コンサルタントコラム

東南アジアにおける自然災害の実態と対策

所属
インターリスク・アジア
役職名
マネジング・ディレクター
執筆者名
中本 専 Atsushi Nakamoto

2013年9月9日

シンガポールに駐在して4年目ですが、毎年数多くのリスクサーベイで東南アジア各国を回っています。リスクサーベイでは、工場を中心に様々なリスク(火災、自然災害、労災、電気等)の診断・改善を提案しています。

2011年のタイ洪水以降、東南アジアの日系企業では洪水への関心が一気に高まりました。多くの企業で日本の本社から指示を受け、洪水リスクの実態と対策を報告されたことと思います。その後2年近くが経過し、残念ながら関心は薄れつつあります。洪水や地震は、いつどこで起こるか予測ができません。改めて自然災害について思い返して頂く機会になればと思いテーマに取り上げました。

一般的にリスクは「エクスポージャー」と「対策」から捉えることができます。エクスポージャーは洪水リスクであれば地域性・標高・水源・罹災歴、対策はハード・ソフトの両面から評価します。例えば、工場が山腹の工業団地で近隣に河川(水源)がなく罹災歴もない場合、エクスポージャーは低いと判断される一方、低地の湿地帯で河川や運河が周辺に流れ罹災歴もある場合、エクスポージャーは高いと言えます。ただし、対策がしっかりしていれば、その分リスクを減らすことができます。

2011年に浸水したタイの工業団地を訪ねますと、何れも高い外周堤防がその後新たに築かれていますが、入居している工場での洪水対策は様々です。外周堤防に頼り切っている工場もあれば、再発を前提に対策を徹底している工場もあります。例えば、ユーティリティーや重要な機械設備を2階に移設、あるいは緊急時に設備を移動できる体制を整備することで自衛策は取れます。さらに重要なプロセスを洪水リスクの低い場所にある工場に移管・委託するのも対策の1つです。もちろん敷地周囲のフェンスを防水仕様にしたり出入口に防水パネルを備えることも有効ですが、氾濫水の浸入を完全に防げなかった場合を考えると、高い所に移す方が信頼性は高いといえます。ソフト面の対策も重要であり、マニュアルを整備するだけではなく、定期的な訓練も欠かせません。

東南アジアで洪水リスクが高いのはタイだけではありません。インドネシアではジャカルタを中心に5-6年周期で大規模な洪水が発生しており、市内・郊外の工業団地も被害を受けています。フィリピンではマニラ市内で恒常的に洪水が発生するほか、郊外の工業団地でも被害を受けています。ベトナムではハノイ(漢字名「河内」)の由来どおり、市内・近郊の工業団地も紅河の洪水リスクにさらされています。

地震・津波リスクはインドネシアが高く、スマトラ島沖で巨大地震が周期的に発生しているほか、ジョグジャカルタのような内陸部でも断層直下型地震の被害を受けています。フィリピンも同様にプレート型の大規模地震が多発しています。活断層はタイ、ミャンマー、ベトナムでも多数確認されており、リスクが低いとは言えません。

その他、暴風雨リスクはフィリピン、火山噴火リスクはインドネシアとフィリピンに集中しています。自然災害が比較的少ないとされているマレーシアとシンガポールでも、地域によっては安心できません。

東南アジアで事業を継続する限り、自然災害リスクの発生を前提とした備えが欠かせません。想定外のあらゆる事態に備え、経営者を始め管理者・現場従業員が日頃から関心・意識を持ち、防災対策の維持・向上に向けた取組が必要とされています。

以上

(2013年9月5日 三友新聞掲載記事を転載)

中本 専 Atsushi Nakamoto
氏名
中本 専 Atsushi Nakamoto
役職
マネジング・ディレクター
専門領域
海外リスクマネジメント