コンサルタントコラム

レジリエンス認証とは

所属
事業リスクマネジメント部 事業継続マネジメントグループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
飛嶋 順子 Yoriko Tobishima

2016年8月17日

2016年4月、BCM(事業継続マネジメント)に関係する新しい第三者認証制度がスタートした。内閣官房国土強靭化推進室が創設した「国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)制度」である。国土強靱化の趣旨に賛同し、自助(事業継続)への取組を積極的に行っている企業等の事業者を「国土強靱化貢献団体」として認証する制度で、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が、制度運営の中心的役割を担う認証組織として制度を推進している。

このほど、第1回の認証事業者として、MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険株式会社及びあいおいニッセイ同和損害保険株式会社をはじめとした44団体の名称が公表された。

レジリエンス認証は、推進室が定めた「国土強靱化貢献団体の認証に関するガイドライン」(2016年2月;改訂2016年4月)に基づく国内の組織認証制度で、認証を希望する企業等の事業者が、申請によって第三者認証を受ける、任意の基準認証・マーク付与制度である。

特徴としては、①大企業はもとより中小企業、学校、病院なども対象にしていること、②認証の対象範囲が、原則として申請事業者の全組織であること、③認証コストが比較的抑えられていること(従業員数によって3~10万円)、③登録期間が2年間であること(更新を希望する場合は2年後に更新審査を受審)、④適用基準全10項目のうち9項目が自助(事業継続)にかかる項目で、BCMの基本的な考え方が主軸となっていることの4点が挙げられる。特に④については、適用基準の9割がBCMとなっているため、BCP策定をはじめとしたBCMに取り組んでいる企業には、大変なじみやすい制度だといえるだろう。

なお、適用基準は上述のガイドラインに定められている。内閣府公表の「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」(2013年8月改定)等を踏まえ、推進室が主催する有識者会議の審議を経て定められた。ただし、実際の申請と審査は、ガイドラインに定められた基準に基づいて、協議会内に設置された認証審査委員会の審議を経て設定された、評価項目に基づいて実施されることに注意が必要である。また、評価項目の一部には、過去2年分(最低過去1年以上)の実績を求めるものがあることにも注意が必要だ。例えば、レジリエンス認証において評価の対象となる自助(事業継続)の取り組みをはじめたばかりの事業者は、一定の運用期間を経た後に申請することが求められる。

レジリエンス認証は、「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)に、2016年度100件程度、3年間400件の認証という政府目標が設定されるなど普及が促進されている。産業界の関心も高く、5月に東京と大阪で開催された制度説明会には、様々な業種・業態から、大企業、中小企業問わず、延べ550社近くから参加があったとされ、制度開始直後から国土強靭化への幅広い関心がうかがえたが、第1回の認証数ですでに今年度の政府目標の半数近くにせまっており、関心の高さが証明された。

認証制度は、規制やサプライチェーンに組み込まれると、爆発的に普及する可能性をはらんでいる。レジリエンス認証を受けることを希望する企業等はもちろん、認証を希望しない企業等も、第1回の認証事業者に、自社の顧客や取引先、サプライチェーンの上流に位置する企業が含まれていないかなど、業界動向を含めた動きを注視することが望まれる。

以上

(2016年8月4日 三友新聞掲載記事を一部加筆して転載)

飛嶋 順子 Yoriko Tobishima
氏名
飛嶋 順子 Yoriko Tobishima
役職
事業リスクマネジメント部 事業継続マネジメントグループ 上席コンサルタント
専門領域
BCM/BCMS、レジリエンス、リスクマネジメント

コラムカテゴリー