コンサルタントコラム

新型インフルエンザ対策 日本の全上場企業の取組み動向調査~今こそ、対策に取り組むべき時である~

役職名
研究開発部長 主席コンサルタント
東京医科歯科大学大学院 非常勤講師
執筆者名
本田 茂樹 Shigeki Honda

2008年7月25日

ひとたび発生すれば世界的な大流行(パンデミック)となり、多数の感染者、死者が出ることが予想される新型インフルエンザは、企業活動にも甚大な被害を及ぼすが、企業における取組み状況はどうであろうか。
当社では、国内全上場企業3,949社を対象に、新型インフルエンザの取組み動向について調査を行った。(回答総数448社、調査期間:2008年5~6月)その結果、対策を実行している企業が一割に満たないなど、企業における新型インフルエンザ対策がまだまだ十分とは言えない状況にあることが明らかとなった。

1.対策を実行している企業は一割未満

新型インフルエンザを想定した感染症対策を実行しているかという質問に対し、「対策を実行している」は、9.8%しかなく、「現在計画を策定中である」の14.3%を含めても、全上場企業の中で、新型インフルエンザ対策に取り組んでいる企業は、24.1%にとどまっている。また「対応の予定はない」と回答した企業も52.0%あった。

2.新型インフルエンザに関する理解不足も問題

新型インフルエンザ対策について、今後とも「対応の予定はない」と回答した企業にその理由を尋ねたところ(複数回答)、「既存の感染症対策(季節性のインフルエンザの予防接種など)で対応できるから」10.7%、「新型インフルエンザといっても風邪である以上、対応の必要は必要ないから」3.0%となっており、新型インフルエンザについての理解不足も大きく、対策の遅れにつながっている。

3.被害想定の大きさも対策に手がつかない一因

新型インフルエンザによる被害想定が非常に大きいことも、企業の対策が遅れている理由の一つと考えられる。新型インフルエンザ対策について、「対応の予定はない」と回答した企業の54.5%が、その理由として、「新型インフルエンザが引き起こす事態はあまりに重大なものであり、一企業の対応能力を超えるから」をあげている。
確かに国民へのワクチンの供給や抗ウイルス薬の備蓄、更には検疫体制など国が担うべき役割は大きい。しかしそれを口実に、新型インフルエンザに対して何の手も打たなければ、企業の社会的責任は果たせない。従業員の感染予防のための事前の措置、感染予防・感染拡大防止のための物品の備蓄、そして事業継続計画の策定など、企業として自ら考え、行動するべき点は多々ある。

厚生労働省は、新型インフルエンザの流行期を分類しているが、現在は、「フェーズ4(新型インフルエンザ発生の初期段階)に限りなく近いフェーズ3」と位置づけられている。つまり新型インフルエンザの発生は時間の問題であり、いつ発生してもおかしくない状況にある。相当程度の犠牲が避けられないことを前提としながらも、企業としては、その被害を最小限にするために、国が発表している「新型インフルエンザ対策行動計画」や「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」などを参考にして、まず事前準備に着手することが重要である。
企業は、新型インフルエンザについて単に医療や健康の問題でなく、危機管理の問題と十分認識した上で、最優先課題として対策を立て、行動することが求められている。

以上

(2008年7月17日三友新聞掲載記事を一部加筆し転載)

氏名
本田 茂樹 Shigeki Honda
役職
研究開発部長 主席コンサルタント
東京医科歯科大学大学院 非常勤講師
専門領域
医療・福祉分野におけるリスクマネジメントおよび社会制度に関する調査研究、コンサルティングに従事。
企業における新型インフルエンザ対策について、危機管理、事業継続経営の観点から具体的な提言を行っている。