コンサルタントコラム

東南アジアの自然災害リスク

所属
インターリスク・アジア
役職名
ディレクター
執筆者名
山村 亮 Akira Yamamura

2012年12月25日

アジアは世界の中でも、自然災害の発生数・頻度、被害規模が圧倒的に大きい地域である。当社が担当する東南アジア諸国も、インドネシアの地震・噴火、フィリピンの台風・地震、タイの洪水、ベトナムの洪水を始め、各国とも社会に大きな被害をもたらす自然災害リスクにさらされており、リスク・エクスポージャーが高い地域であることは紛れもない事実だと感じる。

しかしながら「実際に世界の中でどれくらい危険な地域なのか」という疑問から、インターネットを検索したところ、国連大学の「World Risk Report 2012」というレポートに行き着いた。
このレポートではWRI(WorldRiskIndex)という独自の指標を用いて173カ国の自然災害によるエクスポージャーを順位付けしている。
WRIは以下の4つの要素から算出される。

  1. (1) 自然災害(地震、台風、洪水等)へのエクスポージャー
  2. (2) 自然災害による被害の受けやすさ
  3. (3) 自然災害への対処能力
  4. (4) 今後の自然災害に対する適応能力

このうち(2)と(3)と(4)を組み合わせた数値を「自然災害リスクに対する脆弱性」の指標とし、(1)の「自然災害への遭遇度合い」とかけ合わせたものがWRIとなる。
(WRIはパーセント(%)で表示され、その数値が高いほどリスク度合いが高いが、以下では簡易化のため順位のみで比較をする。)

さっそく東南アジア各国の順位(リスクが高いほど高順位)を確認してみた。フィリピン3位、ベトナム18位、インドネシア33位、マレーシア91位、タイ92位である。予想していたよりもタイの順位が低いことに驚いたが、リストを見ていると馴染みのない国名が並んでおり、1位バヌアツ、2位トンガである。
そこで、国際通貨基金(IMF)のデータに基づき経済規模のひとつの指標であるGDP(国内総生産)上位60カ国に絞り、WRIの順位を再確認してみたところ、フィリピン1位、ベトナム4位、インドネシア6位、マレーシア17位、タイ18位という結果となった。
東南アジアは自然災害という観点のみでいえば、突出して危険な地域というわけではなく、世界中で同様に危険な地域はある。しかしながら、その災害が世界経済に与えるインパクトまで含めると影響度合いの大きい地域であるということがいえるのではないだろうか。

ちなみに災害列島といわれる日本のWRIは173カ国中16位、GDP上位60カ国中3位となる。WRIは、「災害への遭遇度合い」x「災害リスクに対する脆弱性」であることを前述した。日本のWRIについて、要素別に見てみると173カ国ベースで、エクスポージャーは4位と高順位である一方、脆弱性は162位という低順位となっている。リスクへのエクスポージャーが非常に高いにもかかわらず、「損害軽減対策・対処能力・適応能力」(エクスポージャーへの耐性)は世界のトップレベルにあることを示している。

最近の日本では人災が被害規模を大きくしていると思われるような災害・事故が起きているが、これまで自然災害に対してだけでなく、各方面において高い安全水準を確立してきた国である。
各国間の経済における相互依存が更に強まる一方で、地球規模の気候変動が原因ともいわれる大規模な自然災害が頻発している。東南アジア諸国へ出張する中で、各国のリスクへの耐性を高めるために日本がその存在感をアピールできる技術・ノウハウはまだまだあるのではないかとこの順位をみて感じた。

以上

(2012年12月20日 三友新聞掲載記事を転載)

山村 亮 Akira Yamamura
氏名
山村 亮 Akira Yamamura
役職
ディレクター
専門領域
海外リスクマネジメント