コンサルタントコラム

道路交通安全を取り巻くマネジメントシステム

所属
コンサルティング第四部 交通リスク第一グループ
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
梶浦 勉 Tsutomu Kajiura

2012年1月24日

道路交通安全マネジメントシステム規格(以下、「ISO39001」という。)が2012年11月に発行される予定である。この規格が作られた背景には、近年の道路交通安全に関する国際機運の高まりがある。交通事故は全世界で毎年約130万人以上の死亡者、約5,000万人の負傷者を出しており、人道的大災害であると言われている。また、交通死亡事故の90%は発展途上国で発生しており、2015年までには5~14歳の死亡原因1位になると言われている。このような悲劇的な状況を改善するためには、国際的に道路交通安全に向けた、安全システム(Safety System)によるアプローチが必要との考えがある。マネジメントシステムによる道路交通安全に向けた取組は既にいくつかの国で行われており、例えばスウェーデンの「Vision Zero」、オランダの「Sustainable mobility」等がその例である。日本においても自動車運送事業者向けには国土交通省が定めた「運輸安全マネジメント」という制度があり、2006年10月から実施されている。

運輸安全マネジメント制度とは、陸・海・空の運輸事業者に、経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制を構築・改善し、事業者内部における安全意識の浸透・安全風土の醸成を図ってもらうことをねらいとした制度である。運輸安全マネジメント制度の事故削減への有効性については、国土交通省が自動車モードにおいて支払保険金を比較したデータをHP上で公表をしており、安全管理規程等が義務付けられ運輸安全マネジメントに取り組んでいる事業者についての2009年度支払保険金が2006年度より半減している一方、安全管理規程等が義務付けられていない事業者については、あまり変化が無いという結果になっている。これをもって、運輸安全マネジメントは一定の事故削減効果をもたらしているのではないかという結論だ。

ISO39001は、運輸安全マネジメントと比較した際に、いくつか異なっている点がある。例えば規格の認証対象が自動車運送事業者のみならず道路の利用・設計・製造・運用・保守・法規制に関わる幅広い組織となっている。そのため自社製品の流通や営業車として自家用車を保有する企業や建設業・国・地方公共団体等も対象となる。さらには、駅・空港・遊園地やスーパーマーケットのような輸送ニーズを産む施設の運営に関わる組織等も認証の対象となっている。また、運輸安全マネジメントは国土交通省が法律に基づき、運輸の安全確保という責務を果たす一環として推進しており、安全管理規程の作成・届出等一部が義務となっているのに対して、ISO39001は任意の認証規格であり、国内においては独立行政法人自動車事故対策機構が中心となって、国内関係制度との整合性確保や啓発・普及に努めている。制度は異なるが、国土交通省は当該規格の普及状況、適合性審査の実態等を注視しており、今後の道路交通分野の安全管理において、外すことのできない最も重要なキーワードであると考えられる。

ISO39001のもうひとつの特徴として、規格発行前にパイロット審査を受けることができる点がある。弊社インターリスク総研もコンサルティング会社として国内で初めてパイロット審査を受ける。発行前の規格であるため情報が乏しく、取得に向けた体制の構築は難易度が高い。しかし、社会的意義のある活動であることを実感している。

最後にリスクマネジメントのコンサルタントとして、ISO39001の登場によって、さらに社会的な道路交通安全の機運が高まり、悲惨な交通事故が減少、撲滅することを期待したい。

以上

(2012年1月19日 三友新聞掲載記事を転載)

梶浦 勉 Tsutomu Kajiura
氏名
梶浦 勉 Tsutomu Kajiura
役職
コンサルティング第四部 交通リスク第一グループ 上席コンサルタント
専門領域
運輸事業の安全管理体制構築、システムリスクソリューション全般