事業者のガバナンス
  3. (3)食品防御
<CSR>
日本在外企業協会が「企業グローバル行動指針」を策定

(参考情報:2014年7月18日付 日本在外企業協会HP)

日本在外企業協会は、7月18日、「企業グローバル行動指針」を公表した。本指針は、1987年に策定された「海外投資行動指針」の27年ぶりの刷新となった。

今回の刷新の背景として、同指針の序文に以下が言及されている。

  • 策定当時と比較すると、グローバル化が拡大し続け、日本企業が事業活動を行う国・地域における役割・期待が高まる一方、責任ある行動が強く求められるようになってきていること
  • 国連グローバル・コンパクト、OECD多国籍企業行動指針などの企業行動に関するガイドラインが発表され、グローバルに活動する企業は、国や地域の法律を遵守するだけではなく、国際的に認められた基準に従わなければならないという考え方が一般化してきていること

同指針では、国連グローバル・コンパクトに定める4つの柱である「人権」、「労働者」、「環境保全」、「腐敗防止」に「反競争的行為」を加えた5つの項目に、序文と基本的姿勢を加えた全7章からなっている。

<労働慣行>
多様な雇用形態の正社員の普及・拡大に向けた提言が発表される

(参考情報:2014年7月30日付 厚生労働省HP)

「「多様な正社員」*の普及・拡大のための有識者懇談会」は、7月30日、多様な雇用形態の正社員の普及・拡大に向けた提言をまとめた報告書を公表した。昨年9月に有識者を参集し懇談会を設置。同懇談会では計14回の議論を重ね、「多様な正社員」の雇用管理をめぐる課題について検討。労使等の関係者が参照することができる雇用管理上の留意事項や就業規則の規定例を整理するとともに、以下の観点から政策提言をとりまとめた。

  1. 1.多様な正社員の効果的な活用が期待できるケース
  2. 2.労働者に対する限定の内容の明示
  3. 3.事業所閉鎖や職務の廃止などへの対応
  4. 4.転換制度
  5. 5.均衡処遇
<CSR>
イオン、マレーシアのサプライヤー向けCSR支援を展開

(参考情報:2014年7月31日付 イオンHP)

イオンは、UNIDO(国際連合工業開発機関)とマレーシア政府と連携し、本年8月よりマレーシアの中小規模の生産者向けに、CSR支援プログラムの展開を開始することを公表した。

本プログラムは、国連グローバルコンパクト、SA8000(労働・人権に関する国際規格)、ISO14001といった労働・人権・環境問題に関する国際的な基準に準拠した内容の支援ツールを活用し、各生産者の現状評価を行った上で改善ノウハウを提供するもの。

同社は、本プログラムの展開を通じ、マレーシアにおける生産者のCSRに関する取組レベルを向上させ、同国の製造・配送・販売業の持続的な発展に貢献することを目指すとしている。

<労働慣行>
厚生労働省が「労働災害のない職場づくりに向けた緊急対策」を業界団体などに緊急要請

(参考情報:2014年8月5日付 厚生労働省HP)

厚生労働省は、8月5日、平成26年上半期の死亡災害の大幅な増加を受け、労働災害のない職場づくりに向けた緊急対策を実施することを発表した。平成26年1月~6月の労働災害発生状況(速報値)が、死亡者数は対前年比19.4%(71人)の増加、休業4日以上の死傷者数は対前年比3.6%(1625人)の増加となったことを受けたもの。

緊急対策の柱は、以下の2点。

  • 業界団体などに対する労働災害防止に向けた緊急要請
  • 都道府県労働局、労働基準監督署による指導

「業界団体などに対する労働災害防止に向けた緊急要請」では、具体的に以下の事項が業界及び事業者に要請されている。

海外トピックス2014年7月に公開された海外のCSR等に関する主な動向をご紹介します。

<CSR>
中国企業評価協会が中国企業の「CSR格付」のためのルールを発表

(参考情報:2014年7月3日付 Sustanable Japan HP 他)

中国国務院の下部組織である中国企業評価協会は、2014年6月17日、中国企業の「CSR格付」のためのルールである「中国企業CSR評価準則」を発表した。同ルールをもとに、中国政府は、中国企業の「CSR格付」を開始する予定。

「CSR格付」の概要は、以下の通り。

  • AAA、AA、A、BBB、BB、B、Cの7段階評価
  • AAからBまでは+、-を付すこともできる
  • BBB以上がCSR適格企業となる
  • A以上を取得すると、「A企業サークル」に属することができ、中国企業評価協会の援助のもとで相互交流を図ることができる
<コンプライアンス >
バークレイズが「コンプライアンス・キャリア・アカデミー」を開設する計画を発表

(参考情報:2014年7月5日付 フジサンケイビジネスアイ 他)

バークレイズは、ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクールと協力し、コンプライアンスに関する教育を目的とする「コンプライアンス・キャリア・アカデミー」を開設し、全世界の同行行員を対象に、技術面や行動面の研修を行う計画を発表した。

同行は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)操作問題で2億9,000万ポンド(現在のレートで約508億円)の制裁金を科されたほか、同行トレーダーによる金価格操作の疑いをめぐり4,400万ドル(約45億円)の支払いに合意している。このような社内不祥事を踏まえ、企業文化改革の一環として上記のような取組を行うもの。

同アカデミーでは、同行行員だけでなく、別の企業の従業員も講座を受講可能とするほか、講座受講後はコンプライアンス課程の修了証書を授与する予定。

<環境>
ソシエダ・セントラル・デ・セルヴェジャスが年間7,200万リットルの節水に成功

(参考情報:2014年7月12日付 Sustanable Japan HP 他)

世界最大のビール醸造会社であるHEINEKENGroupの、ソシエダ・セントラル・デ・セルヴェジャス(以下、SCC)は、ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)の節水技術により、水の使用量を大幅に削減することに成功した。

SCCでは、ビール醸造の過程で生じた排水を、冷却塔で使用する水として再利用することで、年間7,200万リットルの節水が可能になった。この大幅な節水と水の再利用に対する新たなアイディアが認められ、GEからSCCにエコマジネーション賞*が贈られた。

エコマジネーション賞
環境面、産業面、サステナビリティのバランスを保つ優れた取組を行った企業などに対し、GEより贈られる賞のこと。

<CSR>
ネスレが米国内のサステナビリティ活動をまとめたCSVレポートを発表

(参考情報:2014年7月23日付 Sustanable Japan HP、同社CSVレポート)

ネスレは、2014年6月30日、米国内で事業展開するグループ7社のCreatingSharedValue(CSV)レポートを発表した。

今回の報告書では米国内における「栄養と健康」、「環境への影響」、「社会への影響」等、サステナビリティ目標の進捗状況が紹介されている。

主な項目と概要は以下の通り。

Nutrition,HealthandWellness(栄養と健康)
  • ナトリウムカット
    多くの人気商品からナトリウムを削減
EnvironmentalImpact(環境への影響)
  • 廃棄物削減
    2010年と比較して製品1トンあたりの廃棄物を44%削減

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