コンサルタントコラム

の地球環境問題」を考える

所属
コンサルティング第一部
役職名
製品安全・環境チームリーダー
成蹊大学経済学部 非常勤講師
執筆者名
猪刈 正利 Masatoshi Ikari

2009年3月16日

昨年(2008年)、京都議定書の第一約束期間がスタートした。7月には洞爺湖サミットが開催され、同首脳宣言に「2050年までに世界の温室効果ガス排出を半減する長期目標を世界全体で共有するよう関係国に求める方針」が明記された。一方アメリカでは、環境政策に熱心であると言われている民主党のオバマ候補が大統領選に勝利し、環境ビジネスで経済危機に立ち向かうグリーン・ニューディール政策を発表している。このような背景もあり、「地球環境問題」の中でもとりわけ地球温暖化に関する関心が、これまでにないほど高まりを見せている。

地球温暖化の主な原因物質は、言うまでも無く「二酸化炭素」であり、その削減対策・制度として、従来から例えば排出権取引や炭素税の導入について議論がなされ、実際、我が国でも昨年秋から政府の「試行的排出量取引制度」が開始された。更に「カーボン・フットプリント(注1)」や「カーボン・オフセット(注2)」等、「カーボン」というキーワードを含む実に様々な考え方や制度が生まれ、これらも試行段階にある。またテレビでは、省エネ性能を高々と謳う「省エネ家電」や「ハイブリッド・カー」のコマーシャルが頻繁に流れ、この厳しい経済情勢下においても、いやこのような経済情勢だからこそ、そのような商品の買い替えも活発のようである。

一方書店を覗くと、「ほんとうの環境問題」「環境問題のウソ」「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」「地球温暖化論のウソとワナ」「地球温暖化を食い物にする人達」等、前述の言わば「カーボン・フィーバー」を揶揄するような過激なタイトルの本が並び人気を博しているようである。

「地球環境問題」の厳密な定義はないが、EICネット((財)環境情報普及センター)の用語解説によれば、(1)地球温暖化(2)オゾン層の破壊(3)熱帯林の減少(4)発展途上国の公害(5)酸性雨(6)砂漠化(7)生物多様性の減少(8)海洋汚染(9)有害廃棄物の越境移動と、極めて多岐に捉えられている。また、「バカの壁」他の著者で著名な養老孟司東京大学名誉教授と池田清彦早稲田大学教授の共著「ほんとうの環境問題」によれば、「(世界の人口が増加する中)ほんとうの環境問題はエネルギーと食料(の問題である)」と指摘している。私は、これに現在の電気・電子機器にとってなくてはならないレアメタル(希少金属)等に代表される「資源(枯渇)問題」を加えたい。

二酸化炭素等の温室効果ガスによって今後地球は温暖化するというIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書は、現時点において最も科学的な根拠に基づいて導き出された信頼できる予測であると私は認識しており、かつ地球環境問題の中で地球温暖化は、やはり最も重要視しなければならない問題であると認識している。更にその解決手法として、「カーボン・フットプリント」や「カーボン・オフセット」等も有効であると考えている。しかしながら、複雑でかつ相互に関連している地球環境問題を、すべて「地球温暖化」や「カーボン」という側面からだけで捉えるのは、問題があるのではないかとも考える。残念ながら科学は万能ではない。そのような中で、「ほんとうの地球環境問題」とは何かと常に冷静に考え、かつ多面的に捉えるスタンスは重要であると考える。

注1:商品のライフサイクル全般にわたって排出された二酸化炭素排出量のことで、まさに「炭素の足跡」と言える。

注2:「ある場所」での活動で避けることができない二酸化炭素排出量を、まず自己で削減努力し、それでも排出される二酸化炭素排出量を「他の場所」での削減活動に投資することにより埋め合わせをすること。

以上

(2009年3月12日 三友新聞掲載記事を転載)

猪刈 正利 Masatoshi Ikari
氏名
猪刈 正利 Masatoshi Ikari
役職
コンサルティング第一部 製品安全・環境チームリーダー
成蹊大学経済学部 非常勤講師
専門領域
環境・CSRマネジメント、環境・CSR報告書、環境リスクマネジメント