コンサルタントコラム

所属
大阪支店 災害・事業RMグループ
役職名
マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
小島 勝治 Katsuji Kojima

2017年7月31日

内閣府の「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(平成28年3月)によると、事業継続計画(BCP)の策定状況について、大企業では約6割が「策定済み」、大企業以外では約3割が「策定済み」となっている。大企業を中心にBCP策定が着実に進んできている。

筆者は大阪支店に勤務しており、昨年4月の熊本地震発生以降、関西に本拠地を置く中小企業から弊社にBCPに関する相談が数多く寄せられている。関西でもBCPに対する関心は確実に高まってきた。

しかしながら、筆者の肌感覚では関西の中小企業でのBCP策定について、関東より遅れているように思える。関西での中小企業向けBCPセミナーにて、参加者にBCP策定状況についてお伺いすると、「未対応」という企業が多いからだ。

では、関西の中小企業で BCP 策定が進まない理由は一体何であろうか。様々な理由が考えられるが、ここでは「阪神淡路大震災の体験」「南海トラフ巨大地震に対する誤解」「経営資源の不足」の3点に焦点を絞って考察したい。

1点目は、阪神淡路大震災において、「BCPがなくても自社は生き残った」という経営者の過信。この震災では神戸市において最大震度7を観測したが、大阪では震度4であった。大阪所在の中小企業の経営者からは「あの危機を乗り越えたから、次の大地震もなんとかなるで」という楽観的な声を聞くことが多い。

日本全国各地で大きな地震に見舞われる可能性があることを改めて認識すると同時に、地震調査研究推進本部によると、大阪の上町断層帯では最大震度7と想定されており、過去の思い込みを払しょくすることが重要である。

2点目は、南海トラフ巨大地震に対する誤解。南海トラフ巨大地震は、関東で想定されている、都心南部直下地震に比べると、想定震度が低く、関西の中小企業では「津波にさえ気をつけていれば大丈夫や」と誤解されている経営者が多いように思える。

この地震により、関西では震度6強から5弱程度の揺れに見舞われる。揺れによる被害が発生する恐れがあり、沿岸部には津波による被害をもたらす。決して津波に関する緊急時対応策を整備すればよいだけではなく、耐震対策も重要である。このため、BCP策定はもちろんのこと、建物・設備什器など、複数年にわたる耐震化計画を立案し実行することを推奨する。

3点目は、「人、モノ、資金、情報」といった経営資源の不足。大企業と比較し経営資源が限られた中小企業が、関西での地震リスクを一定認識しつつも経営資源が不足することを理由にBCP策定を見送るケースは多いようだ。

経営資源が不足しているにせよ、例えば、大阪府などの自治体、商工会議所やNPO法人などの中小企業の支援組織が実施している無償のワークショップやセミナー等の機会を活用し、必要な対策を講じることが考えられる。また、関西では同業者で構成する組織・団体が数多く存在しており、例えば、業界団体が提供するBCP関連情報を活用することも有効といえる。多くの経営資源を投入せずとも、実現可能な対策は決して少なくない。

関西の中小企業の経営者の方々が、これらのBCP策定の支障要因を正しく認識し、知恵と工夫により、来るべき大地震に備えられることを願ってやまない。

以上

(2017年7月27日 三友新聞掲載記事を転載)

小島 勝治 Katsuji Kojima
氏名
小島 勝治 Katsuji Kojima
役職
大阪支店 災害・事業RMグループ マネジャー・上席コンサルタント
専門領域
事業継続マネジメント、統合リスクマネジメント