リスクマネジメント用語集

安全文化

"安全文化"という言葉が初めて使われたのは、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故の原因・対策について検討を行っていたINSAG(International Nuclear Safety AdvisoryGroup)により作成されたレポートの中である。当該レポートでは以下のように定義されている。

"Safety culture is that assembly of characteristics and attitudes in organizations and individuals which establishes that, as an overriding priority, nuclear plant safety issues receive the attention warranted by their significance."

『原子力発電所の安全の問題には、その重要性にふさわしい注意が最優先で払われなければならない。安全文化とは、そうした組織や個人の特性と姿勢の総体である。』

(訳文出典:平成17年版 原子力安全白書)

また、同レポートでは、"Safety Culture"という用語の定義に際し、「組織の在り方だけでなく、意識・態度に関連するものでもあること」「個人と組織、両方に関係するものであること」「安全に関するすべての課題に対し、相応しい知覚と行動を発揮して対応すること」を盛り込むよう注意が払われた旨が記載されている。

以上のとおり、最初は原子力業界にて定義された「安全文化」であるが、その後、「安全」という言葉に関わりをもつ多くの企業において定義され、安全文化の醸成に向けた取組みが推進されてきた。特に多様化している組織においては、考慮すべき多くの要素が安全に対して影響を与えていると考えられる。そのため内的・外的要因を含め、多面的に自社の安全文化を捉えていくことが重要視されつつある。例えば昨今ではグローバル化に伴い様々な国籍・民族が入り混じる組織が増加傾向にある。このような組織においては、ダイバーシティを意識した組織づくりが必要となってきている。また大企業などにおいては、部署ごとや、階層ごとで異なる文化(いわゆるサブカルチャー)が形成されていることがしばしばである。加えて、監督機関や世論、市場など、社外のステークホルダーも組織の安全文化に影響を与えることも考え得る。特に、株主等から利益追求に向けた強い圧力がかかった場合、組織として安全よりも利益優先となりがちである。

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