コンサルタントコラム

交通事故と自転車走行

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
交通事故防止コンサルティング
役職名
大阪支店 自動車RMグループ シニアアドバイザー
執筆者名
乾澤 聰 Satoshi Inuzawa

2011.7.11

昨今の地球環境問題や健康志向を反映して、通勤・通学や日常生活に自転車を利用する人が増加していますが、一方で交通事故の当事者となる場面も多く、自転車利用について様々な問題が発生していることも見逃せない状況にあります。
 朝の通勤時は誰もが一刻を争って急ぎ気味なのは判りますが、赤信号に変わっても無理やり交差点を通過する自転車や、携帯電話を操作しながら、あるいは雨の日には傘をさして十分前が見えない状態で歩道を走行中、歩行者と危うく衝突しそうになってヒヤッとする光景をよく目にします。
 自転車は便利な乗り物ですが、道路交通法では「軽車両」と定められ、走行方法に関しては同法を遵守しなければならないのは当然のことで、上記のように信号無視や運転中携帯電話操作等は自動車運転中であれば当然許されることではありません。また自転車は車道の左側を走行するのが原則で、道路標識等で通行できることが示された場合のみ歩道を走行することができるとされていますが、現状はいかがでしょうか。

5月12日に大阪市内で発生した交通事故の原因が「無理な自転車の横断」にあるとして新聞等で大きく報じられました。この事故は歩道上にいた2人がタンクローリー車にはねられて死亡し、当該車及び自転車を避けるために車線変更した自動車の運転者が自動車運転過失致死罪で逮捕され、且つ事故を誘発したとして直前に渋滞車両の間を横断した自転車の男性を重過失致死罪で逮捕したというものです。
事故現場は交通量が多い片側2車線の国道で横断歩道も近くにありますが、以前から自動車の間隙を縫うようにして近道をする自転車が多いという実情も報じられていました。

警察庁の発表によれば、昨年1年間に発生した交通事故の死者数はピーク時の約3割以下となり、また負傷者数も6年連続で減少していますが、そのなかで自転車乗用中の死傷者数は減り方が小さく、その結果交通事故のうち自転車乗用中のウエイトが大きくなっています。特に30歳代、40歳代及び65歳以上ではむしろ増加しているのは憂慮すべき現象ではないでしょうか。
死傷者数で最も多いのは19歳以下の若年層で、通学や塾等自転車を利用することが多いためと考えられますが、これらの層はその大半が自動車運転免許証を持っていないことから、日常生活の中で交通ルールを守ることの大切さを伝えることが重要ではないかと思います。

国は、自転車走行のルールやマナーを定め「自転車安全利用五則」(平成19年7月10日付)として発表しこれを遵守するよう呼びかけていますので、以下に列挙します。

  1. 自転車は車道が原則、歩道は例外
  2. 車道は左側を通行する
  3. 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
  4. 安全ルールを守る
    (1)飲酒運転・二人乗り・並進の禁止
    (2)夜間はライトを点灯
    (3)交差点での信号の遵守と一時停止・安全確認
  5. 子どもはヘルメットを着用

最後に、各家庭や職場で今一度安全な自転車利用方法について話し合う機会を設けられ、交通事故と無縁な一日を過ごされるようお願いします。

以上

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