コンサルタントコラム

環境CSRにおける「3本の矢」

所属
事業リスクマネジメント部 環境グループ
役職名
コンサルタント
執筆者名
関崎 悠一郎 Yuichiro Sekizaki

2014年6月25日

近年、パーム油や紛争鉱物など、原料調達先における環境破壊が社会的な問題となり、企業のブランドイメージに重大な悪影響を与えるケースが増加してきた。弊社でも、火付け役となる環境NGO(外部ステークホルダー)への対応について相談を受けることが増えている。ビジネスのグローバル化が進む中、バリューチェーン上の環境リスクが事業そのもののリスクにつながることは、無視できない事実となりつつある。

2015年に予定されている環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の改正においても、ステークホルダーやバリューチェーンに関する記述が追加される見込みだ。2004年以来の改正となる今回は、環境CSRに関する他の国際規格との整合性をとりつつ、内容は大きく変わると見込まれている。このISO14001:2015年版について、現時点で公表されている改正案をベースに概説する。

ISOマネジメントシステム規格(ISO MSS)は、品質に関するISO9001やBCMに関するISO22301など、これまでに様々なものが発行されてきた。一方で、複数のISOを認証取得する企業も増えたため、実務面での負担を考慮し、数あるISO MSSの中から中核となる要素を抽出して共通化する検討が、2006年から続けられてきた。今回の改正でも、CSR全般に関する規格であるISO26000との整合性を意識し、「ステークホルダー」および「バリューチェーン」での取り組みが重視される見込みだ。これによりISO14001:2015年版は、現場レベルの環境改善ツールとしてだけでなく、経営戦略ツールとして活用することが意図されている。

ステークホルダーを重視するのであれば、CSRレポートを通じた外部への情報発信がこれまで以上に重要なテーマとなる。2013年10月に公表されたISO14001:2015年版の原案では、「外部コミュニケーション」の項目に「報告」の文言が追加された。今後は、CSRレポートのグローバルスタンダードであるGRI-G4(持続可能性報告ガイドライン第4版、昨年5月に発表)との連携についても考慮すべきだろう。

従来ISO14001の運用は、製造業の場合は企業の環境部門が、非製造業の場合は総務部門が担うケースが多かった。今回の改正では、企業全体の経営戦略やリスクマネジメントに関わる運用が必須となることが見込まれているが、一般的にこれらを担っているのは経営企画部門である。同部門のCSR担当部署では、ISO26000を参照して全社のCSR活動をマネジメントし、GRI-G4をもとにCSRレポートを発行していることが多い。加えて、バリューチェーン全体で取り組むには購買部門、ステークホルダー対応には広報部門の役割も重要となってくる。このため、今後は三つの規格・ガイドライン(ISO14001:2015年版、ISO26000、GRI-G4)を「環境CSR 3本の矢」として有機的に結び付け、社内全体で統合した、部署横断的な環境CSRマネジメントの運用が望まれる。

新たなISO14001は2015年年央に発行される予定で、その後は3年間の移行期間が設けられる見込みだ。ISO14001認証取得企業は、この移行期間中に運用体制構築などの対応を迫られることになる。

以上

(2014年6月19日 三友新聞寄稿記事を改編掲載)

関崎 悠一郎 Yuichiro Sekizaki
氏名
関崎 悠一郎 Yuichiro Sekizaki
役職
事業リスクマネジメント部 環境グループ コンサルタント
専門領域
生物多様性、環境リスクマネジメント