コンサルタントコラム

行動を変えるには、意識から変える

所属
コンサルティング第一部 ERMグループ
役職名
主任コンサルタント
執筆者名
齋藤 顕是 Kenji Saito

2012年5月31日

「社員がなかなか手順や規則を守ってくれません。管理者としてどのようにすればいいでしょうか?」

本稿のテーマではこのような時に、どのように意識や行動を変えていくかということを考えていきます。特に、行動科学や行動変容といった考え方の一つで、米国では非常に高く評価されているトランスセオレティカルモデルという理論をベースにして具体的な取り組みをご紹介します。

トランスセオレティカルモデルの考え方では、個人の意識・行動の状態には段階があると考えられています。(1)前熟考段階、(2)熟考段階、(3)準備段階、(4)実行段階、そして(5)維持段階の5つです。各段階の具体的な意味と取るべき対応を、最初の「社員がなかなか規則を守ってくれません。」という場合で説明していきます。

  1. (1) 前熟考段階では、「手順や規則なんて関係ない。自分のやり方でうまくいっているのだからそれで良いじゃないか。」と考えている状態です。この段階の方は、手順を守るメリットなどを全く考えていません。まずは、手順を守るメリットと、守らないデメリットに気づかせましょう。そして、手順を守らないことで周囲にどのような悪影響があるのかを気づかせて下さい。
  2. (2) 熟考段階では、「手順や規則も大事なのは分かる。でも手順より自分のやり方の方がいいや。」という意識を持っています。「手順を守ることで成功している自分」をイメージさせたり、手順を守っている人の話を聞いたりすることで自信をつけることが効果的です。更に、手順を守る上での負担感を減らすことも考えてみてください。実践可能な短期目標を設定させることも有効です。
  3. (3) 準備段階は、「手順や規則はしっかりしているようだし、守ってもいいかな。でもちょっと面倒くさい。」と考えています。この段階の方は、もう一押しで行動を起こす状態です。いきなり全てのことをやるのではなく、出来ることから行動をさせるようにしていきましょう。家族や職場などで行動や目標を宣言することで、「自分自身を縛る」ということも非常に効果的です。手順書などを見えるところに置いたり、ポスターを掲示したりすることで、「刺激」を見えるところに散りばめることも有用です。
  4. (4) 実行段階はその名の通り行動には移っているものの、手順や規則を守り始めたばかりの状態です。重要なことは、前の段階に戻ってしまわないようにすることです。手順を守ることで得られたメリットを確認させたり、逆戻りしそうな状態を自ら考え対処法を考えておいたりといったことが有効でしょう。もし手順や規則を破ってしまった場合でも、罪悪感を強く認識させないことが重要です。罪悪感を覚えると、「それならそもそも手順を守らないほうが良い」ということになりかねません。
  5. (4) 維持段階では長期的に手順を守っている状態です。この段階が理想的であると言えるでしょう。

上記のように、意識の状態に応じた上手な働きかけをすることで、意識や行動は変わっていきます。社員に規則を守って欲しいのであれば、その社員がどの意識レベルにあるのかを踏まえて、声がけなどのアクションを起こすことを心がけてください。取り組みなどがうまく行かない場合は、意識・行動の状態にふさわしい事が出来ていないと思われます。そのような場合には、組織や個人の意識を正しく把握することを優先することが大切となります。

以上

(2012年5月24日 三友新聞掲載記事を転載)

齋藤 顕是 Kenji Saito
氏名
齋藤 顕是 Kenji Saito
役職
コンサルティング第一部 ERMグループ 主任コンサルタント
専門領域
組織心理学、組織行動マネジメント、医療・介護リスク、全社的リスクマネジメント(ERM)