コンサルタントコラム

変化する車両盗難とその対策

所属
コンサルティング第二部 災害リスク第二チーム
役職名
主任コンサルタント
執筆者名
下平 庸晴 Tsuneharu Shimodaira

2009年4月15日

警察庁の資料によると、自動車の車両盗難発生件数は、1998年頃から急激に増加し、2003年にピークの約6万4千件に達した。以降、メーカーによる車両へのイモビライザーの標準装備化などの盗難対策により、2008年の車両盗難発生件数はピーク時の半数以下(約2万8千件)にまで減少した。イモビライザーは、エンジンを始動させる際に、エンジンキーに組み込まれたIDと車両に組み込まれたIDとの電子的な照合を必要とするシステムであり、不正な操作によるエンジン始動を妨げる効果をもつ。

車両盗難発生件数の増加を背景に、警察庁や日本損害保険協会で統計データが作成・公表されており、車両盗難に関する傾向を窺うことができる。

全盗難車両のうち、エンジンキーを付けた状態の車両は約3割、エンジンキーを抜いた状態の車両は約7割を占めている。エンジンキーを付けた状態での車両の盗難手口は、給油、洗車やコンビニの利用等でドライバーが車両を離れた隙を狙った乗り逃げであり、対策としては、わずかな時間であっても車両を離れる際にはエンジンキーを抜くことが有効となる。エンジンキーを抜いた状態での車両の盗難手口には、複製エンジンキーの使用や電気配線の直結が挙げられる。今後、イモビライザー装備車両(注)の増加に伴って車両盗難発生件数は一定まで減少するものと考えられる。

また、最近の盗難車両の車種別割合に変化が見られる。2001年ごろ~2006年までは、高級自動車とRV車の盗難車両の全盗難車両に対する割合は4割程度であったが、2008年では2割程度に減少した。これは、高級車とRV車でのイモビライザーの採用が比較的早期であったことが要因と考えられている。一方、高級車・RV車と相対的にミニバンと軽自動車の車両盗難が増加しており、2008年では、ミニバンと軽自動車の車両盗難が車両盗難全体の約4割を占めている。これは、(1)ミニバンの需要が海外で高く、不正に輸出する目的で窃盗されること、(2)高級車およびRV車と比較するとイモビライザーの採用が遅く、盗難が容易であることが原因であると考えられている。

先に述べたように、盗難車両全体において、エンジンキーを抜いた状態の車両が占める割合が大きく、車両の盗難被害を防ぐためには何らかの盗難防止装備が必要である。イモビライザー装備車両と非装備車両との被害割合に大きな乖離がある状況を考えると、盗難対策を施されていない車両については、イモビライザーを装備することが車両盗難を防止する上で大きな効果が期待できるものといえる。ただし、近年、イモビライザーの標準装備が義務化されているイギリスにおいて、エンジンキーそのものを盗んでから車両盗難に及ぶ手口が増加しており、今後は、イモビライザーの普及とともにエンジンキーを如何に管理するかが、車両盗難を未然に防止するためのポイントといえる。

注:イモビライザーを装備していてもレッカー車などによる車両の持ち逃げや不正なイモビライザーの解除によって車両盗難は発生しうる。エンジンキーを抜いた状態の盗難車両のうち、5%がイモビライザーを装備していたというデータもある。

以上

(2009年4月9日 三友新聞掲載記事を転載)

下平 庸晴 Tsuneharu Shimodaira
氏名
下平 庸晴 Tsuneharu Shimodaira
役職
コンサルティング第二部 災害リスク第二チーム 主任コンサルタント
専門領域
盗難リスク、自然災害リスク(地震・水災など)