コンサルタントコラム

「分かり易い」リスクマネジメント

所属
コンサルティング第三部 リスクエンジニアリング第二グループ
役職名
マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
小柴 利夫 Toshio Koshiba

2010年06月29日

弊社では、長年にわたり親会社である損害保険会社のお客さまへのサービスとして、「リスクサーベイ」を実施しています。このリスクサーベイでは、主に火災リスクおよび自然災害リスクの観点で、最大予想損害額(一事故で最大どれくらいの規模の損害が発生するか)を評価し、保険の内容の検討材料としてご活用いただいております。さらに、リスク対策上の改善提案をご提示することにより、各社のリスク対策の推進に寄与させていただいております。
筆者は、近年リスクサーベイに求められる要素が変化していると感じています。その中で、ここでは2つの要素についてご説明いたします。
一つは、報告書等の提出資料の「分かり易さ」です。以前は、文章はできる限り厳密かつ詳細に表現することが求められていました。そのために、文量は多くなり、お客さまは時間をかけてしっかりと読み込まないと内容を把握できない傾向がありました。しかしながら、近年は「業務効率化」が叫ばれる中で、短時間で内容を把握できる資料が求められてきています。例えば、改善提案は可能な限り写真やイラストを多くかつ大きく貼り、矢印や体言止めのコメントを加えて説明することで、お客さまからの評価も高くなります。そのため、報告書も常にワードではなく、時にはパワーポイントを活用し、文章ではなくなるべく箇条書きで纏めるように工夫しています。
もう一つは「議論をリードしまとめる力」です。打合せや現場調査の際には、高いコミュニケーション能力が求められますが、この点は以前と比較して、調査担当者に求められるスキル全体に占めるウェイトが高まっています。リスクマネジメントのノウハウや専門性と同等に、いやそれ以上に分かり易く説明を行い、議論をリードし関係者の意見をまとめる力がきわめて重要です。
リスクサーベイの際、各企業の防災担当の方から、「自分はリスクマネジメントを推進しようとしているが、会社が動かない。どうしたらよいか?」との質問を多く受けることがあります。そういった際に、社内での働きかけが分かり易い内容になっていないのでは、と感じることがあります。所轄消防からの指摘内容を社内に通知する場合は、分かり易い言葉に置き換えて伝える必要があります。また、細かい字でぎっしりと書かれた資料は読み手がうっとうしく感じられ敬遠されてしまいますので、必要最低限のことを強調して、1枚に分かり易くまとめた方が良いでしょう。さらに、リスクマネジメント体制の完成形を示すよりも、差しあたっての目標を示し、そこを目指しましょう、といったようにステップを確実に伝えることが大切です。
リスクコンサルティング会社にとっても、企業の防災担当者にとっても、「分かり易い」という要素の重要度が増していると言えます。リスクマネジメントというのは、どことなくぼやっとしていて分かりづらいものです。筆者も「分かり易いリスクマネジメント」を日々追求していきたいと思います。

以上

(2010年6月24日発行 三友新聞掲載記事を転載)

小柴 利夫 Toshio Koshiba
氏名
小柴 利夫 Toshio Koshiba
役職
コンサルティング第三部 リスクエンジニアリング第二グループ マネジャー・上席コンサルタント
専門領域
火災・地震リスクサーベイ、地震関連コンサル、事業継続計画(BCP)関連コンサル