コンサルタントコラム

新型インフルエンザ対策を考える

役職名
コンサルティング第二部 BCMチーム 上席コンサルタント
執筆者名
石丸 英治 Eiji Ishimaru

2008年6月23日

最近、新型インフルエンザに関する報道が増えてきた(新型インフルエンザについて詳しくは他に譲る)。今年に入ってからはそのような報道の数が増えたことに関係してか、企業からの問い合わせが増えている。その業種や企業規模に特徴はいまやなく、新型インフルエンザに関する対応策が企業の主な関心事だ。ところが今のところ、企業の新型インフルエンザに対する対策は総じて進んでいないのが実態である。その理由の根底にあるのが、新型インフルエンザの対応の難しさにある。

今までの地震やシステム障害などの対策の場合は、被害が拡大しないように予防し、事業が中断した場合にいかに復旧させるかがテーマであった。しかも、地震やシステム障害などは過去にも他社にも事例があるので、過去の教訓が生かせる。一方、新型インフルエンザの対策の場合は、被害が拡大しないように予防することは同じだが、流行が徐々に拡大していくため、この後事業を継続させるか停止するかがテーマとなる。さらには、企業の柱となる人に直接影響が及ぶことや、全国的に被害が拡大するおそれがあること、何はともあれ未知の事象であるため、過去の教訓がない。それゆえ、難しいとされている。

では、新型インフルエンザの対応策を検討する場合はどうだろうか。備蓄品等を揃え、何をするかが書かれた対応マニュアルというコンテンツに目が向くだろう。しかし、このようなコンテンツを揃えるだけだと、機能しなくなる恐れがある。以下に述べるコンテクスト(背景、前提)の全社的共有、企業間共有(あるいは社会的共有)が必要ではないだろうか。

例えば、新型インフルエンザは今までのリスクとは違うことをまず認識することから始める。地震との比較がわかりやすいだろう。大地震の場合、地震前と地震後では状況が一変する。その場にいれば、今は緊急時なのかどうか判断はできる。この場合、従業員に認識のずれは生じない。一方、新型インフルエンザの場合は、流行が徐々に拡大しても、見た目で状況が一変するわけではない。新型インフルエンザが発生しても、今までそのような経験がないことからこれからどうなるか想像ができない。大丈夫だろうと思う人、大変な状況だと思う人それぞれ認識が違う。その場合、地震発生後のように一人一人が同じ判断をして、同様の行動をとるとは必ずしも限らない。ここが地震と大きく違う。一部の人がそれを軽視してしまうことがきっかけで、企業に最悪な状況をもたらす可能性がある。それを防ぐためには、その個々人の認識のずれを是正する必要がある。これには全社員に対し新型インフルエンザに関する教育をして、認識をできるだけ一致させておく。すなわち、背景や前提(コンテクスト)を共有し、合意を得ておくことが必須となるだろう。
また、一個人を一企業に、企業を社会に置き換えても同じだ。特に、流行時でも事業を継続することを検討する場合は、企業間で被災シナリオなどの前提を共有することが重要になる。密接に関係している企業間で前提が異なるだけで、事業継続が立ち行かなくなる可能性があるからだ。人命の安全確保と事業継続という相反する課題もあるため、他社に強制はできることではない。それゆえ、前提を共有し、お互いが合意の上で進めていかなければならないだろう。

今まで行ってきた地震等の対策ではコンテクストがある程度共有されているため、この部分に意識があまりいかなかった。一方、新型インフルエンザ対策ではこのような様々なコンテクストをどこかと共有するところから考えなければならない。そこにも難しさがあるが、これを踏まえないことには新型インフルエンザ対策にならないと思っている。
個人的には、新型インフルエンザが発生しないことを祈っている今日この頃である。

以上

(2008年6月19日三友新聞掲載記事を一部加筆修正し転載)

氏名
石丸 英治 Eiji Ishimaru
役職
コンサルティング第二部 BCMチーム 上席コンサルタント
専門領域
BCM、情報セキュリティ