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日本企業の中国現地法人における事業継続マネジメント(BCM)実態調査を実施
=7割の企業がBCMを必要と認識、策定は1割=
-「労働争議」「人材流出」は関心が高いが、BCP策定は進んでいないー

2012年7月12日

MS&ADインシュアランス グループの株式会社インターリスク総研(社長 近藤 和夫)と、株式会社時事通信社(社長 西澤 豊)は、共同で、中国に進出している日系企業5,000社に対し、BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)の実態調査を実施し、回答状況をまとめました。

近年、中国へ進出する企業が急速に増加しており、中国現地法人におけるリスクマネジメントへの関心は確実に高まってきています。本調査で、約7割の中国の現地法人がBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の必要性を強く感じながらも、策定している企業は約1割に留まっており、BCPの策定(もしくは策定作業への着手)が進んでいない実態が判明しました。また、「労働争議」「人材流出」については事業継続上関心が高いものの、BCP策定は進んでいないなど、事業継続上関心の高い事象と、実際に策定しているBCPの対象事象にズレが生じているといった、今後の課題も明らかになりました。

1.調査の概要

(1)調査方法 国際郵便によるアンケート郵送法
(2)調査対象企業 時事通信社が把握している 北京・華北地域、上海・華東地域、広州・華南地域に進出している日系企業 5,000社
(3)回答数 386社(回答率:7.7%)
(4)調査期間 2012年1月~4月

2.調査結果

(1) BCPの策定実態

①BCP策定の有無

BCP策定の必要性について聞いたところ、70.7%の企業が「必要を感じている」と回答し、「必要を感じていない」(28.8%)を大きく上回りました。その一方で、実際に策定している企業は1割程度に留まっており、「現在、策定中である」「策定の計画がある」を合わせても30%に満たない結果となっています。 多くの企業が必要性は感じながらも、取組みは進んでいない実態が判明しました。

②BCPの対象としている事象

BCPを「策定している」「現在、策定中である」「策定の計画がある」企業に、BCPの対象事象を聞いたところ、「コンピュータなどのIT関連トラブル」が1位、次いで「地震・台風などの自然災害」、「新型インフルエンザなどの感染症」という結果となりました。

その一方で、事業継続上、関心のある事象について聞いたところ、「労働争議」「人材流出による業務への影響」への関心が40%以上と高く、実際のBCPの対象事象と関心の高い事象との間にはズレが生じています。これは下表③「取組みの契機」の調査結果に見られるように、日本本社からの要請によって取組むことが多く、日本本社で対象としているリスクにあわせたBCPの構築となっているためと推察されます。

③取組みの契機

BCP策定に取組むこととなった契機について、回答の上位三位までは次のようになっています。

BCP策定に取組むこととなった契機 回答割合
日本本社からの要請・指示 44.6%
顧客への供給責任を果たすため 42.0%
コーポレートガバナンス・CSRの一環 32.1%

「日本本社からの要請・指示」が最も多いことから、グループ全体のBCPへの取組みの一環として取組まれている傾向がわかります。

(2) 取引先へのBCPの要請

取引先がBCPを持つことの必要性 取引先へのBCP策定要請
必要である 79.5% 要請している 13.4%
必要はない 8.0% 要請はしていない 74.1%
無回答 12.5% 無回答 12.5%

約8割の企業が、取引先がBCPを持つことの必要性を感じている一方で、BCPの策定を要請している企業は、13.4%にとどまっています。このことから、現在、取引先からのBCP策定要請がなくても、今後はそうした要請が増加していくことが見込まれます。

(3) 東日本大震災での影響

東日本大震災によって、影響を受けたとする企業は約6割(59.8%)に上りました。
影響内容としては、「原材料、設備などの調達・供給が困難」(56.2%)が最も多く、他の項目と40%以上の開きが見られました。この結果から、サプライチェーンの機能の維持が、今後のBCP検討における最も重要なテーマの1つになることが推察されます。

3. 今後の課題について

インターリスク総研が2011年7~8月に実施した「国内上場企業の事業継続マネジメン(BCM)導入実態調査」によると、BCPを「策定済み」「策定中」「策定の計画がある」と回答した企業は合わせて約7割に達しています。また、海外関連会社での策定の必要性を感じている企業も67%に達しています。それに対し、中国現地法人でのBCP取組み率は3割未満であり、今後、取組みが加速することが推察されます。特にグローバル・サプライチェーンのレジリエンシーの向上は、日本企業のみならず、全世界で注目される課題であり、今後、そうした観点からも取組みが進んでいくことが予想されます。

他方で、中国固有のリスク事情に適したBCPを構築していくことも重要であり、日本本社からの枠組みによるものばかりでなく、現地のリスク実態に合った中国現地法人固有のBCPへの転換が図られていくことを期待します。

インターリスク総研はコンサルティングや啓発活動などを通じ、BCP策定のみならず、その有効性の検証体制の確立や仕組みづくり、海外事業所・現地法人への展開等を支援していきます。

4. 調査結果のご提供

BCM導入実態調査の報告書は、2012年9月頃完成予定です。

以上

本件に関するお問い合わせ先

株式会社インターリスク総研

コンサルティング第二部 金子美和子・田代邦幸 TEL:03-5296-8918

株式会社時事通信社

業務局事業部 TEL:03-3524-6961