コンサルタントコラム

BCMブームは去るのか

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
事業継続マネジメント、情報セキュリティ・マネジメント
役職名
BCM室 上席コンサルタント
執筆者名
田代 邦幸 Kuniyuki Tashiro

2008.4.1

いま、日本では事業継続管理(BCM)がちょっとしたブームになっていると思う。
当社は2003年からBCMに関するコンサルティングを開始したが、当社における、BCMに関連するコンサルティングの引き合いや受託実績の数は、このところ急増している。当社を含む損保会社系のコンサルティングファームは、BCMに関する専門組織を持つようになったし、他にもBCMに関するコンサルティングや、商品・サービスの提供を行う企業が増えた。また、巷ではBCMに関するセミナーが多数開催されているし、新聞・雑誌誌上でBCMが採り上げられることも多くなった。
一方、今のBCMブームが一過性のもので終わるのではないか、という意見もある。時間がたてば熱が冷めてしまうかも知れないし、何か別のブームが新たに起こり、相対的に関心が薄くなる可能性もある。そうなれば、上のような状況も長くは続かないだろう。
正直申し上げて、BCMが一過性のブームで終わるのか、今のところ筆者には見当が付かない。これまでに見てきた様々なトレンドと同様に去っていくのかも知れないし、何か新たな大規模災害がどこかで発生したら、それをきっかけにブーム再燃、となるかも知れない。しかしながら本稿では、BCMブームが去ると仮定して、もしBCMブームが去ってしまったらどうなるか考えてみたい。

BCMブームが去ってしまうと、まず多くの企業がBCMビジネスから手を引くことが考えられる。もちろん、たとえブームが去ったとしても、企業にとってBCMの必要性が無くなるわけではないので、BCMビジネスのニーズはある程度残るはずだ。しかし企業の関心が薄れ、ビジネスとして魅力が無くなれば、より魅力的なビジネスにシフトし、BCMビジネスの市場規模が縮小していくのは、自然な流れである。BCMを手がけるコンサルタントも減るだろう。
BCMビジネスに関わる企業やコンサルタントが減れば、BCMに関するセミナーや新聞記事、雑誌記事なども減るだろう。特にプロモーションを目的とした無料セミナーの類は大幅に減ると思われるので、情報や知識は今のうちに仕入れておいた方が良いだろう。

ここまでは外部環境の話だが、これらの影響は企業内部にも及ぶと思われる。最も懸念されるのは、BCMに関する経営層の関心が低くなることだ。その結果として、企業においてBCMにコストをかけにくくなるかも知れない。
現在BCMに取り組んでいる企業や、検討を始めている企業の中には、現場レベルでBCMに対する問題意識が非常に高い企業も多いのだが、そのような企業でも、やはり予算や人手の確保に関するハードルが高くなると、実際にはBCMへの取り組みも減速してしまうかも知れない。
このような可能性を考えると、ブームが続いている今のうちに、BCMを社内の仕組みとして定着させることが重要となる。単にBCPを作るところまでで終わらせるのではなく、有事への備えとして必要な作業を、日常業務の手順の中に組み込んで定着させ、訓練や社内教育、監査、経営層によるレビューなどを実施し、BCMのマネジメントサイクル(Plan-Do-Check-Act)を、早く一巡させてしまうのだ。たとえ不完全なBCP/BCMであっても、社内でコストをかけやすいうちに、マネジメントサイクルを回せる形を作ってしまえば、将来あまりコストをかけられなくなっても、マネジメントサイクルを回しながら継続的に改善したり、対象範囲を広げたりしていける可能性が高くなる。

結局、ブームで盛り上がっている今のうちにBCMへの取り組みを進めておいた方が良い、という、我々コンサルタントにとって都合の良い結論にたどり着く。BCMの重要性は、ブームがこの先どうなろうと変わる訳ではなく、BCMが求められる企業にとっては、遅かれ早かれ取り組まざるを得ないのだから、環境に恵まれている今のうちに取り組んでおいた方が良い、ということだ。

実は、筆者個人としては、BCMブームが早く去って欲しいと願っている。ブームが去って落ち着いた後で、各企業の皆様に、BCMというテーマに冷静に向き合っていただき、本気で取り組んでいくためのお手伝いを精一杯させていただきたいと考えている。

以上

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