コンサルタントコラム

グローバル・サプライチェーンと自然災害リスク

所属
コンサルティング第三部 エンジニア第一グループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
工藤 信介 Shinsuke Kudo

2012年7月23日

2011年度、日本経済は東日本大震災とタイの洪水の影響を同じ年に被り、大きな困難に立ち向かった一年でした。本稿では、日本の経済環境を踏まえた2つの自然災害の影響等について考えてみます。

経済産業省・厚生労働省・文部科学省作成の「2011年版 ものづくり白書」に記載されている日本の海外現地法人企業(製造業)数をみると、2001年から2009年にかけて全体的に増加傾向を示しており、特にアジア地域で増加していることが分かります。
海外現地企業が増加すると共に、周辺諸国を合わせたグローバル・サプライチェーンも拡大しています。「2011年版 ものづくり白書」には、中国やASEANにおいては現地国の日系企業、非日系企業からの調達が拡大していく傾向が示されており、また、中国、ASEANにおいて現地国や現地周辺国、日本を除くその他世界各国を仕向地とする割合が増加傾向にあることが示されています。
以上のようにグローバル・サプライチェーンが拡大していく状況下において日本に大きな影響を与えた大規模自然災害が、東日本大震災とタイの洪水でした。

サプライチェーンのリスクとして、1企業の事業停止が連鎖的に他社へ波及するという点が上げられます。
「2011年版 ものづくり白書」によれば、2011年7月までに東日本大震災に関連して倒産した企業のうち、倒産パターン別では「得意先被災等による売上げ減少」と「仕入先被災等による調達難」の合計が約46%を占めており、サプライチェーンの途絶に起因する倒産が全体の半数近くに及んでいました。
また、タイの洪水はサプライチェーンの途絶リスクが、国内だけではなく海外でも存在することが顕在化した事例といえます。

グローバル・サプライチェーンのリスクを考えた場合、進出国の自然災害リスクは、進出を検討する際に考慮すべき項目の一つとして認識する必要があると考えます。
アジア地域は統計的にも自然災害の発生数と自然災害による損害が他の地域と比較して多いため、進出時には特に自然災害リスクを認識しておくべきといえます。(Centre for Research on the Epidemiology of Disasters(CRED)に掲載されているレポート*1に基づけば、2011年の自然災害の発生数332件のうち、146件(約44%)がアジア地域で発生しています。)
アジア地域では国連防災戦略などを通じて複数国が協力してデータの収集や分析、政府や自治体による自然災害への対策等の取り組みを強化しており、インドやバングラデシュ、ネパールなどはSouth Asian Disaster Knowledge Network を組織し、自然災害に関する情報提供を行っています*2。進出国政府機関や保険会社などの情報と共に、こうした国際協力の下で提供される災害情報も参考にして、進出国の自然災害リスクを検討していくことが大切になります。

*1:Guha-Sapir D, Vos F, Below R, with Ponserre S. Annual Disaster Statistical Review 2011: The Numbers and Trends. Brussels: CRED;2012
*2:South Asian Disaster Knowledge Network: http://www.saarc-sadkn.org/about.aspx

以上

(2012年7月19日 三友新聞掲載記事を転載)

工藤 信介 Shinsuke Kudo
氏名
工藤 信介 Shinsuke Kudo
役職
コンサルティング第三部 エンジニア第一グループ 上席コンサルタント
専門領域
火災リスク、自然災害リスク(地震・水災など)