コンサルタントコラム

集中豪雨へのリスク感性を養おう

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
火災リスク、自然災害リスク(地震、水災他)
役職名
大阪支店 主任コンサルタント
執筆者名
飛世 浩貴 Hiroki Tobise

2009.5.26

最近、メディアを通じて「ゲリラ豪雨」という言葉をしばしば耳にするようになってきた。雨の降り始めから10数分という短時間で水位が1m以上も上昇し児童を含む5名の死者を出した兵庫県神戸市都賀川の事故や、1時間降雨量が146.5mmに達し高齢者を含む死者を出した愛知県岡崎市での集中豪雨による事故など、2008年は集中豪雨による被害が多く発生した年であり、「ゲリラ豪雨」が流行語トップテンに選ばれたほどである。

「ゲリラ豪雨」とは正式な気象用語ではなく、局地的に短時間で降る予測困難な集中豪雨のことを指す。気象庁では、1時間に80mm以上降る雨を「猛烈な雨」と定義しており、人の受けるイメージを「息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感ずる」としている。気象庁アメダスの集計によると、この「猛烈な雨」の年間発生回数は、1970、80年代に比べ、この10年では2倍近くにまで増加している。このような「猛烈な雨」が増える要因として、地球温暖化や都市化などによるヒートアイランド現象が関係しているとも指摘されている。社会全体で地球温暖化防止の取り組みを進めているものの、今後も「ゲリラ豪雨」の発生が考えられる。

神戸市都賀川の事故では、山間部で降った雨水が下流へと一気に流れ込み、急激な水位上昇をもたらした。豪雨の発生場所と実際に被害を受けた場所が離れているということがこの事故の特徴と言え、被害に遭われた方は危険が迫っていることを感じることが困難であったのだろう。事故後に京都大学防災研究所が実施した神戸市都賀川の親水施設利用者へのアンケートでは、大雨時の危険性について「事故後知った」という回答が全体の約34%を占め、多くの人が事故以前にその危険性を感じていなかったことが伺える。この事故を契機に、神戸市では警報装置や注意喚起看板の設置、防災パトロールなどの対策に乗り出した。このような取り組みを最大限活かすためには、雨が降ったら河川に近づかない、警報装置の設置を確認し、警報があった場合の迅速な避難の準備をしておくなど、私たち一人一人が危機管理意識を持つことが大切であろう。

また、愛知県岡崎市での事故では、家の中に取り残された高齢者が犠牲となった。内閣府の防災基本計画では、住民意識および生活環境の変化により、近隣扶助の意識低下がみられるとし、地域コミュニティを活用した取り組みを推進している。台風時の高齢者在宅確認・避難誘導の実施や災害時要支援者への情報連絡の徹底など、地域全体で取り組んでいる事例も見られるようになってきたのはその成果であろう。自治体等が公表している洪水ハザードマップを活用し、実際に避難経路を歩いてみる、危険箇所がないか確認する、地域防災訓練へ自主的に参加するなどで、このような活動がさらに効果的なものになると思われる。

集中豪雨が発生しやすくなる夏に向かうにつれ、海や川など水のある場所へ出かけることが多くなる。痛ましい事故を起こさないためにも、過去の災害から得られた教訓を忘れず、危険を感じ取る力すなわちリスク感性を養うことが重要であると考える。

以上

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