コンサルタントコラム

企業スポーツとCSR

所属
コンサルティング第一部 CSR・法務チーム
役職名
コンサルタント
執筆者名
佐藤 崇 Takashi Sato

2009年6月22日

昨年の金融危機を端緒にした世界的な不況が日本のスポーツ界に大きな影響を与えている。野球、アイスホッケー、バレーボール…多くの企業のスポーツチームが相次いで休廃部に追い込まれている。企業スポーツにとっては、1990年代のバブル崩壊以降最大の危機であり、深刻さは底知れない。

企業スポーツは、企業の経営状況に影響を受けざるを得ず、その存立基盤が脆弱なため、今回のような不況に陥ると、真っ先にリストラ対象となってしまう。企業スポーツの存在意義が、広告宣伝、ブランド価値の向上などの企業利益の追求を第一義的なものとしているからであろう。企業である以上、利益追求のための手段として企業スポーツを利用すること自体悪いことではない。しかし、このままでは、コストに対するリターンばかりに重点が置かれ、企業スポーツからのリターンが不十分と判断されれば打ち切られる、ということが繰り返されてしまう。事実、バブル崩壊後の困難をくぐり抜けてもなお、企業スポーツの存亡は景気の変動に左右されてしまっているのが現状である。
一方で、企業スポーツの受け皿としてクラブチームが設立されたり、選手が給料を得てプロとしてプレーする独立リーグも各地で立ち上げられている。しかし、資金面、施設利用面や選手強化面等で多くの問題を抱え、企業スポーツ以上にその存続は危ういのが実情であり、いまだ企業スポーツに期待される点は大きい。

企業のスポーツチームの存続の判断にあたって、選手強化やチーム運営の経済的負担の大きさから休廃部の判断をせざるをえなかったケースも少なくはないだろう。しかし、企業スポーツからの撤退の判断の前に、スポーツが社会とどのような関わりがあり、文化としてのスポーツがいかにあるべきかを企業は再考する必要があるのではないだろうか。

一流のスポーツ選手の活躍する姿を見て、私たちは感動や誇りを覚える。スポーツは、多くの人々が関心を抱く世界規模かつ世界共通の文化であり、ときに政治や経済にまでも影響を及ぼすものである。スポーツを共通言語として相互理解が促進され、さらに、スポーツを通して、私たちは豊かな社会生活を送ることができる。
だからこそ、企業スポーツからの撤退の是非は、スポーツが持つ価値や社会、社員など各ステークホルダーがスポーツチームの維持に対して寄せる期待にも十分に配慮した上で判断すべきといえる。

CSR(企業の社会的責任)を考えるとき、スポーツはこれまであまり重要視されてこなかった要素であるように思える。
企業スポーツを、企業によるスポーツを通じたステークホルダーとのコミュニケーション手段ととらえれば、企業が貢献できる部分は少なくない。チームを保有すること以外にも、スポンサー契約による資金援助、保有する競技施設の開放などスポーツの発展に向けて、身の丈に応じた取組は可能なはずである。
現在、2016年の東京オリンピック実現に向けての招致活動が行われている。スポーツを通してより豊かな社会を構築していくという視点で、10年後、50年後を見据えて企業がスポーツにいかに関わっていくべきかを見直すよいタイミングではないだろうか。

以上

(2009年6月18日 三友新聞掲載記事を転載)

佐藤 崇 Takashi Sato
氏名
佐藤 崇 Takashi Sato
役職
コンサルティング第一部 CSR・法務チーム コンサルタント
専門領域
CSR(企業の社会的責任)、内部統制、総合リスクマネジメント、危機管理、コンプライアンス対策、会社役員賠償責任、その他法務リスク全般