コンサルタントコラム

今、企業に求められる事業継続計画~サプライチェーンの実効性確保に向けて~

所属
研究開発部
役職名
研究開発部長 主席コンサルタント
信州大学大学院 非常勤講師
執筆者名
本田 茂樹 Shigeki Honda

2011年6月1日

東日本大震災という未曾有の巨大地震から二ヶ月余りが経過した。被害の全容が明らかになりつつある中、政府から発表されている設備や道路などへの直接的被害額、16兆~25兆円は戦後最大の自然災害となっている。

被害規模が最大であるとともに、日本の経済に与える損失も甚大である。また被害を受けた範囲が想像を超えて広範囲に及び、部品供給が止まることによって生産が止まるという、サプライチェーンにおけるドミノ倒し現象が発生した。そして「オンリーワン」という代替のきかない技術をもつ企業が被災することにより、その影響は日本国内にとどまらず、世界的な広がりを見せつつある。

1.企業が受けたサプライチェーンへの影響

実際に企業が受けたサプライチェーンへの影響については、この4月、経済産業省が調査を行っている。(「東日本大震災後の産業実態緊急調査」)

そこで原材料、部品・部材の調達困難の理由として、「調達先の被災」を上げた企業が、素材業種では9割、また加工業種では8割となっており、「調達先の調達先が被災」をあげた企業も、加工業種では9割に達している。リスク分散のために部品の調達先を複数起用していても、その調達先が同じ企業から当該部品の材料を仕入れていたので、結果として調達が滞った事例もある。

2.企業が考えるサプライチェーンの重要性

今回の大震災で多くの企業が、原材料や部品・部材の調達困難という形で影響を受けたが、災害時のサプライチェーンの重要性を企業が理解していなかったわけではない。それは当社が昨年、国内全上場企業を対象に行った事業継続に関する調査においても明らかである。(「第4回事業継続マネジメントに関する日本企業の実態調査報告書」)

取引先が事業継続計画を持つことが必要であると思うかという質問に対し、86.9%の企業が「はい」と回答しており、事業継続を考える上で、取引先や協力企業が重要な役割を果たすことについての認識は非常に高い。しかし、その一方で、実際に取引先に対して事業継続計画を持つように要請している企業は13.9%にとどまっており、81.6%の企業は、実際に事業継続計画の策定を依頼していない。災害時には、サプライチェーンの乱れがあることを想定していても、その具体的な対策には必ずしも手がついていなかったといえる。

3.サプライチェーンの実効性確保に向けて

企業のオペレーションは、自社のみで完結するものではなく、サプライヤーや協力企業の業務と密接に関連している。自社の事業継続計画を策定するにあたっても、それら取引先の事業継続計画を踏まえておく必要があるとともに、もし取引先の事業継続計画が未策定であれば、一歩踏み込んで策定を要請する、あるいは策定の支援を行うなどの対応も必要となろう。

また災害が発生したときにも安定供給を確保するためには、原材料や部品・部材の代替調達、さらには拠点そのものの代替先を準備するなど、平常時からコストや労力を含め資源の投入が必要であることから、経営を巻き込んだ取組みが求められることも忘れてはならない。

以上

【告知をお願いしたいこと】 「第4回事業継続マネジメントに関する日本企業の実態調査報告書」をご希望の方は、インターリスク総研・研究開発部までお申し出ください。(電話:03-5296-8920)

(2011年5月26日 三友新聞掲載記事を転載)

本田 茂樹 Shigeki Honda
氏名
本田 茂樹 Shigeki Honda
役職
研究開発部 研究開発部長 主席コンサルタント
信州大学大学院 非常勤講師
専門領域
社会制度および企業におけるリスクマネジメントに関する調査研究、コンサルティングに従事。
企業に対して、危機管理、事業継続マネジメントの観点から具体的な提言を行っている。