コンサルタントコラム

企業で考えておきたい帰宅困難者対策と従業員の備え

所属
大阪支店 災害・経営リスクグループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
吉田 利秀 Toshihide Yoshida

2012年11月26日

昨年の東日本大震災発生時、交通機関の混乱により首都圏で多くの帰宅困難者が発生しました。当日、帰宅しようとする人々で道路があふれかえり、混乱している様子を、多くの方々がテレビ等でご覧になっていることと思います(東京都内だけで約352万人が帰宅困難になったと推計されています)。

このように大都市圏を中心に、大地震発生時には多数の帰宅困難者が発生する可能性があり、企業にとって、帰宅困難者対策は準備しておくべき重要な課題であることが明らかになりました。

このような事態を踏まえ、今後発生が予想される大地震対策として本年3月、東京都では「帰宅困難者対策条例」を制定して、来年4月から施行されることとなりました。約90万人の帰宅困難者が発生すると想定されている大阪市においても、「とどまる」、「ともに働く」、「無事に帰す」、「地域で保護」の4つのキーワードをコンセプトとした「大規模災害時における帰宅困難者対策」の検討が進められています。

東京都、大阪市いずれにおいても、混乱を避けるため「むやみに移動を開始しない」ことを大規模災害発生時の基本的な考え方として掲げています。企業もしくは個人として検討課題への対応策を講じることが重要です。その主なものをいくつか紹介します。

例えば企業における対応として、大地震発生直後は原則として従業員等を事業所内に待機させ、周辺の被害状況、ライフラインの状況などの情報収集ののち帰宅・待機を判断する、などのルールを設けるとよいでしょう。

また、「むやみに移動しない」ことにより、多くの従業員が会社内に留まり、しかも食料の確保やトイレの使用困難などさまざまな支障が生じる事態が想定されます。その対応策をいかに整備するか、多くの企業でお悩みになられていることと思いますが、自治体や各地の「帰宅困難者等対策協議会」などが公表している「備蓄品リスト」等を参考に、必要となる物資を計画的に備蓄していくことが望まれます。

従業員の方々にとっては、家族の安否状況をなるべく早く把握するための連絡手段を事前に決めておくことが大切です。帰宅困難時の対応に関するアンケート調査では「家族が無事であることが確認できれば、当面帰宅を見合わせる」と考えている人が多いとの結果もあります。逆に、家族の状況が分からなければ、無理をしてでも帰宅を試みる人が多くなり、帰路危険な状況に遭遇する恐れもあります。連絡手段として、電話はほとんど繋がらなくなります。電話以外の手段として「携帯メールでやりとりをする」、「災害伝言ダイヤル171に伝言を入れる」など複数決めておくと良いでしょう。

さらに、交通機関が途絶した状況下、地震発生翌日などに徒歩で帰宅することを想定して、会社のロッカーなどに歩きやすい靴を用意しておくことも有効です。アンケート調査で、東日本大震災発生時、実際に徒歩帰宅を余儀なくされた方々に対し「あったらよかったもの」をあげてもらってみたところ、その回答として「歩きやすい靴」との声が多くありました。なお、このほかの「あったらよかったもの」としては、情報収集のための「携帯ラジオ」、「使い捨てカイロ(寒い時期であったため)」、「懐中電灯」などがあげられています。

最近ターミナル駅を中心に、自治体主催による帰宅困難者対策訓練を実施するところが出てきました(関西では平成23年11月大阪駅、平成24年11月三ノ宮駅で実施)。これらの機会を利用して、積極的に参加してみるといいのではないでしょうか。どのような混乱が生じ、どのようなことが課題になるのかが少しでも実感できるのではないかと思います。特に東日本大震災発生当夜の混乱を経験していない方々には、大地震発生時の状況をイメージするための良い機会になると思います。

過去の教訓を踏まえ、いつ遭遇するかもしれない、大地震への「備え」を固めておきましょう。

以上

吉田 利秀 Toshihide Yoshida
氏名
吉田 利秀 Toshihide Yoshida
役職
大阪支店 災害・経営リスクグループ 上席コンサルタント
専門領域
BCM(事業継続マネジメント)