コンサルタントコラム

事業継続における組織開発の重要性

所属
研究開発部
役職名
上席コンサルタント
執筆者名
川西 和浩 Kazuhiro Kawanishi

2010年09月08日

世界最大のスポーツイベント・FIFAワールドカップ南アフリカ大会は岡田ジャパンが決勝トーナメントに進出し、応援に熱が入った方も多かったのではないでしょうか。ところで岡田監督はサッカー技術の指導以外に「日本代表チームはどうあるべきか」という観点で6つの掟を日本代表選手に浸透させたと言われています。高い目標に向かって成長を続けるチーム(組織)にとって哲学やビジョンは推進力になることを改めて認識しました(6つの掟は本コラムの最後に記載しています)。

市場経済のグローバル化や急速な技術革新など国際レベルの社会環境の変化に対応するため「変革」が人と組織に求められているのはご存知のとおりです。このような背景の中、最近組織論で注目されているのが、「組織開発(Organization Development)」という考え方です。

「組織開発」という言葉自体、日本ではまだ馴染みがありません。1950年以降、主に米国と英国を中心に発展してきた考え方で、最近よく耳にする「コーチング」もその1つの手法と言われています。組織開発の一般的な定義は次のとおりです。
(1)計画に基づいて、(2)組織全体に対して、(3)トップマネジメントがリードして、(4)組織を健全かつ強固にするために、(5)行動科学を応用して組織プロセスに計画的に組み込むこと 

組織開発は、組織の潜在的な活力を引き出すことを目指して、人と組織に働きかける理論や手法の体系です。岡田監督も「ベスト4(今回は残念な結果でしたが)」という高い目標に向かって、選手の潜在的な能力を引き出すため「組織開発」的実践を行ったと言えます。

今回の岡田ジャパンでは粘り強いディフェンスの活躍も見逃せません。実は組織開発は危機発生時の事業継続に重要な役割を担います。事業継続計画(BCP)を作成している企業において、事業継続の能力を高め、事業継続計画の実効性を向上させたいと考える企業にとって有効な理論です。

その理由は次のとおりです。事業継続の国際的かつ唯一の規格(英国規格BS25999-2)には、「組織の文化にBCMを組み込む」とする要求事項があります。緊急事態が発生したときに、「すべての従業員が、組織の事業継続の目的の達成に向けて、自分はどのように貢献できるか認識することを確実にする」と求めているのです。具体的には、「緊急時にまずどのような行動をし、そして組織に対し、事業継続に対し、どのように貢献できるかを事前に認識させ、それを組織文化として組み込んでいく」ということです。そのため、平常時から組織力を高め事業継続の取組みを進め、危機発生時に人および組織が高い意識を持って計画に基づき対応できるか否かが重要です。

昨年の新型インフルエンザの世界的流行を契機に、事業継続について企業の関心も着実に高まりました。新型インフルエンザなどの感染症や地震、IT事故などが発生した場合に備えて事業継続計画策定に取り組まれている企業も多いと思います。
古い諺「仏作って魂いれず」にならないよう、事業継続策定と併せて組織開発をしっかり進めていくことが組織の危機管理対応力の向上のためには不可欠です。

さて、岡田監督の6つの掟は、Enjoy(楽しもう)、Our team(自分たちのチーム)、Do your best(最善を尽くそう)、Concentration(集中しよう)、Improve(進歩しよう)、Communication(お互いを認め合おう)です。組織論の点でも参考になりますね。

以上

(2010年9月2日 三友新聞掲載記事を転載)

川西 和浩 Kazuhiro Kawanishi
氏名
川西 和浩 Kazuhiro Kawanishi
役職
研究開発部 上席コンサルタント
専門領域
事業継続マネジメント(BCM)の研究開発、新型インフルエンザや新興感染症対策の研究開発