コンサルタントコラム

企業の情報開示

役職名
総合リスクマネジメント部 主席コンサルタント
執筆者名
今田 達雄 Tatsuo Imada

この何年かの間に、大手企業の粉飾決算による架空利益の計上や帳簿操作による不正取引などが表面化し逮捕者まで出た。また、知らぬ間に投資ファンドの大量株式保有が発覚した事件もあり、話題となった。

そもそも株式会社の場合には、企業情報の開示が行われることを前提に多くの投資家が資金を会社に投資している。アナリストのような専門家にはそれなりの企業からの説明会があるが、一般の投資家には毎年1回提出される有価証券報告書が会社情報を知る大きな源泉となる。そのため証券取引法の改正で、毎年開示する有価証券報告書に、業績・財務状況といった財務情報の開示のほか、経営者が感じているリスクを「事業等のリスク」として知らしめるなど、非財務情報(定性的情報)の開示を義務付けられた。さらに、虚偽記載に対する課徴金制度や損害賠償規定などを新設し、ディスクロージャー水準の向上を図ろうとしている。

弊社では今夏(2005年)、この有価証券報告書へのリスク情報開示について、日本経済新聞社が選出した日本を代表する東証一部上場企業225社を対象に、制度が始まった昨年3月末期からの有価証券報告書の分析を行い、そのレポートを公表した。その報告書の中で、記載リスクや対策の記述の不足、記述のわかりにくさを指摘させてもらった。また、記載に際してリスクマネジメント部門との連携が不足しており、会社全体としての取組状況との乖離がある企業も見られた点も指摘した。開示初年度ということで、記述の仕方に迷いもあったと思われるが、せっかくの会社としてのリスク情報の発信の場が生かされていないことを残念に思う。

欧米諸国では、財務情報の公開を資金調達の目的にした企業PRの一手段と考えており、企業の財務情報を一般に公開することは自らにとっての利益であり、株主にとっても利益であると考えていた。そして、財務情報を公開するのは自らの収益力や安全性、将来性をアピールすることであると考えている。

外国人はわからないことに対してわかるように説明してくれと訴え、相手の説明不足を非難するが、日本人はなぜ自分にはわからないのだろうと謙虚なのか諦めなのかわからないが、自分のせいにしてしまう。また、外国人が、何もやましいことをしていないならオープンにすればいいではないかと考えるのに対して、日本人は、やましいこともしていないのになぜオープンにする必要があるのかと考える、考え方の違いがあるものと思われる。 その結果が、欧米企業では積極的に情報を開示する傾向にあるのに対して、日本の企業は法規制による強制的な開示をやむを得ず受け入れているといった現在の状況なのであろう。

四半期決算の義務化の動きを始め、ディスクロージャー制度は今後とも強化の方向で検討が進むことが予想される。そのため、企業におけるリスク管理体制のあり方は益々重要性を増してくるだろうが、これに対して、企業は受身ではなく、ステークホルダーからの信頼を高め、企業価値を高める手段として、積極的な開示をしていくことが必要になる。

上記の有価証券報告書分析レポートでも指摘したように、自らが抱えているリスクは、自分ではわかっているようでわからないところがある。世間一般で話題になっているリスクが、自分のところでも最重要なリスクであるのかどうかはわからない。こうしたことを解決するために、企業はリスクマネジメント体制を構築し、企業が潜在的に持つリスクをしっかりと把握しておくことが重要であろう。そして、そのための対策を優先度に応じて順次たてていき、毎年それをチェックしていくことで、リスク管理の理想形を築いていくことが求められる。

毎年の有価証券報告書に、自社のリスク管理体制について胸を張って自慢できるようにしたいものである。

以上

氏名
今田 達雄 Tatsuo Imada
役職
総合リスクマネジメント部 主席コンサルタント
専門領域
企業の総合的リスクマネジメント・プログラムの設計と運営、リスクファイナンシング、キャプティブマネジメント