コンサルタントコラム

企業向け地震リスクコンサルティングを通して感じること

役職名
災害リスク部 上席コンサルタント
執筆者名
小柴 利夫 Toshio Koshiba

1995年の阪神淡路大震災以降、21世紀に入ってからだけでも、大きな地震が立て続けに発生している。

地震名 マグニチュード 最大震度
2001年3月芸予地震 6.4 6弱
2003年5月宮城県沖地震 7.0 6弱
同年 7月宮城県北部地震 6.2 6強
同年9月十勝沖地震 8.0 6強
2004年10月新潟県中越地震 6.8 7
2005年3月福岡県西方沖地震 7.0 6弱
2005年8月宮城県沖地震 7.2 6弱

特に、本年7月23日の夕刻に発生した千葉県北西部を震源とする地震では、マグニチュード6.0と決して大地震とはいえない規模であったにもかかわらず、首都圏の地震に対する脆さを認識させられることになった。

阪神淡路大震災の後、各企業は地震対策の重要性を感じ、耐震補強や地震対応規定の整備など様々な対応を行ってきたが、これまでと比較して、地震防災対策の関心度合いは極めて高くなっている。例えば、地震対応規定について挙げると、10年前は明確な文書化がなされていない企業も数多くあり、とにかく一通り規定化すれば良し、という認識があった。しかし、現在はそれが期待通り機能するかどうかが問われ、BCMまで視野に入れた形で見直しを行っている企業が多くなってきた。

コンサルティング活動の中で、地震防災について様々な業種の様々な企業と接する機会がある。そこでひしひしと感じることは、「地震防災に王道はない」ということである。各企業がその業種の特殊性や会社組織、社風等に鑑みて、自らが考え、汗をかいて、知恵を出し合って進めていくこと、これが何よりも重要である。それがないと、耐震補強などのハード的な対策はともあれ、各企業に馴染んだ実行力ある地震防災規定や体制作りは難しい。

地震防災をうまく進めている企業には2パターンあると認識している。

一つは、経営トップまたは経営トップに準じる立場の人の中に、地震防災について非常に関心の高い人がおり、その人が強力なリーダーシップを発揮して、企業全体の地震防災を進めているというケースである。防災担当者に次々と課題を出し、自らもその討議に参加するという具合である。必要不可欠な投資については経営として最大限対応する、という姿勢が明確に示されていることが多い。

もう一つは、防災担当者レベルの問題解決能力が高いケースである。企業全体の地震防災上の弱点を適切に洗い出した上で、どのように経営トップや関連部門と折衝すれば企業全体としてうまく動くか、社内戦略に長けている人がいると、企業全体として地震防災対策をうまく推進することができる。

冒頭の部分でいくつかの地震を列挙したが、地震が起こるたびに次々と新たな課題が出てきている。我々が将来遭遇するであろう大地震でも、現在全く想定されていない問題が生じる可能性がある。
地震の発生そのものを食い止めることも大地震発生時に被害をゼロにすることも不可能である。その中で、ある程度地震による被害を想定した上で、後から後悔しないよう今できる限りの対応を行うことが重要である。

以上

氏名
小柴 利夫 Toshio Koshiba
役職
災害リスク部 上席コンサルタント
専門領域
火災防災業務全般および地震リスクの定量分析、コンサルティングなどの業務全般に携わり、現在は地震定量分析および地震コンサルティングおよびBCM(事業継続管理)のコンサル業務を専門に手掛ける。