コンサルタントコラム

安全文化を考える

所属
災害リスクマネジメント部
役職名
部長 主席コンサルタント
執筆者名
石原 謙 Ken Ishihara

2014年7月31日

本年二月、政府は化学業界での重大産業事故多発を受けて、内閣官房、消防庁、厚労省、経産省が「石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議」設置し、最近の重大事故の原因・背景と対策等を検討し、五月に報告書を取りまとめました。

石油コンビナート等の施設での事故発生件数がここ二十年で明らかに増加しており、なかんずく11年以降死者を出す重大爆発事故が四件続いたことは、化学産業の喫緊の危機的問題として政府にも縦割り行政を超えた連携を模索させたようです。

報告書は、「重大事故の原因・背景に係る共通点」として、①リスクアセスメントの不足 ②人材育成・技術伝承の不足 ③情報共有・伝達不足と安全への取組の形骸化 を指摘し、事業者が取り組むべき対策として、①安全確保体制の整備と実施 ②リスクアセスメントの徹底 ③人材育成の徹底 ④社内外の知見の活用 を求めるとともに、事業者と業界団体・学会並びに国・地方等の関連機関の連携の必要性を強調しています。詳細は弊社の「災害リスク情報57号(PDF:468KB)」に掲載していますのでご参照ください。

報告書の行間からは、高度成長を遂げた昭和の頃は、現場で人材を育成し技術も伝承され、リスクアセスメントも適切に実施され、現場関係者の連携よく安全対策が運営される文化が存在したが、いつの間にか稀薄となり安全取組が形骸化したとも読み取れます。上記「安全確保体制の整備」に「安全文化の醸成」が掲げられていますが、安全文化をどうとらえればよいでしょうか。「文化」の概念も多様ながら、風土に根差す慣習・行動様式と思考・精神とすれば、安全文化とは、「安全を尊ぶ行動と精神の継承」ではないかと思います。「精神の継承」は目に見えないまさに空気で、組織でマニュアル化してもなかなか伝えきれず、目に見える行動様式だけが残り形骸化したのかもしれません。目的意識や使命感などとともになぜ安全文化が希薄となっていったか、組織の活性化を図る中で検証が必要ではないかと思います。工場の現場では各所に「安全第一」の標語が掲げられ、安全文化も継承されているようにも思われますが、管理部門や役員室などではあまり見かけません。「第一」として安全だけ抜き出して現場に掲げることで、安全は日常業務と切り離されて空念仏のようになり、形骸化しているのかもしれません。「安全第一」に続いて、「品質第二」、「生産第三」があることをきちんと認識した方が、企業活動全体の中での「安全」の意義を確認することでその重要性をより深く理解できるのではないでしょうか。安全、品質、生産は企業活動にとって三位一体であり不可欠ですが、生産活動の基盤としてまず安全があり、緊急時には安全を最優先するという意味での「第一」であることを、現場から経営までそれぞれの立場で理解し、お互い立場が違うことも理解した上でそれぞれの役割を地道に実践することが、安全文化の醸成、延いては長期的には品質、生産の向上につながり、企業文化を下支えしていくのではないかと感じる次第です。高度成長期に培われた組織形態や文化の陳腐化・変質などは化学産業だけではなくあちこちの組織において共通する課題なのかもしれません。

以上

(2014年7月17日 三友新聞掲載記事を転載)

氏名
石原 謙 Ken Ishihara
役職
災害リスクマネジメント部 部長 主席コンサルタント