コンサルタントコラム

内部統制システムの構築をいかに進めるか

役職名
法務・環境部 上席コンサルタント
執筆者名
高橋 敦司 Atsushi takahashi

今年は多くの企業が「内部統制」という言葉に頭を悩ませている。ご存知のとおり、今年5月より施行された会社法において、取締役会を設置する大会社に「内部統制システムの構築に関する基本方針」の決定が義務付けられた。また、同じく6月に国会で成立した金融商品取引法では、財務報告の適正性に関する内部統制報告書の提出や、同報告書に関する外部監査の実施が求められている。
今年相次いで施行または成立したこれらの法規制を受け、大企業を中心に内部統制の構築または見直しを急ピッチで進めようとの動きがある。

しかし、実際の企業の動向を見ると、全く何もしていない企業はさすがに見受けられないものの、具体的に何をすべきかが分からず、「様子見」のところが多いようである。その理由としては、目指すべきゴール、すなわち「自社における内部統制システム理想像」が明確になっていないからではなかろうか。
特に大企業などは、会社法、金融商品取引法双方の要請を満たさなければならない。しかし、後者の具体的内容は今後出される内閣府令で言及されることになっている上、前者・後者双方の要請を統一的に理解することも決して容易ではないという現状がある。

こうした中で、最近企業実務家の方からよく「やはり文書化を早急に進めないといけないのか?」「ITの導入に先行着手しなければならないか?」といったご相談をいただく。
確かに、財務報告の適正性を確保する上で、業務フローの棚卸しと文書化は必要になるし、金融庁の企業会計審議会内部統制部会が昨年12月に公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」では、ITへの対応が内部統制の基本的要素の一つとして挙げられている。また、会社法と異なり、金融商品取引法の要請に反した場合には重い罰則が課される。このため、金融商品取引法対応が喫緊の課題と捉えられやすいものと思われる。

しかし、内部統制システムの構築は、自社の全事業活動に関わる問題であり、その取組にあたっては、先に述べた自社における内部統制システムの理想像や全体計画といったグランドデザインをまず描いておくことが肝要である。
まずは冒頭でも問題提起したとおり、ゴール設定のあり方を見直す必要があろう。この点、先述のとおり金融商品取引法対応ばかりに目が行きがちだが、意外と抜け落ちているのが、会社法上の内部統制システム構築義務への対応ではなかろうか。

おそらく、多くの企業では既に取締役会において内部統制システム構築の基本方針を定めているだろう。しかし、その方針に沿った内部統制構築のための具体的なアクションをきちんと起こしている企業は意外と少ない。確かに、会社法が求めている内部統制システムの内容については会社法施行規則にて言及されているものの、さほど詳細な内容ではない。また、金融商品取引法のような罰則もない。
しかし、この基本方針については、事業報告書により株主に開示されることとなっている。当然、次期株主総会ではその内容について株主から問われることが予想される。そのとき、企業は適切な説明責任を果たせるのだろうか。経営トップは自社の内部統制について、自らの言葉でステークホルダーに説明できるのだろうか。
また、万が一重大な企業不祥事や事故等が発生したとき、その企業において本当に実効性のある内部統制システムが構築されていたのか、経営トップの善管注意義務違反が問われることも忘れてはならない。

そこで、自社の内部統制システムの現状を認識し、自社の課題を抽出しておくべきである。リスクの洗い出し・評価をきちんとやっておくことも大切だ。
ここで、ただ漠然と「どうせうちの会社は何もできていない」と開き直ってしまってはいけない。一定以上の規模の企業であれば、相応の内部統制システムがあるはずで、現状ときちんと向き合わなければならない。

もちろん、文書化やシステム化の必要性を否定しているわけではない。しかし、例えば自社の規程の体系的把握、運用実態の把握もできていなければ、規程体系・規程そのものの見直しはおぼつかない。挙句の果てに、これらを無視して文書化やIT導入を進めても、確実に出戻りが生じ、その際のコスト・ロードは相当なものとなろう。
優先順位付けについては慎重に考えたいものである。

結局、経営トップとしては、罰則の有無にかかわらず、会社法にも金融商品取引法にも対応した内部統制システムを構築していかなければならない。そのためにも、自社に求められる内部統制システムとは何であるのか、それを構築する上で自社の現状に何が欠けているのか、常に考えながら全体像や計画を立てていくことが求められよう。

以上

氏名
高橋 敦司 Atsushi takahashi
役職
法務・環境部 上席コンサルタント
専門領域
CSR(企業の社会的責任)/総合リスクマネジメント/コンプライアンス対策/個人情報保護対策/会社役員賠償責任/知的財産権/その他法務リスク全般
実績
リスクマネジメント体制構築コンサルティング/個人情報保護対策コンサルティング/危機管理シミュレーション
著書・論文・寄稿
実践リスクマネジメント(経済法令研究会)
実践CSR(経済法令研究会)
その他、危機管理・D&O等に関する著書・寄稿多数