リスクマネジメント用語集

火災リスク

火災とは、人の意図しない管理されない燃焼で、財物の損壊、人身傷害などの被害をもたらす現象である。燃焼には「燃焼の三要素」である「酸素(空気)」「可燃物」「火源(熱エネルギー)」が同時に存在して発生する。

一般に、企業の各種施設には、「酸素(空気)」の他に様々な「可燃物」が存在する。「酸素(空気)」「可燃物」が存在する状況において、電気設備の過熱等により、ある一定以上の「熱エネルギー(火源)」が供給されると火災は発生する。一旦火災が発生すると、燃焼により熱が継続して発生し、「熱エネルギー」が供給され続け、燃え広がっていくことになる。

ちなみに、消火活動はこの「燃焼の三要素」のいずれかを断つことによって行われる。

【図表1】燃焼の3要素
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火災による財物の損害は、燃焼による破損・減損に加え煙による汚損や消火放水による水濡れ損、消火剤による汚損がある。

燃焼により発生する煙は急速に上昇し、天井があれば水平方向にも拡散していく。この煙により、設備・内装材等に汚損が発生する。また、電気機械器具製造工場のクリーンルームなどで生産される製品・仕掛品においては、少量の煙・ガスに晒されることで製品価値を失うものが多いため、小規模な火災でも大規模な煙汚損が発生することもある。なお、過去にデパート・ホテル等の延焼していない階で、多くの尊い人命が失われた事例がある。これは燃焼により発生する一酸化炭素やシアンなど有毒ガスが原因であるが、燃焼により発生する煙とガスが火災そのものよりも速く拡散し、被害が拡大することを示している。

火災発生時の消火活動における消火放水による損害も発生する。消防車や消火栓により放水される範囲は延焼防止のため火災の燃焼している範囲よりも広範囲になる。特に最近はOA機器などの精密機器が多く使用されているが、これらの機器は水濡れにはぜい弱である。一般的な傾向として、小規模な火災ほど燃焼そのものの損害よりも水濡れ損のほうが大きくなる傾向がある(一般的に、事務所ビルの焼損面積100㎡以下の小規模火災の火災保険の支払保険金においては、水濡れによる損害は燃焼そのものの損害の2倍以上になる)。

火災の規模によっては一定期間営業・操業を停止することにより発生する休業損害をはじめ、事業に深刻な影響を受ける場合がある。事業活動の休止による経済的損失は避けられず、市場にも影響が出る場合もある。また、労災が発生したり、施設周辺や第三者に損害を与えた場合には法的責任を問われる場合もあり、信用等も含め深刻な事態もありうる。

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