コンサルタントコラム

会社法改正を受けたグループリスクマネジメントのあり方

所属
事業リスクマネジメント部 統合リスクマネジメントグループ
役職名
主任コンサルタント
執筆者名
釜瀬 幸一郎 Koichiro Kamase

2015年9月1日

1. グループリスクマネジメントの必要性

近年、企業を取り巻く環境変化を受けてグループ経営の展開が進んでいる。グループ経営上の課題は様々存在するものの、特に国内外のグループ会社の不祥事・事故によってグループ全体としての企業価値を毀損したケースなどは枚挙に暇がなく、グループリスクマネジメントの必要性は年々増している。

2. 改正点を踏まえたグループリスクマネジメントのあり方

こうした中、2015年5月1日、「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号。以下「改正法」という)が施行された。改正法では、企業集団としての(リスクマネジメント態勢を含む)内部統制システム構築に関する規定が会社法施行規則から会社法に格上げとなった。実質的な変更点はないものの、上述のとおり、グループリスクマネジメントの必要性は増しており、改めてグループにおける態勢を見直す契機と考えたい。

改正法に関する法制審議会の検討プロセスにおいても、グループ本体においてグループ各社における内部統制システムを構築する義務までは課されてはいないものの、子会社株式も会社の財産の一部であるから、その財産の価値を維持向上させる義務があり、相当の範囲で子会社の業務を監督し、子会社の業務を通じて財産価値を維持・向上させる義務があるとの見解が示されている。

しかし、現実においてはグループ本体でグループ各社すべてのリスクを管理することは様々な困難が伴う。そこで、グループ本体としては、グループ各社における事業の重要性やグループ全体を取り巻くリスクの軽重に応じて適切なリスクマネジメント態勢の整備および運用を確立する(またはその支援を行う)ということが重要なポイントとなる。

3. グループリスクマネジメントに関する取組みと問題点

適切なグループリスクマネジメント態勢の整備および運用のためには、まずグループ各社におけるリスクおよびリスクマネジメント態勢の現状評価を行うことがファーストステップとなる。もっとも、設立目的、事業特性、規模、人員構成などが異なるグループ各社においては、リスクはもちろん、あるべきリスクマネジメント態勢のレベルも異なることが想定される。グループ会社に求めるリスクマネジメント態勢の要件・水準を明確化した上で、現状評価を行うことが必要である。

現状評価後は、評価によって明らかになった課題を一つずつ解消していくことが必要となるが、グループ各社では、リスクマネジメントを担う人員が十分割けないケースや専門的なスキルが十分でないケースもあり、解決は容易ではない。そのため、グループ本体において、グループ各社の要員の育成や各社の取組みを支援するマニュアルやツールの提供などが必要となる。これらの支援を通じてグループ各社のリスクマネジメントのレベルアップを段階的に図っていくことが望ましい。

また、有事の際のグループ危機管理の態勢整備およびその検証・改善も併せて行うことが不可欠である。グループ内でどのような危機事象が発生した場合にグループ本体への報告が必要となるか、報告事項や報告基準を定めておくことが必要である。特に、グループ全体に影響が及ぶようなケースやマスコミへの情報開示が必要となるようなケースにおいては、グループ本体が前面に立って対応していく必要もあるため、グループ間の情報連携のルールを策定しておくことが重要である。

以上

(2015年8月27日 三友新聞掲載記事を転載)

釜瀬 幸一郎 Koichiro Kamase
氏名
釜瀬 幸一郎 Koichiro Kamase
役職
事業リスクマネジメント部 統合リスクマネジメントグループ 主任コンサルタント
専門領域
ERM(統合的リスク管理)/会社法内部統制/企業の危機管理対策/コンプライアンス/その他企業のリスクマネジメント対策全般