コンサルタントコラム

民法改正と交通事故

所属
交通リスクマネジメント部 交通リスク第二グループ
役職名
マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
松谷 慎一郎 Shinitiro Matsutani

2015年3月18日

昨年8月に法相の諮問機関「法制審議会・民法部会」が民法改正案の骨格を固めました。大きな改正内容は、・法定利率の引き下げ、変動制の導入、・欠陥品に対する対応策、・個人保証の原則禁止、短期消滅時効の廃止などです。

現在の民法は制定されてから既に約120年が経過しており、今回の改正は大改正の見込みとなります。おそらく社会・経済の変化に対応し、国民一般にわかりやすいものとするなどの観点で改正する方向となったものと思われます。

我々の生活に深くかかわっている民法ですが、交通事故にも今回の改正案は深くかかわってきます。

特に、交通事故などで人身傷害事故が発生した場合、後遺障害および死亡のケースの逸失利益などに対して一時金で賠償する際、利息相当額を控除して支払われることが一般的です。

こうした場合の利息の控除については、民法で定められている法定利率5%が使われています。そして、この法定利率を用いた係数にライプニッツ係数というものがあります。

このライプニッツ係数とは、事故により失われた将来の収入を一時金で現在受け取るため、単純に対象年数を整数倍するのではなく、期間に見込まれる利息収入を複利計算で控除する係数です。

なお、現行の法定利率5%は約120年前の民法制定以来変更されていません。

たしかに現在の市場金利等と比べると5%の金利はかなり高いものと感じますが、平成17年には最高裁で、逸失利益の算定に際しての中間利息は法定利率以外許容しないとの判断が下されています。

よって、逸失利益の算定については5%の法定利率に基づいて利息の控除を算定する必要があります。

今回の民法の改正案では、法定利率を5%から3%に下げ、その後3年ごとに1%きざみで見直す変動制が提案されています。

法定利率が3%に下げられるとしたら、当然に利息分の控除が少なくなるため逸失利益の受け取りの金額が増えることになります。

たとえば、期間40年のライプニッツ係数について、利率が年5%の場合17.159ですが、利率が年3%の場合は23.115となります。

次に具体的に逸失利益を算定してみると、収入300万円の人が労働能力喪失率100%、労働能力喪失期間40年としたケースで、

  • 利率が年5%の場合 300万円×100%×17.159=51,477,000円
  • 利率が年3%の場合 300万円×100%×23.115=69,345,000円

となります。

このように法定利率によって賠償金が大きく変わってきます。また、事故にあった日が民法改正の施行日の前後で大きく異なることにもなります。

今回提案されている方向で民法が改正された場合、交通事故などによる後遺障害、死亡事故での賠償金が高額化する方向は間違いないものと思われます。

よって、交通事故を起こさないよう、より安全運転を心掛けるなどして人身事故には十分注意する必要があります。

また、多くの車両を管理する事業者などでは事故の賠償金の高額化に伴い、自動車保険料のコストアップも予想されます。

今後の民法改正により予想される交通事故の賠償金の高額化、そして、より一段高い安全運転の意識が必要になると思います。

以上

(2015年3月12日 三友新聞掲載記事を転載)

松谷 慎一郎 Shinitiro Matsutani
氏名
松谷 慎一郎 Shinitiro Matsutani
役職
交通リスクマネジメント部 交通リスク第二グループ マネジャー・上席コンサルタント
専門領域
交通事故防止コンサルティング