コンサルタントコラム

今から確認しておきたい新型インフルエンザ対策

所属
コンサルティング第二部 BCM第一グループ
役職名
コンサルタント
執筆者名
多田 彩乃 Ayano Tada

2013年11月11日

2013年4月、中国におけるH7N9型鳥インフルエンザのヒトへの感染事例が連日ニュースを賑わせた。結局広範囲にわたるヒト―ヒト感染は認められず、4月下旬ごろから感染者数も落ち着きを見せたため、「事態は収束した」と胸をなでおろした方も少なくないだろう。しかし、今冬に向けてH7N9型ウイルスに対する警戒が必要との専門家の声は多い。実際、10月には中国浙江省でH7N9型のヒトへの感染が報告されており、今後の動向が注目される。そこで本稿では、新型インフルエンザの発生に備え、企業が今から準備しておきたい対策を3つご紹介する。

(1)正しい情報を収集・伝達する体制

新型インフルエンザ発生下で企業が適切な意思決定を行うためには、正しい情報の収集が必要不可欠である。そのため、公的機関などの適切な情報源から継続的に情報を収集できる体制づくりが求められる。また収集した情報を従業員へ伝達することも重要だ。正しい情報を付与することは適切なレベルの危機意識の喚起につながるからである。「適切な」という部分がここでのポイントである。危機意識の過剰喚起はパニックの原因になりうるが、逆に意識喚起が十分でなければ、新型インフルエンザ発生時の対応が後手に回り、被害を拡大させる恐れがある。特に2009年に流行したH1N1型が弱毒性であった経験から、新型インフルエンザの影響を過小評価する従業員が一定数いると予想されるため、正しい情報・知識の伝達は重要な取り組みとして捉える必要がある。情報を適切に伝えるためのポイントとしては、①継続的に情報を発信すること、②個々人が行うべき対策を理由とともに具体的に伝えること、③自社の対応方針や実施している対策もあわせて開示することなどが挙げられる。

(2)基本的な感染防止策の啓発

新型インフルエンザの流行に際しては、適切な感染防止策の実施が被害を抑える第一歩となる。なかでも重要なのは手洗い・手指消毒・咳エチケットなどの励行である。これらの防止策を徹底するためには平時より一人一人の衛生意識を高めていくことが重要である。

また、新型インフルエンザ流行下において各企業は「体調不良の従業員は出社させない」との方針を掲げると思われるが、この方針が守られるための環境づくりも重要だ。体調不良を押しての出社が仕事への意欲として日頃から評価されるような土壌のある企業では、方針を無視し高熱を押して出社する従業員がいてもおかしくはない。平時から、体調不良の従業員には自宅休養を積極的に指示するよう心がけ、従業員の意識の啓発を図りたい。

(3)備蓄品の確認・更新

マスクやゴーグルなどの衛生用品や保護具の備蓄も重要な対策である。これらの手配は新型インフルエンザ発生後では間に合わない可能性があるため、事前に備蓄品の在庫を確認し、最新の従業員数と照らし合わせ不足しているならば手配を進めることが重要だ。また、2009年の新型インフルエンザ対策で購入した物品など、以前に購入し長期保管している物品については棚卸しを行い、適宜備蓄品を入れ替える必要がある。特にアルコール消毒液などは使用期限についても確認することをお勧めする。

以上、新型インフルエンザに備えて企業が今から確認しておくべき対策をご紹介した。いつか来る「その日」のために、多くの企業が「パンデミックに強い組織づくり」を進められることを切に願っている。

以上

(2013年11月7日 三友新聞掲載記事を転載)

多田 彩乃 Ayano Tada
氏名
多田 彩乃 Ayano Tada
役職
コンサルティング第二部 BCM第一グループ コンサルタント
専門領域
BCM(事業継続マネジメント)

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