コンサルタントコラム

「交通事故防止策」は人間関係作りの工夫から!

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
交通事故防止コンサルティング
役職名
コンサルティング第四部 交通リスク第二グループ 主席コンサルタント
執筆者名
貝塚 清士 Kiyoshi Kaizuka

2011.5.2

交通事故防止という仕事に携わって今年で25年になります。多くの車を使用している企業に対し、少しでも交通事故を削減できるようにセミナーやコンサルティングを実施してきました。セミナー等の依頼は、交通事故が多発している企業のみならず、既に交通事故防止の風土が定着した企業からもあります。その中で特に印象に残っているトラック運送会社3社から学んだ「交通事故防止策」を紹介したいと思います。

最初の企業は、東京の下町にある小さなトラック運送会社です。初めて交通事故防止セミナーの講師として訪問したとき、セミナー開始に先だち社長が従業員に自社の売り上げやコスト・利益を明確にし、経営状況の現状をわかりやすく説明した上で給料や賞与として支払える額を丁寧に説明しました。常々このような説明していると伺い驚きました。また、セミナー終了後に開催された飲み会では無事故無違反を続けているドライバーから次々に「交通事故を起こして、みんなの会社をつぶしてはいけない。」「社長もみんなも思いは一緒、交通事故やクレームは今年もゼロだ。」などと大いに盛り上がりました。会の締めで社長が「うちの会社はみんなのものだ。上司や部下という関係ではなく、みんな仲間だ。」と話されました。この企業で安全運転が徹底している所以は、これらの発言や従業員のまとまりの中に安全意識として植えつけられていることが窺えました。

次に、中部地方にある中堅トラック運送会社です。この会社では、社長をはじめとして全社員が順番に掃除や夜勤を担当しています。社長がトイレ掃除や夜勤で電話受付をする姿を見て驚くと同時に感動するドライバーも多いと聞きました。また、給与は役職による手当がなく、代わりに無事故手当があります。ドライバーは自分が起こした交通事故内容により手当の額が決まりますが、社長や管理者は管下のドライバーの事故発生状況に応じて手当が決まります。交通事故がゼロであれば手当は満額になりますが、交通事故発生件数が増えると手当が減っていくという仕組みになっています。セミナー講師として訪問したときに、ベテランドライバーが、「交通事故を起こして、社長や所長の給料を減らしては申し訳ないので、安全運転第一だ。」と真剣な顔つきで語っていたことを聞いて、この会社の社長が目論んだ安全運転意識がドライバーに定着していると思いました。

最後に、九州地方にある中堅トラック運送会社です。交通安全セミナーの要請を受け訪問したときに、無事故ドライバーの表彰式がありました。参加者は夫婦同伴で出席していました。社長が表彰状はドライバーに、賞金は奥さんに渡していました。この会社では社長以下全管理者に「傾聴」の訓練が行き渡り、徹底して「ドライバーの話を聴く体制」が整っています。ドライバーの主張を聴いて、無理な運行を強いる荷主との取引を中止したこともあるとのことです。ドライバーの安全運転指導に奥さんの力を借りているだけではなく、ドライバーの話をよく聴き、必要なときにはキッチリと対応する社長の姿勢がドライバーの共感を呼び安全運転につながっているように思えました。

これらの3社に共通していることは、いずれの企業においても経営者はドライバーとの良好な人間関係を構築することに工夫を凝らし、安全風土を定着させて交通事故防止策に結びつけていることではないでしょうか。

以上

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