コンサルタントコラム

9月11日に向けて~事業継続マネジメントシステム(BCMS)の普及~

役職名
研究開発部 開発チーム 研究員
執筆者名
飛嶋 順子 Yoriko Tobisima

2009年9月1日

今年も9月11日がやってくる。2001年9月11日米国同時多発テロの発生時、世界貿易センターに所在したある会社は、9,000人以上の従業員を無事避難させ、翌日には取引を再開させたが、別の企業は、現地採用の従業員数の確認すら困難だったという。両者の違いは、日頃から企業の重要課題として、有事の事業継続に取り組んでいたか否かであった。

あれから8年、事業継続のあるべき姿は、国際標準化機構(ISO)をはじめ世界各国で議論が進み、英国や米国では国家規格として一定の標準化が成された。日本では、英国規格(BS 25999-2)を適用基準としたBCMS適合性評価制度(実証フェーズ)が、(財)日本情報処理開発協会により推進されている。

規格や認証制度の整備が進む一方、企業が「想定外のリスクを想定し、常日頃から備え続ける」ことがいかに難しいかも、日々感じられる。国内企業の99%超を占める中小企業を始め多くの企業は、想定外の事態に備える余裕はなく、日々の想定内の事業に追われているのが現実である。そうした企業に事業継続マネジメントシステムを組織の文化として組み込むためには、何らかの仕掛けが必要ではないだろうか。

例えば、規格とその認証を、規制と結びつけることはひとつの方法である。戦後、日本は、工業製品の品質向上のためにあらゆる業種の製品規格をJISとして制定し、特定品目にJISマークを付与することでJISを普及し、大手企業はもちろん中小企業の技術力向上を実現した。プライバシーマーク制度(JIS Q 15001)の普及にも、個人情報保護法の施行が大きく寄与した。

同様の例は世界でも見られる。英国規格BS 5750に基づく品質保証の第三者監査制度は、1980年代初頭の英国サッチャー政権下で、英国製造業の国際競争力強化を目的として強力に推進された。政府は、この制度を広めるために、中小企業向けにコンサルタント費用まで助成したと言われる。BS 5750は、後に、米国規格と並んで、ISO 9000シリーズのたたき台となった。ISO 9000シリーズは、EUの統一規格であるENに採用され、更にEN 9000 がEU経済域内の製品流通に関するEC指令に引用されることで、実質的な強制規格となった。即ち、「EC指令=CEマーキング注)」という仕掛けである。

従って、もし、BCMS規格が、対象組織を限定しない広範囲な規制若しくは強制法規に引用されれば、BCMSは一気に広まる可能性がある。

事業継続の概念や手段には、世界にも、そして日本にも様々な考え方があり、そのいずれかが絶対的に正しいというものではない。ただ、現在発行されている英国規格や米国規格(ANSI/ASIS SPC.1)は、業種、形態、規模を問わずあらゆる組織に適用できるということ、そして、事業継続のしくみを維持し、継続的改善につなげるマネジメントシステムとして標準化したものであるという点で評価できる。事業継続への取り組みは、企業が当たり前のように維持できるようなしくみを作ることが、大変重要だからである。

規格以外のどんな手段を使うにせよ、すべての企業が、どんな脅威に対しても屈することなく、従業員を守ること、そして事業を継続することでその社会的使命を果たし続けることを切に願う。

注:CEマーキング:EU域内で流通させる製品に対して、その使用者および消費者の健康および安全を保護すること等を目的に、欧州委員会(EC)が発令した指令を遵守してつけるマーク。

以上

(2009年8月27日 三友新聞掲載記事を転載)

氏名
飛嶋 順子 Yoriko Tobisima
役職
研究開発部 開発チーム 研究員
専門領域
BCMS、QMS、新型インフルエンザ対策