コンサルタントコラム

災害対応における「自助」と「共助」

所属
大阪支店 災害・経営リスクグループ
役職名
主任コンサルタント
執筆者名
日塔 哲広 Tetsuhiro Nitto

2013年8月5日

2013年4月、米国ロサンゼルスで開催されたリスクマネジメント協会(RIMS)の年次総会に参加した。RIMSとは、米国ニューヨークに本部を置くリスクマネジメント(RM)の専門家による非営利団体であり、全世界に会員を擁する世界最大規模の組織である。年1回のRIMS年次総会は、多様な業種・業界の人々がRMに関連する最新のテーマ・手法を持ち寄って共有する場となっている。

本稿では、この年次総会で催されたあるセッションを受講して筆者が感じた思いを述べてみたい。そのセッションは、2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震での日本企業の対応例・成功例を踏まえ、事業継続マネジメント(BCM)の重要性を強調するもので、ここで取り上げられていたキーワードの「自助」と「共助」が印象的であった。

はじめに、自助とは「自らの命を自らが守ること」といえるが、自助が発揮されたケースとして、宮城県に事業所を構え、東北地方太平洋沖地震で自社の施設に大きな被害を受けたA社(仙台市)およびB社(名取市)の事例が紹介された。A社は事業継続計画(BCP)の中で重要な生産設備のメーカーと災害時の支援協定を結んでいたため、罹災後に設備を早期に調達できた。B社は収益率の高い施設の復旧に注力し、収支の悪化を抑制した。また、両社の従業員が地震後速やかに避難や顧客対応などの行動をとったという。

この事例において特筆されることは、これほどの甚大な被害の発生を想定していなかったにも関わらず、従業員が状況に応じて柔軟に対応したことである。A社・B社のように、想定外の状況下で従業員が自発的に行動できた背景には、各部門が一体となってBCPを構築し、定期的にBCPの見直しや従業員への周知が図られていたのではないかと推察する。弊社では企業に自社のBCM体制について伺う機会が多いが、BCPをつくったものの、それ以降のマネジメントサイクル(いわゆるBCM)が十分に機能していない企業や、BCPの策定には総務部門などの一部門のみが関与し、全社的な取り組みとして位置づけられていない企業などが見られる。このような状況で万一大きな災害が起こった場合に、果たしてBCPは有効に機能するだろうか。近年、BCPを策定済みの企業が増えていることは間違いないが、それが「画餅」になっていないか、自助の備えを見つめ直していただくことをお勧めしたい。

次に共助とは「近隣が互いに助け合うこと」といえるだろう。A社・B社は他県の同業他社から復旧への支援を受けることができた。また、この地震によって自動車産業のサプライチェーン(供給連鎖)が一時途絶えたが、自動車メーカーが罹災した取引先にサポート要員を派遣し、取引先および自動車産業の復旧に貢献した事例も紹介された。

自然災害大国の日本では共助は比較的受け入れやすい概念といえるが、RIMS年次総会の参加者からは「米国では企業間での共助は到底考えられない」といった意見もあった。もしかすると、企業の共助によって地域や産業を守ることは日本固有のRMの姿かもしれない。BCPに共助の要素(帰宅困難者の受け入れや、地域共同の防災訓練の実施、同業他社への応援など)を取り入れることは必ずしも容易ではないが、日本らしいRMの追及に向けて、その可能性について検討していただくことを切望する。

以上

(2013年8月1日 三友新聞掲載記事を転載)

日塔 哲広 Tetsuhiro Nitto
氏名
日塔 哲広 Tetsuhiro Nitto
役職
大阪支店 災害・経営リスクグループ 主任コンサルタント
専門領域
火災・爆発リスク、自然災害リスク(地震・水災他)、事業中断リスク