コンサルタントコラム

東日本大震災後の企業のBCP取組

所属
コンサルティング第二部 BCM第二グループ
役職名
マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
野﨑 久之 Hisayuki Nozaki

2013年3月14日

3.11の東日本大震災からもうすぐ2年が経過しようとしている。その間、国や自治体などから公表された首都直下地震や南海トラフの巨大地震等の新たな被害想定をはじめ、様々なBCP関連情報が出回り、企業のBCP(事業継続計画)取組も着実に前進している。本稿では、企業のBCP取組を支援している立場から、最近の企業のBCP取組のトレンドを紹介する。

企業におけるBCP取組の状況を俯瞰すると、取引先からの要請等によってようやく取組を始めたような企業もあるが、全体的に見れば、関連情報収集やBCP策定の段階を経て、BCPの見直しやBCP教育・訓練といったマネジメントサイクルに入ってきていると言えよう。具体的には、多くの企業で、自社の策定したBCPに抜け漏れはないか、実効性は担保されているかを検証したり、社員向けの教育や訓練を通じてBCP上の課題抽出を行っている。また、自社で策定したBCPのグループ会社への展開や、取引先企業の取組を推進する動きなど、これまでより一歩踏み込んだ取組も見られる。

また、重点的に取り組む項目を絞り込んで取組を推進する企業も少なくない。どの部分を優先して重点的に取り組むかは企業の置かれている環境等により異なるが、自社の業務継続上のウィークポイントを分析してそこを重点的に取り組んだり、取組内容をより実践的なものにするなどの工夫をしているのである。具体例としては、システムの稼動の可否が最大のボトルネックであればシステムの冗長化などの事前対策を優先する、サプライチェーンが大きな懸案事項であれば調達先や物流の対策を推進する、従業員と家族が被災しない観点から家庭での備えを重点的に推進するなどである。また、防災訓練において、従来の避難訓練に加えて、安否確認訓練、救護所設置訓練、非常用通信機器の訓練など災害時に必要となる内容を追加実施しているケースも多い。

これらの取組を進めるうえで、重要なポイントは、自社の現状・課題を把握したうえで、必要な対策を列挙し、予算、取組期間、ロード等を考慮した取組項目の優先順位を決めた計画を策定する、その計画について経営層も含めて会社としてのコンセンサスをとる、そして、できることから実施していくことである。また、定期的に計画の進捗状況と課題・問題点等を確認し、計画の内容を見直すことによって、より効果的なBCPの取組にすることができる。

最後に、在首都圏の企業について少々残念に感じることがある。東日本大震災を経験し、一定の対応は実施できたことから、BCPに本格的に取り組まなくても何とかなると考えている担当者が散見されることである。発生が懸念されている首都直下地震が起きた場合、東京は震度6弱から7が想定され、その人的・物的被害は東日本大震災の比ではないはずである。そのような事態においても、重要業務を早期に復旧・継続してダメージを最小化できるよう、今一度自社のBCPの取組を見つめ直していただきたいと思う。

以上

(2013年3月7日 三友新聞掲載記事を転載)

氏名
野﨑 久之 Hisayuki Nozaki
役職
コンサルティング第二部 BCM第二グループ マネジャー・上席コンサルタント
専門領域
BCM(事業継続マネジメント)、情報セキュリティ

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