コンサルタントコラム

交通事故とヒューマンエラー

所属
コンサルティング第四部 自動車RM企画チーム
役職名
アシスタントマネジャー
執筆者名
小久保 有二 Yuji Kokubo

2010年08月04日

毎年春と秋に行われる全国交通安全運動は、「広く国民に交通安全思想の普及・浸透を図り、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるとともに、国民自身による道路交通環境の改善に向けた取組を推進することにより、交通事故防止の徹底を図ること」を目的としている。平成22年秋の全国交通安全運動*においては、「高齢者の事故防止」を運動の基本とするほか、(1)夕暮れ時と夜間の歩行中・自転車乗用中の交通事故防止(特に反射材用品等の着用の推進)(2)全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底(3)飲酒運転の根絶、が運動重点の全国重点と定められている。この機会に交通安全について考えてみたい。

交通統計によると、交通事故の状況は、死者数は平成7年以降減少傾向にあり、一方交通事故の発生件数は平成16年以降減少している。交通安全白書には、死者数が減少した要因として、道路交通環境整備、交通安全思想の普及徹底、安全運転の確保、車両の安全性の確保、救助・救急体制等の整備等が挙げられている。

交通事故を運転者の法令違反別に分析すると、事故原因は安全不確認、脇見運転、動静不注視、漫然運転の順に多い。これら注意力の問題が原因と推定されるものが全体のほぼ2/3を占めている。一般的に運転は、「環境を"認知"→とるべき行動を"判断"→自動車を"操作"」の繰返しといわれているが、このいずれの段階でエラーを起こしても事故に結びつく。交通事故は主に、人、車、道路に関する3つの要因が相互に作用しあって発生すると言われているが、近年の企業の交通安全取組においては、人為的ミス、いわゆるヒューマンエラーへの対策に力点を置いた取組が実施されている。運転者の体調、精神状態、環境等様々な要因が、運転に影響を与え、ヒューマンエラーを誘引することからヒューマンエラーの撲滅はそう容易なことではない。

現在、我国においては、事故件数、死者数および負傷者数ともに減少を続けており、近年の自動車の交通安全対策は着実に成果に結びついている。死者数における英米独仏との5カ国比較では、対人口10万人では英国に次いで2番目に少なく、対自動車1万台では最も少ない。さらに一層の減少を目指し、政府は「平成30年を目途に、交通事故死者数を2,500人以下とし、世界一安全な道路交通の実現を目指す」ことを検討している。

多くの企業と接するなかで、ヒューマンエラー対策の重要性を実感している。この領域で安全教育、管理者指導等の十分な対策が継続的に講じられている企業においては、安全風土が醸成され、結果として事故が少ないという傾向が見られる。自動車防災に携わる者としては、ヒューマンエラー対策の一層の普及に努め、安全な道路交通実現の一助になりたいと強く願うものである。

*平成22年秋の全国交通安全運動期間
1. 運動期間 平成22年9月21日(火)から30日(木)までの10日間
2. 交通事故死ゼロを目指す日 9月30日(木)

以上

(2010年7月29日 三友新聞掲載記事を転載)

小久保 有二 Yuji Kokubo
氏名
小久保 有二 Yuji Kokubo
役職
コンサルティング第四部 自動車RM企画チーム アシスタントマネジャー
専門領域
交通事故防止コンサルティング

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