コンサルタントコラム

小売業における不明ロス低減について

所属
コンサルティング第二部 BCM第二チーム
役職名
マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
山口 修 Osamu Yamaguchi

2010年02月26日

小売業においては、棚卸しの際に、在庫数が理論上の数値と一致しないケースがある。例えば、期首に商品を100個仕入れ期間中に50個を売り上げた場合、在庫数は理論上50個のはずだが、実際に数えてみると45個だったりする。この理論上の数値と実際の数値の差(前記例では5個)は「不明ロス(商品ロス・棚卸ロス)」と呼ばれているが、このロス率は、小売業の総売上高の約1~2%にも達し、企業の利益創出の観点からも無視できない数値だと言える。

不明ロス発生の主原因は「管理ミス」「万引き」「内部不正」だと言われているが、具体的な不明ロスの低減対策はどうしたらいいのだろうか。これを解く鍵は、(1)「商品管理の徹底」、(2)「盗られないための環境づくり」という2つの切り口にある。以下、主原因ごとにこの切り口でポイントを整理してみる。

(1)「管理ミス」低減策のポイント

管理ミスの低減策は、前記「商品管理の徹底」の切り口により、理論在庫ならびに実在庫の現状を正確に把握することに尽きる。まず、理論在庫においては、在庫に関わる仕入・売上・値上げ・値下げ・返品・廃棄などの情報を正確に記録することがポイントとなる。特に、帳票の記載、データの入力など「手作業」を伴う場面ではミスが発生しやすいので要注意である。一方、実在庫においては、正確な棚卸しの実施がポイントとなる。具体的には、棚卸しルールのマニュアル化、チェックルールの構築と運用、日頃からのバックヤードの整理整頓などの対策が有効である。

なお、かかる管理ミスの低減策は、各対策の前提となる「実態把握」に直結するため、不明ロスの低減対策の中でも最優先で取り組むべきものだと言える。

(2)「万引き」低減策のポイント

万引きの低減策は、前記「盗られないための環境づくり」の切り口が主眼となる。ここでいう「環境づくり」のポイントは以下の4つに整理される。まず1つめは死角を少なくすること。具体的には、防犯カメラ等の設置で死角そのものを少なくする対策や、死角を特定のうえ定期的に巡回する対策などが該当する。2つめは「万引きできない」とのイメージ形成を図ること。具体的には、陳列の整理整頓、従業員の無駄話の禁止、お客さまへの声がけ、御用聞きなど所謂「お客さまサービス」を徹底することで、万引きに「着手しにくい」イメージを形成する対策や、商品監視システム(EAS)やセキュリティタグの導入で、商品を「外に持ち出しにくい」とのイメージ形成をする対策などが該当する。3つめは前記2つの環境づくりに濃淡をつけること。すべての商品・来客を対象に前記2つの対策を行うことは困難であるため、小型で換金しやすい盗難リスクの高い商品を特定する、万引き常習者をターゲットにするなど、的を絞って集中的に対策を講じることが効果的である。4つめは、従業員教育を実施すること。前記3つの環境づくりの実施主体は従業員であるため、各従業員がモチベーション高く主体的に環境づくりに取り組むよう、教育プログラム等を策定する対策などが該当する。

(3)「内部不正」低減策のポイント

内部不正の低減策は、前記の両方の切り口から検討することが必要である。まず、前記(1)管理ミス低減策同様、「商品管理の徹底」の切り口から、在庫の現状を正確に把握することがポイントになる。そもそも商品管理が不十分だと、不正自体が発覚しにくく、帳簿改ざんによる大掛かりな不正発生にもつながるからである。一方、「盗られないための環境づくり」の切り口から、前記(2)万引き低減策に加えて、従業員から採用時に誓約書を取り付けたり、持ち物チェックを実施したり、バックヤードにカメラを設置したりする対策なども有効である。

以上、不明ロス低減策のポイントについて述べてきたが、残念ながら「特効薬」となる対策は存在しない。各対策を継続して実行し、「カイゼン」を積み重ねていくことが重要であることをご理解願いたい。

以上

(2010年2月18日 三友新聞掲載記事を転載)

山口 修 Osamu Yamaguchi
氏名
山口 修 Osamu Yamaguchi
役職
コンサルティング第二部 BCM第二チーム マネージャー・上席コンサルタント
専門領域
BCM、盗難リスク