コンサルタントコラム

所属
リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリンググループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
竹中 路 Michio Takenaka

2017年11月8日

近年、大規模な火災が立て続けに発生している。昨年12月に新潟県糸魚川市において発生した住宅火災、今年2月に埼玉県三芳町において発生した倉庫火災、海外に目を向けると今年6月にロンドンにおいて発生した高層住宅の火災など、新聞やテレビなどで広く報道された。

しかし、火災の件数が増加傾向にあるのかというと、そうではない。今年7月に総務省消防庁が公表した「平成28年(1~12月)における火災の状況(確定値)」によると、総出火件数は36,831件で、前年と比較すると2,280件(▲5.8%)、10年前の平成19年と比較すると17,751件(▲32.5%)減少した。減少の要因としては、電気器具やストーブなどの製品における防火安全性能の向上、住宅用火災警報器の普及および喫煙率の減少によるたばこを原因とする出火の減少などが考えられる。

前述した埼玉県の倉庫火災は、12日間で約4.5万m²が焼損し、連日テレビで燃え続ける倉庫の映像が流れたことによるインパクトは大きく、さらに、当事故を受けて行政による大規模倉庫(5万m²以上)の立ち入り調査が行われたこともあり、物流会社の防災に対する意識は高まっていると感じる。著者は保険・金融グループのリスクマネジメント会社の一員として、火災保険にご加入いただいているお客さまを中心に工場や倉庫などのリスク調査を担当しているが、これまでより、倉庫の防災調査の依頼が増えてきていると感じる。また、倉庫火災の被害拡大の要因の一つに、防火シャッターの降下位置にあった物品による閉鎖障害があるが、このような状況を目にすることが少なくなり、また、他の物流会社の状況が一般的にどうであるかについて問われることも多くなった。今後、また大規模な火災が発生してほしくないと切に願う一方、報道されるような火災の発生を機に防災意識が向上することも事実である。

1年間の火災による被害としては、平成28年の総出火件数は36,831件、火災による損害額は約752億円であり、1日あたり約100件の火災が発生し、約2億円の損害が発生している計算になる。火災は減少傾向にはあるものの、依然として高い頻度で発生する災害であり、被害額も大きくなることが多いと言える。一方で、自然災害と比較すると、人の不注意や管理不具合による出火・延焼拡大という面もあり、意識的な対策により失火リスクや被害の拡大が低減できると感じる。

では、具体的に防火対策をどうするか。出火原因は多種多様であり、すべての出火原因について網羅的に対策を行うことは難しい。しかしながら、出火源となりうるものを定期的に点検し、周辺に可燃物を置かず、速やかな通報・初期消火・避難が行えるように防火管理体制を確立することにより、火災による損害を低減することが可能である点は共通している。近年の大規模火災による防災意識の向上が一時的なものにならないよう、継続的な意識づけが重要であり、工場や倉庫に対する防災調査がそのための一助となることを願っている。

以上

(2017年11月2日 三友新聞掲載記事を転載)

小島 勝治 Katsuji Kojima
氏名
竹中 路郎 Michio Takenaka
役職
リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリンググループ 上席コンサルタント
専門領域
火災リスクサーベイ