コンサルタントコラム

所属
リスクマネジメント第三部 危機管理・コンプライアンスグループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
人見 健太 Kenta Hitomi

2017年10月13日

2017年も残すところあと3か月となった。今年も食品への異物混入や食中毒などが頻繁に発生し、「またか」と感じてしまうほど報道を目にした印象がある。厚生労働省が公表した食中毒統計資料によると、発生件数や患者数はここ数年増減を繰り返しつつも、発生件数は年間900件、患者数は年間1.9万人を下回ることがない。

多くの被害者を出した事故も発生している。2016年8月には社会福祉施設において提供したキュウリの調理品に付着していた病原性大腸菌O-157により、死者16名の事故が発生した。今年1~2月には、和歌山県や東京都の学校給食で「キザミのり」を原因食材とした患者数1,800名以上に及ぶノロウイルスによる集団食中毒事故が発生した。「まさかキザミのりで食中毒が?」と話題になったことも記憶に新しい。

また商品に含まれる原材料に関する表示でも、アレルギー表示の欠落による回収などが依然として多く発生しており、消費者の食品に対する不安が増幅されるとともに、より安全・安心な食品への期待が高まっている。

では、異物混入や食中毒を起こした企業は、消費者の期待に応えるためにどんな取り組みをすべきだったのだろうか?一つの答えはHACCPにある。

食品事故を未然に防止するため、保健所による立ち入り検査などの自治体等による監視体制があるが、限界があることは明らかである。このような状況を受けて、厚生労働省では食品等事業者に対して、従来の衛生管理に加え、HACCPによる衛生管理手法を導入するよう制度化の検討を進め、2018年の通常国会に食品衛生法の改正法案を提出することを目指している。

このHACCPだが、売上高100億円超の大規模事業者を中心に導入が進んでいるものの、中小規模の事業者においてはまだ取り組みが進んでいない。HACCPの要求事項を満たすための設備面での初期投資、導入後のモニタリング、従業員教育など、ヒト・モノ・カネの経営資源の制約がその理由と考えられる。一方で、取り組みを進めている事業者はHACCP導入の効果として、「品質・安全性の向上」や「従業員の意識の向上」、「企業の信用度やイメージの向上」などを挙げている。

一般的に利益率が高いとは言えない食品事業者にとって、法令で定められたレベルを超えて、食品の安全・安心に限られた経営資源を振り向けることは決して易しいことではないだろう。しかし、一度の事故で消費者の信頼を失い、企業の存続自体が危うくなった事例は数え切れない。そして今まさに、消費者の期待に合わせて、HACCPの義務化という形で食品事業者に求められる「安全・安心」のレベルが一段階上がろうとしている。食品事業者にとってHACCPは避けて通れないものになりつつある。

法改正の行方、そして食品事業者のさらなる取り組みを見守るとともに、「日本の食」に期待して来日する観光客も少なくない中で、多様で新鮮な食材、ヘルシーさ、盛り付けの美しさなどに加えて、「安全・安心こそが日本の食文化」と世界で語られることを期待したい。

HACCPとは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法

以上

(2017年10月5日 三友新聞掲載記事を転載)

小島 勝治 Katsuji Kojima
氏名
人見 健太 Kenta Hitomi
役職
リスクマネジメント第三部 危機管理・コンプライアンスグループ 上席コンサルタント
専門領域
危機管理、コンプライアンス、食品、PL、その他企業のリスク全般